「随時、ご焼香ください」「随時昇給」のように、案内文や求人票などに「随時」という言葉を見かけることがあります。また、日常的に使うこともあるかもしれません。そもそも随時とは何なのか、どのようなシチュエーションで使える言葉なのか気になったことはありませんか。随時の意味や使い方、適宜との違いについて解説します。具体的な例文もご紹介すので、ぜひ参考にして随時を使いこなしてください。
目次
随時という言葉を正しく使えていますか?間違えて使ってしまうことのある言葉の意味をあらためておさらいしていきましょう。
随時とは?意味をご紹介
■随時の意味
随時(ずいじ)とは、適宜なときに行う様子のことです。たとえば、「随時、建物を巡回する」といえば、必要だと思われるときに建物内を見回ることを指します。
また、随時は、日時に制限がないことや好きなときにいつでもといった意味で使われることもあります。「随時、お問い合わせください」といえば、気になったことがあればいつでも連絡してほしいといった意味です。
参考:デジタル大辞泉
■随時と適時の違い
随時と混同しがちな言葉として、適時(てきじ)が挙げられます。適時とは、ちょうどよいときのことです。「ちょうどいい」と思われるタイミングは適時、必要だと思われるタイミングや「いつでも」といったニュアンスを表現したいときは随時と、使い分けましょう。
たとえば、セミナーを開催するときに「随時お帰りください」と案内すると、参加者は「早く帰ったほうがよいのかな?」と受け取り、聞きたい話があっても早めに退席するかもしれません。一方、「適時お帰りください」なら、聞きたい話が終われば、いつでも好きなときに参加者は退席できるというニュアンスが伝わりやすくなるでしょう。
参考:デジタル大辞泉
■随時と適宜の違い
適宜(てきぎ)とは、状況によく合っていることや、その時々に応じて各自の判断で行動する様子を指す言葉です。
- 成績不振者には、適宜個人指導をします。
- 工場見学後は、適宜解散とします。
適宜は状況を見て、特定の誰かあるいは各自が行動を判断することです。随時のように「いつでも」といったニュアンスはなく、状況をしっかりと見て行動するタイミングを決める必要があります。
参考:デジタル大辞泉
■随時と臨時の違い
臨時(りんじ)とは、あらかじめ定めたときでなくその時々の事情に応じて行うことや、一時的であること、その期間だけであることを指す言葉です。
- 臨時に総会を開催した。
- ドラマの舞台になったことで急にお客さまが増えた。臨時にスタッフを雇う必要がある。
臨時には随時のように「いつでも」といったニュアンスはありません。特定の事情がある時期のみを指す場合は、随時ではなく臨時を使うようにしましょう。
参考:デジタル大辞泉
■随時と都度の違い
都度(つど)とは、物事が行われるたびごと、あるいは毎回という意味の言葉です。
- 帰郷の都度、墓参りをする。
- 田町の駅を利用する都度、駅前のコーヒーショップに立ち寄る。
随時には「いつでも」という意味がありますが、必ずしもすべての機会を指すのではありません。たとえば、「ご利用の際は随時ご連絡ください」といっても、利用するたびに連絡してほしいという意味ではありません。
しかし「ご利用の際は都度ご連絡ください」といえば、利用するたびに毎回連絡してほしいという意味を指します。特定の状況で特定の行動を指示するときには、「都度」を使うようにしましょう。
参考:デジタル大辞泉
随時を使ったよくある言葉
随時は、他の熟語とつなげて使うこともあります。よく見られる言葉と意味をご紹介します。
■随時昇給
昇給制度は企業によって異なります。年齢や業績に応じて毎年一定の時期に昇給が実施されるなら「定期昇給」、企業の業績が好調なときに実施される場合は「臨時昇給」というように呼び分けることもあります。
随時昇給とは、特定の理由や時期を決めずに必要なときに昇給が実施されることです。求人票に「随時昇給」と記載されているときは、本人の努力次第で短期間に昇給されることもあります。
■随時改定
随時改定とは、必要に応じて改定が実施されることです。たとえば、厚生年金保険料や健康保険料といった社会保険料は、被保険者の給与によって変わります。通常は年に一度調整しますが、給与が大幅に変わったときは定時改定を待たずに随時改定を実施することがあります。
■随時焼香
随時焼香とは、決められた時間内ならいつでも焼香できる葬儀のスタイルのことです。時間を調整しやすく、忙しい方でも参加できるというメリットがあります。
■随時血糖
随時血糖とは、食事時間を問わずに採血した場合の血糖値のことです。10時間以上絶食した後で採血・測定する空腹時血糖値とは、医学的には同一ではないものとして扱われます。
随時を使いこなそう
随時は便利な言葉ですが、臨時や適宜といった類似する言葉も多く、使い分けは少々複雑です。ご紹介した例文も参考に、適切な場所・タイミングで使っていきましょう。
構成/林 泉