長期間にわたる血圧の変動が、高齢者の思考力や記憶力低下の原因となる可能性を指摘する新たな研究結果が発表されました。血圧管理は心臓の健康だけでなく、脳の健康にも重要であることが示唆されています。
血圧の経時的変動は高齢者の認知機能に悪影響を及ぼす
血圧の管理は、心臓の健康のためだけでなく、加齢に伴い低下する頭脳の明晰さを保つ上でも重要であるようだ。時間の経過に伴い血圧が大きく変動していた高齢者は、思考力や記憶力が低下する可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。
米ラッシュ大学のAnisa Dhana氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月11日掲載された。Dhana氏は、「これらの結果は、血圧の変動が高血圧自体の悪影響を超えて認知障害のリスク因子であることを示唆している」と述べている。
この研究では、白人と黒人を対象に実施されたシカゴ健康と加齢プロジェクト(1993~2012年)への65歳以上の参加者4,770人(平均年齢71.3歳、女性62.9%、黒人66.0%)を対象に、経時的な血圧変動と認知機能との関連が検討された。試験参加者は、3年ごとに18年間にわたって血圧測定を受けていた。収縮期血圧と拡張期血圧は、前回の測定値との差の絶対値を全て合計し、それを測定回数から1を引いた数(n−1)で割って算出した。認知機能は、標準化された認知テストで評価して総合スコアを算出し、zスコアとして表した。
収縮期血圧の変動幅の平均値は、黒人で17.7mmHg、白人で16.0mmHgであった。解析の結果、収縮期血圧および拡張期血圧の変動幅が大きいほど、追跡終了時の認知機能の低下が大きいことが示された。収縮期血圧の変動幅が小さい(第1三分位)群と比較して、変動幅が大きい(第3三分位)群では認知機能のzスコアが0.074低かった(β=−0.074、95%信頼区間−0.131~−0.018)。これは脳年齢に換算すると、約1.8歳の加齢に相当するという。
血圧の変動と認知機能との関連を人種別に検討すると、有意な関連が認められたのは黒人のみであり、収縮期血圧の変動幅の第1三分位群では第3三分位群と比較すると認知機能のzスコアが0.115低く、これは脳年齢で2.8歳の加齢に相当すると推定された。これに対し、降圧薬による血圧コントロールを行っている人では、追跡終了時に認知機能に低下は認められなかった。
以上のような結果が示されたものの、Dhana氏は、「この研究は観察研究であり、血圧と認知機能との間に直接的な因果関係があることを明らかにしたわけではない。この点に留意することは重要だ」と話している。
Dhana氏は、「高齢者の血圧を定期的に測定して、その経時的な変化をモニタリングするべきだ。それにより、血圧の変動が大きく認知機能に問題が生じる可能性のある人を特定でき、それを軽減するための対策を講じることが可能になる。それが、認知機能の問題を予防または遅延させるのに役立つ可能性がある」と話している。
さらに同氏は、「高齢化社会とアルツハイマー病の蔓延に対応して、高齢者の認知機能の低下を遅らせる予防戦略を特定することが、公衆衛生上の優先事項となっている。血圧とその変動の管理は、そのような予防戦略において、修正可能で重要なリスク因子として浮上しつつある」と話している。(HealthDay News 2024年12月12日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000210151
Press Release
https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/5218
構成/DIME編集部
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