自民党・公明党・国民民主党の3党は、2024年12月11日の幹事長会談において、税制改正に関する合意書を締結しました。
特に「103万円の壁」の引き上げが明記されたことが注目されていますが、それ以外に、いわゆる「ガソリン税の暫定税率」の廃止も明記されています。
本記事では、「ガソリン税の暫定税率」とは何なのか、廃止されたらガソリンはどのくらい安くなるのかなどを解説します。
1. 「ガソリン税の暫定税率」とは?
いわゆる「ガソリン税の暫定税率」とは、ガソリンに対して課されている「揮発油税」と「地方揮発油税」につき、租税特別措置法によって当分の間適用するとされている税率のことです。
「当分の間税率」と呼ばれることもあります。
1-1. 揮発油税・地方揮発油税とは
揮発油税と地方揮発油税は、ガソリンなどの揮発性の石油製品に対して課される税金です。
いずれも国税ですが、揮発油税は国の一般財源となるのに対して、地方揮発油税は地方の一般財源として全額譲与されています。
1-2. 揮発油税・地方揮発油税の「当分の間税率」が設けられた背景事情
揮発油税と地方揮発油税については、本則税率(=本来の税率)よりも高い「当分の間税率」が適用されています。
この「当分の間税率」が、「ガソリン税の暫定税率」と呼ばれているものです。
かつては、上乗せ額を道路特定財源(=自動車の利用者が負担する、道路の整備費として用いられる財源)として利用するため、揮発油税と地方揮発油税に「暫定税率」が設けられていました。
しかし、道路との関連が薄い分野にまで道路特定財源が使われるようになっていたことや、国の財政が厳しくなってきたことを踏まえて、2009年4月に道路特定財源制度が廃止され、それに伴って揮発油税と地方揮発油税の暫定税率も廃止されました。
その一方で、従来の暫定税率と同等の「当分の間税率」が設けられ、一般財源化される形で現在に至っています。
2. 「ガソリン税の暫定税率」が廃止されると、ガソリンはどのくらい安くなる?
揮発油税と地方揮発油税につき、本則税率と「当分の間税率」は下表のとおりです。
1リットル当たりに直すと、本則税率では計28.7円、「当分の間税率」では計53.8円です。
さらに現在の税制では、揮発油税と地方揮発油税の金額に対し、さらに10%の消費税・地方消費税が課されています(二重課税)。
消費税等を含めない場合(税抜)と含めた場合(税込)のガソリン1リットル当たりの税負担は、下表のようになります。
したがって「当分の間税率」が廃止されれば、ガソリンは1リットル当たり27.61円安くなります。
さらに、批判されている消費税等との二重課税も廃止されれば、ガソリンは1リットル当たり30.48円安くなります。
3. 「ガソリン税の暫定税率」が廃止されると、国の税収はどうなる?
「当分の間税率」によって徴収されている揮発油税と地方揮発油税につき、令和6年度の税収額は下表のとおりです。
出典:自動車関係諸税・エネルギー関係諸税に関する資料|財務省
当分の間税率ではなく本則税率が適用されたと仮定した場合、揮発油税については1兆0090億円の減収、地方揮発油税については332億1538万円の減収となります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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