人生は挑戦と失敗の連続。それを乗り越えるために走り続けるしかない
2人はどちらも40代後半。その年齢になってもサッカーへの探求心が薄れないのは、やはりサッカーの奥深さを知っているから。これまでも数々の壁にぶつかり、それを乗り越えようと懸命にトライを繰り返してきたが、正解はまだ見つかっていない。
だからこそ「もっともっと上を追い求めたい」という気持ちになる。それは現役を離れて長い月日が経った今も変わらない。彼らはひたむきに仕事と向き合い続けているのである。
「僕の人生を一言で表現するとしたら『挑戦』。サッカーをここまで仕事にするとも思っていなかったけど、飛び込んで先の見えないことに挑み続けてきたのは事実で、その結果として今の自分がいる。ここから先も挑戦は続くし、苦しいこともあるかもしれない。でも挑戦を続けたい」と川口GKコーチは語気を強めたが、福西氏も同じ思いを抱いているという。
壁を乗り越えるのは容易なことではないが、自分でその術を見出すしかない。福西氏は「他の人とは違う方法で活躍できる道があるかどうかを探し当てることが大事。僕も最初はFWだったのに、ボランチにコンバートされてから、いろんな人を見て、頭で考え、進むべき道を模索してきました。就職でも仕事でもそうですけど、どういう方向があるかを探してほしいし、その道を見つけたら覚悟を持って突き進んでほしい。それがハードルを越える近道だと思います」と話していたが、その考え方はビジネス社会にも通じるはずだ。
ある組織にいて自分がやりたい仕事を与えられなかったり、上司や部下との意思疎通がうまくいかないといった問題に直面することはある。が、それをどう改善していくかを頭で考え、違ったやり方を見出さない限り、解決には至らない。
誰しもメンタル的に下がる時期があるし、前向きになれないこともある。が、川口GKコーチが言うように、チャレンジ精神を持ち続けなければ、前進はない。彼らの経験や言葉はきっと実社会でも役に立つ。今回のセミナー参加者はいいヒントをもらえたのではないか。
藤田SDと川口GKコーチが来季の磐田をどう変化させていくのか。福西氏も少し遠い立場から磐田の復活をどうサポートしていくのか。そこは興味深いところ。彼らには若いビジネスパーソンに勇気や希望を与えるようなアクションを起こし続けてほしいものである。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。