小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

株配りで話題の前澤友作氏が率いる「カブアンド」を利用する前におさえておくべき2つのリスク

2024.12.24

ファッションEコマース「ZOZO」創業者の前澤友作さんが始めた「カブアンド」という株が貰えるサービスに、買取保証が表明された。同サービスを運営する「カブ&ピース」社が12月20日に発表し、それに対し、SNS上では様々な意見やコメントが飛び交っている。

そもそもカブアンドとはどのようなサービスか。また買取保証サービスとはどういうものか。これらのサービスを利用する際に、知っておくべきリスクは何か。詳しくまとめた。

カブアンドは、サービス利用時の利用者還元で「株式」が貰えるサービス

出典:カブアンド

カブアンドが提供する、電気、ガス、MVNOやインターネット回線などのサービスを利用すると、その利用料金に応じて、サービス運営元の「カブ&ピース社」の株式と交換できる引換券が貰える。引き換えた株式は、未上場なので換金するのが難しい。証券取引所に上場すれば売買可能になるが、それがいつになるか。また本当に上場できるのかは不確実性が高い。現段階では、「他のサービスを利用したほうが結果的にお得だった」事態が起きやすいというわけである。

利用者数の視点では、同社リリースによると、11月20日のサービス提供開始以降、20日で会員数100万人を突破し、各サービスの申込総数は35万件を突破している。そのサービス面ではKABU&モバイルサービスの配送遅延や回線切り替えなどの品質不良もあったが、総じて右肩上がりでユーザー数が増えている。

尚、サービスの申し込みが想定を上回るとして2024年12月31日いっぱいで全てのサービスの申し込みを一時停止する。と、12月23日付で同社が発表(https://kabuand.com/notice/news/item/qd5q6gfxwvm50qbq069z3f4w08)した。注目度の高さがうかがえる一方、再開予定は未定であるため、始めるなら今のうちかもしれない。

■12月20日リリース時:前澤友作さんのXのポスト

出典:https://twitter.com/yousuck2020/status/1870008856925061612

12月22日時点で500件以上の返信や2200件以上のリポストがつき、サービスについて、投資のプロなら利用しないなどのアンチコメントや、前澤さんの本気を感じるなどのポジティブコメント、インターネット回線の開通が遅いなどのサービスに関するコメントが飛び交う。

3年以内にカブ&ピース社が上場できなければ、貰った株式を買い取ってくれる

出典:カブアンド

12月20日に同社が発表した買取保証では、3年以内にカブ&ピース社が上場できなければ、カブアンドを利用して得たカブ&ピース社の株式を買い取ってくれるので、「サービス利用で得た株式がゼロ円の紙くずになってしまう」リスクを回避できる。3年後に売るかどうかは利用者の判断に委ねられている。

同社リリースでは、“上場できなかった場合の不安から、サービス利用を躊躇されている声も多数いただいております。そこで、(中略)より安心してカブアンドをご利用いただけるようにする”と、利用者を裏切らない姿勢を見せている。

カブアンドで認識したいリスクは2つ

ここからは、カブアンドや買取保証の特長について深堀してみたい。この深堀に役立つのが、カブ&ピースが発行した「カブアンド種類株式第1期募集 新株式発行届出目論見書」(以下、同目論見書)である。普通に生活しているとなかなか目にすることはないが、投資に関する経験値を積むために読み込んでみることをおすすめする。

前置きはさておき、カブアンドの利用と買取保証の利用を考える場合に、考えておきたいリスクは以下の2つを詳しく解説しよう。

念のため補記するが、カブ&ピース社や同創業者の前澤友作さんを批判する意図はなく、「どのようなリスクがあるか」を客観的に評価したものである。


■カブアンドとその買取保証で考えたいリスク
リスク(1):カブ&ピースが3年以内に倒産または消滅するリスク
リスク(2):3年後に“安く買い取られてしまう”リスク


尚、これらのリスク以外にも、上場後に、業績が伸び悩み非上場に戻ったり、倒産したりしてゼロ円になるリスクなど様々なリスクがあるが、ここでは3年以内に上場しない前提でのリスクとしてまとめた。同目論見書によれば、3年の期限は、2027年12月31日となっている。

■株引換券の対象は29.66億円で、2025年5月が交換の目途か?

出典:同目論見書

株引換券の対象となる種類株式の情報では、29.66億円が引換券の対象で、2025年4月25日に条件を決定するとあり、同年5月2日から23日が申込期間となっている。

このタイミングで、株引換券で引き換えた1株当たりの価格が決まり、またこの金額が3年後の買取時の価格算定基準となるようだ。

カブアンドのリスク(1):カブ&ピースが3年以内に倒産または消滅するリスク

「3年後に買取保証する」旨を目にすると、なんとなくでも3年はサービスが継続すると思い込んでしまわないだろうか。いくら前澤友作さんの経営手腕が優れていようとも、経営成績が必ず良好になる保証はなく、売上が思うように上がらなかったり、他社と合併してカブ&ピース社が非存続会社となって消滅したりする可能性がある。

3年経たずうちにカブ&ピース社が無くなると、引換券で貰った株式はゼロ円紙くずとなってしまうのである。投資金を直接入れたわけでない分、損失は小さいと言えるが、ゼロ円紙くずになるのは悲しいものである。

また、引換券で貰える株式には議決権がないこともリスクだといえる。カブ&ピース社の経営に関しては口出しができないので、仮に3年以内に倒産することになった場合でも、議決権を持つ株主の方針に沿わなければならない。(以下図)

■カブアンド種類株式=株引換券で貰える株式 には、株主総会の議決権がない

出典:同目論見書

カブアンドのリスク(2):3年後に“安く買い取られてしまう”リスク

リスク(1)と異なり、カブ&ピース社が3年存続しかつ上場できなかった場合に、実際に買い取ってもらった時をイメージしたのがリスク(2)“安く買い取られてしまう”リスクである。言い換えると、“受け取れる利益が限定的となってしまうリスク“ともいえる

これは、買取条件が“種類株式の評価額 または 払込金額相当×1.2倍のうち小さいほう”(リリース記事より一部省略)となっているためである。

例えば、引換券で10,000円分(=払込金額相当)の株式を引き換えた場合、3年後に評価額が15,000円だったとしよう。その場合は、【払込金額相当×1.2】=12,000円になるので、買取価格は12,000円になってしまう。

さらにその後カブ&ピースが証券取引所への上場を果たした場合は、株式市場で、15,000円で売れるかもしれないし、カブ&ピース社がさらに成長して価格がさらに大きくなるかもしれない。

株式の元手をたどれば、サービス利用時の還元策なので、直接の株式購入額はゼロ円であるものの、その株を入手するのに様々なサービスを利用した消費者の気持ちを考えると、利益が限定的だった分、カブ&ピースや前澤友作さんに裏切られたと思うだろう。

つまり、「安く買い取られてしまう」リスクには経済面のリスクと、自分のメンタルを害してしまう精神面のリスクがある。

■企業の設立から上場まで一般的には7~8年かかる

出典:特許庁/スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書

特許庁が2022年に発表した同調査結果によれば、企業の設立から上場までは平均90.6か月(約7~8年)かかるので、3年で上場できないのは失敗ではなく、その後上場できる可能性も当然ある。

■企業が上場するまでに最低でも3年かかる

出典:日本証券取引所

企業が上場しようとした場合には、上図の通り最低でも3年かかる。事前にショートレビュー手続きを進めるなど様々な仕込みをカブ&ピース社はしているはずだが、情報は開示されないので、どこまで進捗しているか。また本当に上場できる体制となっているかは未知数であり、リスクでもある。同社のニュースリリースなどの公開情報を追い続けなければならない。 


■リスクのまとめ(結論)
リスク(1):カブ&ピースが3年以内に倒産または消滅するリスク
―>カブ&ピースの営業が上手くいかない。または他社と合併した場合のリスク

リスク(2):3年後に“安く買い取られてしまう”リスク
―>カブ&ピースの営業が上手くいったが、交換した株で得られる利益が少なくなる場合のリスク


ご自身の消費者マインドと投資家マインドを繋げるのに活用できる

リスクを中心に論じたので、カブアンドに対し否定的なイメージが強くなってしまったかも知れないが、実際にこれらのリスク事象が発生するとは言い切れない。

最良のシナリオである3年以内に上場を果たし、交換した株が証券取引所で取引できるようになりかつ、その値が大きくなっていく可能性もあり得る。この場合は、上場した株式の証券会社への入庫手続き忘れや売却忘れに気を付けたい。

仕組み的には、利用代金のポイント還元施策の延長で株式が貰える形なので、ご自身の資産が目減りしてしまうリスクは極小である。

この資産目減りリスクが極小の中、消費者として利用したサービスがどのように会社や投資家に還元されていくのか。また投資家はどのような情報を得ているのか。証券取引所に上場するのにどのような書類が提出され、手続きがどう進んでいるのかを追いかけ学ぶ機会として活用してもらいたい。

当然、カブアンドや前澤友作さんを応援したいという気持ちでサービスを利用するのもアリだ。

文/久我吉史

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年12月16日(月) 発売

DIME最新号は、「大谷翔平研究!」。今年を象徴するDIMEトレンド大賞の発表や、Aぇ!group、こっちのけんと他豪華インタビューも満載!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。