3. 老老相続に備えた対策例
老老相続に備えるためには、早い段階から家庭の状況に合わせた対策を講じておきましょう。具体的には、以下のような対策が考えられます。
・公正証書遺言の作成
・生前贈与
・任意後見契約の締結
3-1. 公正証書遺言の作成
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成する遺言書です。公証役場に申し込むと作成できます。
公正証書遺言によってあらかじめ遺産の分け方を決めれば、遺産分割協議における争いを防げます。遺言執行者を指定して、自分が亡くなった後の遺言執行を任せることもできます。
原本が公証役場で保管されるため、紛失や改ざんを防ぐことができる点も、公正証書遺言の大きなメリットです。
3-2. 生前贈与
生前贈与をすると、自分の財産を早い段階から活用してもらえます。生前贈与した財産は遺産分割の対象外となるため、相続争いのリスクを抑える効果もあります。
生前贈与は家族のほか、知人や慈善団体などに対しても行うことができます。誰に財産を活用してもらいたいかをよく考えましょう。
3-3. 任意後見契約の締結
将来的な認知機能の低下に備えるためには、任意後見契約を締結することが効果的な対策です。
任意後見契約を締結すると、認知症などによって認知機能が低下した際、あらかじめ指定した信頼できる人(=任意後見受任者)に財産の管理などを任せることができます。
任意後見受任者には、家族や専門家(弁護士や司法書士など)を選ぶのが一般的です。公正証書で任意後見契約書を作成する必要がありますので、公証役場か専門家に相談してみましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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