「老老相続」とは、亡くなった高齢者の遺産を、高齢の家族が相続することです。亡くなった人も相続人も高齢者であることを表して「老老相続」と呼ばれています。
若い子どもなどが遺産を相続する場合に比べると、老老相続は相続トラブルに発展するリスクが高いです。老老相続になりそうな場合は、事前に対策を講じましょう。
1. 高齢夫婦は老老相続に注意すべき
夫婦の双方がかなり高齢になっている場合は、老老相続に備えておくことをお勧めします。今は元気でも、高齢になると突然体調を崩してしまうリスクが高まるためです。
「相続が起きても、子どもがしっかりしているから大丈夫」などと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子どもがしっかりしているとしても、できる限り子どもに負担をかけないように準備しておいた方がよいでしょう。
老老相続への対策は、早めに行うと選択肢が広がります。家庭の状況を踏まえて、適切な内容の老老相続対策を行いましょう。
2. 老老相続で起こりがちなトラブル
老老相続では、特に以下のような相続トラブルが起こりがちです。
・相続人の認知機能が低下する
・遺産分割前に相続人が亡くなる
2-1. 相続人の認知機能が低下する
相続人が高齢である場合は、認知症などによって認知機能が低下するリスクが高くなります。
自分の行為の結果を判断できない程度に認知機能が低下すると、法律上は「意思能力」がないものとして扱われます。
意思能力がない人は、自ら法律行為をすることができません。自分の判断で法律行為をしても無効になります(民法3条の2)。
遺産分割も法律行為なので、認知機能の低下によって意思能力がなくなった相続人は、自ら遺産分割協議に参加することができません。
家庭裁判所に後見開始を申し立てた上で、選任された成年後見人が遺産分割協議へ参加する必要があります。
2-2. 遺産分割前に相続人が亡くなる
高齢の相続人は、遺産分割がまだ終わっていないうちに亡くなってしまうケースもあります。これは「数次相続」と呼ばれる状況です。
相続人が亡くなった場合は、そのまた相続人が遺産分割協議に参加することになります。
たとえばAが亡くなって相続が発生した後、Aの配偶者Bも遺産分割前に亡くなったとします。この場合、Bの相続人がAの遺産分割協議に参加します。
数次相続が発生すると、相続関係が複雑になり、相続トラブルが発生するリスクが高くなります。また、2つの相続手続きを並行して進めなければならないので、労力の面でもかなり大変です。