ガーナの環境・貧困問題の解決と持続可能な社会の実現を目指してアート活動を続ける美術家・長坂真護さん。彼を代表する作品は、ガーナのスラムに捨てられた先進国の電子ゴミを用いたアート。年間600超というハイペースで作品をつくり、それをしっかりと〝売る〟ことに尽力している。単なる利益追求のためではない。アート作品の売り上げのほとんどを、貧困に苦しむガーナの支援に投じているのだ。
国連WFPも採用したスーパーフード「モリンガ」をつかった茶
これまで学校を作ったり、工場を作ったりするなど、支援の成果を出してきた長坂さんだが、今回支援していた〝農園〟で採れたモリンガで作られた商品が発売された。「MAGO MORINGA TEA」だ。
モリンガとは、ビタミンやミネラル、アミノ酸など、90種類以上の栄養素を含むといわれる植物で、「奇跡の木」とも呼ばれるスーパーフード。抗酸化作用や健康維持など体にうれしい効果だけでなく、CO2吸収量が杉の20倍といった環境改善効果も期待される植物で、2007年には国連WFP(国際連合世界食糧計画)に採用されている。
スラム出身のガーナ人農家6名が栽培
長坂さん率いるMAGO MOTORS JAPANのグループ会社にあたるMAGO MOTORS Ltd.(本社:ガーナ共和国・首都アクラ)では、ガーナの自社農園でスラム出身のガーナ人農家6名が研修を経て栽培技術を習得した後、約3年の歳月を経て作り上げたモリンガで商品を開発。しかも、仲介業者を介さずMAGO MOTORS Ltd.から現地市場価格の10倍の価格でモリンガを買取り、経済的な自立と持続可能な農業の支援を実現しているという。
茶色は深みのある黄金色。コクは玉露のような上質でありながら野性味もあり、さらに複雑な香味の余韻があるのが特徴だ。2包入りで540円と少し高額だが、これを飲むことでガーナの問題に関わり、結果としてサステナブルな社会をつくることにつながる……と思えばむしろ安いとも思える。ぜひ、一度飲んで、遠く離れたガーナの地で頑張っている人に思いを馳せてほしい。
長坂真護さんの作品と活動を知りたい人におすすめの一冊
美術家・長坂真護さん
1984年生まれ。2017年6月、ガーナのスラム街・アグボグブロシーを訪れ、先進国が捨てた電子機器を燃やすことで生計を立てる人々と出会う。以降、廃棄物で作品を制作し、その売上から生まれた資金で現地にリサイクル工場建設を進めるほか、環境を汚染しない農業やEVなどの事業を展開。経済・文化・環境(社会貢献)の3軸が好循環する新しい資本主義の仕組み「サステナブル・キャピタリズム」を提唱し、スラム街をサステナブルタウンへ変貌させるため、日々精力的に活動を続けている。2022年9月、東京「上野の森美術館」にて自身初となる美術館個展を開催。同年11月、第51回ベストドレッサー賞、学術・文化部門受賞。ガーナに「MAGO MOTORS LTD」を設立し、現在ガーナ人62名が働いている。
『NAGASAKA MAGO ALL SELECTION ―長坂真護作品集―』
問い合わせ先/MAGO MOTORS JAPAN ECサイト
文/寺田剛治