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「継承クリスマス」とは?ブラック企業を経て独立した女性経営者が目指す〝長時間労働しなくていい会社〟

2024.12.25

企業にとって、社員や従業員の働きやすさは重要視される点だ。働く人々のウェルビーイングを実現するためには、社員の過ごしやすさや自身の生活との両立も大事になってくる。

温感クレンジング『マナラホットクレンジングゲル マッサージプラス』など、マナラ化粧品を始めとしたスキンケア・ヘアケア商品を手がける株式会社ランクアップでは、12月23日に東京・中央区にある本社で“継承クリスマス”を実施した。

過去最高の物価高の中、子育て世代のクリスマスプレゼントも節約傾向に

“継承クリスマス”とは、社員が家で使わなくなったおもちゃを子どもから子どもへ譲渡する同社の企画で、2023年からスタート。社員100人のうち80人が女性で、子育て世代が半数を占めるランクアップは、子どもの数も60人を超えている。そのためランクアップでは、少子化対策に寄与する育児サポート面で独自の福利厚生を導入している。

例えば、子どもが急に熱を出した時に1日約2万円のシッター費用を会社が全額負担する『病児シッター使い放題制度』や、子どもが病欠となり通常勤務が難しい際に朝5時から22時内で自由に勤務できる『スーパーフレックス制度』、また子どもの長期休暇などで預け先がない社員のために子どもを連れての出社が可能な『子連れ出勤制度』など、子育て世代の働きやすさ・過ごしやすさを整えている。長時間労働を廃止し、子育てしながら働く人々を支える独自の福利厚生で、育休・産休からの復職率は100%。13年・16年の『東京ライフ・ワーク・バランス認定企業』としても表彰されている。

“継承クリスマス”は、そんな子育て世代の社員たちがクリスマスプレゼントをシェアし合える場。24年10月7日に明治安田生命が発表した「子育てに関するアンケート調査」によると、子育てにかかる費用の月額平均は4万1320円。前年の4万133円から1187円増加しており、調査以来、過去最高値を記録している。

また株式会社ファミリーマートが同年10月に実施した「クリスマスに関する意識調査」では、「昨年と比べて、今年のクリスマスで使う金額には物価高の影響があると思うか」という質問に対し、全体の68%が「影響がある」と回答。その影響として、「クリスマスプレゼントにかけるお金を節約する」という回答も見られ、過去最高の物価高の中でクリスマスも節約志向であることが明らかになった。

使わなくなったおもちゃを次の世代のクリスマスプレゼントとして継承

ランクアップは23年に実施して好評だった“継承クリスマス”を今年も開催。社内の会議室がクリスマスツリーやバルーンで装飾され、机いっぱいにおもちゃや洋服、靴などが広げられた。ほとんど使用されていない自転車や、積み木、車や列車のおもちゃ、絵本、ゲーム、お菓子などがズラッと並ぶ。どれも、社員の子どもたちが使わなくなったおもちゃを持ち寄ったものだ。

ママやパパが赤ちゃんや幼児たちを連れて会議室に入ると、子どもたちは喜んで次々とプレゼントを選んでいく。特に個数制限はなく、子どもたちは気に入ったもの好きなだけ持って帰ることができる。4歳と2歳の姉妹を育てるママは、「こういう風にいただけるのは、ありがたい。今日はすでに4~5個選びました」と喜び、「子どもが大きくなってきたので、職場も見せたいなというのもあって連れて来ました。来年もぜひ機会があったら連れてきたいです」と語った。

また、10月にランクアップに転職してきたばかりの男性社員は4歳の男の子と2歳の女の子のパパ。年明けには3人目が生まれるという。副社長が持参したという自転車や、車のおもちゃ、洋服などを選んだ。男性は「転職してきて3か月くらいですが、こうした取り組みは前の会社ではなかったので驚いています。ママさんが多い会社なので、子どもやママさん、子育て世帯に対する気遣いは今までに見たこと・聞いたことがないほどです」と驚き、「プレゼントは経済的にもすごく助かります。社内には中学生以下くらいの子どもが多いので、自分も子どもが大きくなった時に恩返ししたいと思います」と語った。

また「3人目を妊娠中の妻や子どもが体調を崩した時も、その度にリモートワークを振り替えさせてくれます。以前はシステムエンジニアとして働いていて残業も多かったのですが、ここは“定時の中で成果を出していく”というスタンス。子どもと過ごす時間も増えました」と、働きやすさを実感しているという。

ブラック企業を経て独立した女性経営者が目指す「長時間労働しなくていい会社」

こうした取り組みについてランクアップの代表取締役・岩崎裕美子氏は、起業に至った経緯も含めて思いを明かした。

「ランクアップは副社長の日高由紀子と2人で始めた会社です。私も日高も、もともと広告代理店で働いていましたが、当時はブラックで、出産するとクビなんですね。居場所がないんです。『夜中まで働けない人はいらない』という世界。私自身も35歳くらいになった時に、『仕事は好きだけど、このままではやっていけない。いつか結婚や出産もしたいけど無理。このまま“男”となって働くのか』と、すごく悩みました」

当時、夜中まで働き肌がボロボロになった岩崎氏は、「化粧品会社として独立しよう。自分の肌を自分できれいにしてみせよう」と思い立ち、日高氏と2人で独立した。「女性が一生活躍できる、長時間労働しなくていい会社にしたかった」という思いからランクアップを立ち上げ、現在に至る。

100人中半数の社員が子育て世代という中で、「子どもが着た洋服などを他の人に渡す“お下がり”はこれまでもあったのですが、洋服だけでなく、『クリスマスの時期におもちゃをプレゼントできたらいいね』となりました」と、クリスマスプレゼントを継承する案が挙がってきたという。

「おもちゃは年齢で遊ぶものが変わるため、どんどん廃棄されます。誰かにあげたくても、男の子用、女の子用など制限され、周りにあげる人がいない場合もあります。洋服は親同士であげるけど、おもちゃはあげる人が狭まってしまうので、集めて会社に持ってくれば、うれしい発見があるじゃないですか。去年から始めましたがすごく大好評です。クリスマスは、おじいちゃんやおばあちゃんからもプレゼントをもらうので、自分が遊ばなくなった何年か後にまた会社に持って来て次の世代に渡せますし、そのためにきれいに使いたくなります。SDGsとしても、こんないいことはないですよね」

“継承クリスマス”はおもちゃだけでなく、子ども用の服や靴も用意されているため、ママやパパたちが子どものために選んで持ち帰ることができる。「この時期、小学生は午前中はまだ学校なので、会社には赤ちゃんや幼児しか来られません。そのため午前中が“子どもの部”で、先に子どもたちにおもちゃを選んでもらって、子どもと一緒に参加できない親は、午後から自分で子どものおもちゃや服を選んで帰ります。60人以上子どもがいるので全員は会社に来られないので、親が選んで持ち帰れます」と、出社できない子どもたち用にも持って帰ることができる。

子育て世代が働きやすい環境については、「長時間労働をしない」ということをモットーにしているという。

「残業ランキングが毎月あります。例えば10年に1度の大きなシステム改修など、“理由がある残業”ならいいんです。でも慢性的にずっとランキングに載るというのは、何かしら改善ができていないということ。人を採用する、アウトソーシングするなど、解決しないといけない。残業は、見過ごすとずっとやってしまう。一瞬でブラック企業に戻ってしまいます。だから解決しないといけない」

長時間労働をさせないために、社内資料は「作り込まなくていい」ようにパワーポイントではなくワード1枚に。またAIを導入し文章作成を行い、入力作業や事務作業もシステムを構築し負担を軽減するなど徹底している。「資料はすごくきれいに作ると時間がかかります。でもワード1枚にすれば2時間かかるものが30分になる。パフォーマンスが変わらなければ、生産性をあげるために『これはやらなくていいんじゃないかな』というものはどんどん廃止しています」と、時短につながるものは積極的に取り入れているという。

「私自身は41歳で子どもを産んでいますが、その頃から『長時間労働しないで』と言ってあります。今子どもがいない人も、いつか子どもが生まれた時には時短勤務になる時期が出てきます。22時まで働いている人がいると、ママが居づらくなりますよね。(今子どもがいない人も)いつか同じ思いをする可能性があるわけです。自分も帰れないですから。だから最初から残業を禁止して、(子どもがいる人もいない人も)みんなが早く帰れるようにしました。そのため、社内に時短の人がいても軋轢(あつれき)は少ないと思います」

自身が“ブラック”を経験し、現在子育て世代を多く抱えるからこそたどり着いた労働環境。岩崎氏は、「私は経営者だから、19時半まで働くのはいいかもしれない。でも私の後に子どもを生んだ社員たちが、19時半まで保育園に預けられるかといったら無理です。これでは辞めてしまうなと思ったんです」と語る。「入社した社員が経験を積んでスターになって活躍しているのに、子どもを産んだだけで辞められると、会社もやっていけない。肩身が狭くなると辞めてしまう。だから『なんとしても辞めてほしくない』という気持ちの表れです」と、長時間労働削減への思いを明かした。

子どもへのクリスマスプレゼント継承や洋服の譲渡など、働き方だけでなく子育て世代の実生活にも役立つ企画をしているランクアップ。こうした取り組みは、社員のウェルビーイング向上にもつながっているかもしれない。

取材・文/コティマム

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