あおり運転が社会問題化する中で、ドライブレコーダーの重要性が高まっている。では実際にあおり運転の被害に遭った人や、その対策としてドライブレコーダーを設置している人はどれくらいいるのか。
チューリッヒはこのほど、今年で7回目となる「あおり運転実態調査」を行い、全国の普通自動車免許と自宅に自動車を所有し、週1回以上運転をしている18~69歳の男女2,230人から回答を得た。
あおり運転をされた経験があるドライバーは72.5%と、昨年の53.5%から19ポイントの上昇
あおり運転をされた経験のあるドライバーは72.5%と、昨年と比較して19ポイント上昇し、半年の間でも24.1%となった。また、悪質なあおり運転事件に関する報道をうけて、79.8%と多くのドライバーが、あおり運転を受けないよう以前より意識して運転をしている。
■九州大学 志堂寺教授の見解
今回の調査ではここ3年であおり運転を受けた経験を持つ回答者が45.4%にもなりました。半数近くの回答者があおり運転の被害を受けていることは、あおり運転をはじめとする妨害運転に対する厳罰化の効果が限定的であったことを示しています。特に注目したいのはこの半年の間にあおり運転を受けた回答者が24.1%もいることです。
半年というまだ記憶に新しい期間でのこの数字は、現時点においてもあおり運転がまだ日常的に横行している状況を表しています。あおり運転を防止するための社会的な取り組みをさらに強力に実施する必要があると共に、ドライバー自身においてもあおり運転にあわないための工夫をしなければならないと考えられます。
「改正道路交通法」により、あおり運転が「減少したと思う」と回答したドライバーは51.5%
悪質なあおり運転に起因する事件、事故が多発し、あおり運転に対する問題意識が高まっている。2020年6月には、あおり運転の厳罰化を盛り込んだ「改正道路交通法」が施行された。
この法改正によりあおり運転が減少したと思うかとの問いでは、「減少したと思う」と回答したドライバーは51.5%となった。また、「減少したとは思わない」と回答した人は、理由として「危険な運転をする人の心理や行動は変わらないと思うから(68%)」が最も多く、前年と同様の結果となった。
遭遇したあおり運転は、「激しく接近し、もっと速く走るように挑発してきた」が76.5%と最多
遭遇したあおり運転について聞いたところ、「あなたの自動車に激しく接近し、もっと速く走るように挑発してきた」が76.5%、続いて「必要のないハイビームをされた」が22%となった。また、あおり運転をされた際にとった行動としては、「道を譲った(44.3%)」「何もしなかった(32.5%)」と、あおり運転をやり過ごしたドライバーが目立つ結果となった。
■九州大学 志堂寺教授の見解
前の車に異常接近することはあおり運転の最も典型的なものです。調査でも76.5%と突出して多い結果となりました。異常接近するようなあおり運転の場合は、もっと速く走ってほしい、あるいは違う車線に移ってほしいという、多少いらだちが入った気持ちの表れであることが多いものです。
このことに早く気づいて道を譲るなどの、あおってくる車を先に行かせるような対応を取ることで解決ができることが多いと思います。しかし、あおってくる車のドライバーがいらだちではなく怒りの感情を抱いているような場合は、異常接近してくるだけでなく、より危険性の高い行動を取ってくることがあります。このような場合は対応が非常に難しくなります。
日常生活においてもわれわれは怒って他人を攻撃(大人の場合はさすがに身体的な暴力はあまりないかもしれませんが、言葉による暴力はあるのではないでしょうか)している人に出会うことがありますが、そのような人の怒りを鎮めて攻撃を止めさせることは容易ではありません。あおり運転の場合も同じです。しかも運転時には取ることができる行動は非常に限られています。火に油を注ぐようなことはせずに、その場の状況に応じた、冷静な対応が必要です。
あおり運転をされたきっかけに思い当たることがない人が76.3%
あおり運転をされたきっかけについて、思い当たることがない人が76.3%と、多くを占める結果となった。「思い当たることがある」と答えた人にきっかけと考えられる運転行動を聞いたところ、「制限速度で走っていた(26.3%)」「スピードが遅かった(17.9%)」と続き、あおり運転のきっかけと考えられる行動は、運転速度に関するものが多い結果となった。