
「何もしたくない」「わたしには価値がない」と、感じたことはありませんか?もしかしたら、虚無感に襲われているのかもしれません。虚無感にとらわれると物事にやる気がなくなり、虚しさを感じます。虚無感とはどのような感情なのか、また、感じる理由や感じたときに実践したいことをまとめました。
目次
虚無感とは?意味をご紹介
虚無感(きょむ)とは、この世に存在するすべてのものに価値や意味を認めないことです。何物もなく、虚しいことも指すことがあります。
また、虚無は、古代中国の老子の哲学で、万物の根源・本体は測りがたく無であることも意味します。このような虚しい感情が、「虚無感」です。
- 彼女は常に虚無感を抱えて暮らしている。
- どんなに頑張ってもいつかは死んでしまうと思うと、いいようのない虚無感を覚える。
虚無と類似する言葉として、「空虚(くうきょ)」が挙げられます。空虚とは内部に何もないことやその様子、空っぽであること、実質的な内容や価値がないことです。空虚な感情を「空虚感」と表現できます。
- いったい何のためにわたしは働いているのだろう。空虚感に満ちた生活を送っているのに……。
- 長い歳月をこのプロジェクトにかけてきた。成功して嬉しいはずなのに、今わたしは空虚感に支配されている。
参考:デジタル大辞泉
■【例文1】虚無感に襲われる
虚無感は、次のように使われることがあります。
- 虚無感に襲われる
- 虚無感にとらわれる
- 虚無感に苛まれる
「襲う」は不意に攻めかかることや不意に危害を加えることですが、「襲われる」のように受け身の形で使われるときは、好ましくないことが覆いかぶさるようにやってくることを指すことがあります。
虚無感は、虚しい感情です。決して好ましいこととはいえないため、覆いかぶさるようにやってきたときは、「襲われる」と表現しても不自然ではないでしょう。
- 一人暮らしの部屋に帰り、虚無感に襲われた。
- 虚無感に襲われたときは、何も考えずにただ目をつぶって眠るようにしている。
参考:デジタル大辞泉
■【例文2】虚無感にとらわれる
「とらわれる」は、捕まえられるやとらえられるのように身体が拘束される意味で使われる言葉ですが、固定した価値観や考え方などに拘束されるときにも使われます。
一時的ではなく長く虚無感に支配されているように感じるときは、「虚無感を覚える」ではなく「虚無感にとらわれる」のほうがしっくりとくるかもしれません。
- 慕っていた先輩が亡くなってから、ずっと虚無感にとらわれている。
- 虚無感にとらわれているのか、何をしても楽しいと思えない。
参考:デジタル大辞泉
■【例文3】虚無感に苛まれる
「苛む(さいなむ)」とは、𠮟ったり責めたてたりすること、また、苦しめたりいじめたりすることを指す言葉です。虚無感を単に感じるだけでなく、虚無感に苦しめられていると感じるときは、「虚無感に苛まれる」といった表現が適しているかもしれません。
- もう長い間、虚無感に苛まれている。
- 彼の焦点の合わない目を見れば、虚無感に苛まれていることは明らかだ。
参考:デジタル大辞泉
虚無感を覚えるよくある理由
どのようなときに虚無感を覚えるかは、人それぞれです。同じ経験をしても、虚無感を覚える人もいれば何も感じない人、やる気を刺激される人もいます。
個人差はありますが、次の理由から虚無感を覚えることが多いようです。
- 生きがいを失った
- やりがいを感じられない
- 自信を喪失している
- 将来に不安を感じている
それぞれの状況が虚無感につながる仕組みについて、見ていきましょう。
■生きがいを失った
生きがいを失うと、大きな喪失感に襲われます。喪失感が長く続くと、いつしか虚しさが感情を支配するようになり、虚無感が生まれるかもしれません。
たとえば、大切な人や動物は生きがいであり、生きる理由の一つです。失恋をして恋人を失う、事故や病気などで家族や知人が亡くなる、ペットが迷子になって帰ってこないことなども想定されます。
また、仕事や家も生きがいの一つです。退職して社会的な役割を失ったり、病気や倒産などにより仕事を失ったり、災害により住む場所を失ったりすることで虚無感が生まれることもあります。
■やりがいを感じられない
感情は、常に揺れ動いています。今までやりがいを感じていたことも、何かのきっかけで、あるいは特にきっかけなく、やりがいを感じられないようになるかもしれません。やりがいを感じないまま生活し続けると、空虚感から虚無感が生まれることもあります。
また、もともとやりがいを感じることがなかったケースもあります。仕事や日常生活において目標が見つからない、一人でできる趣味がない、友人や家族と過ごすこともない……といった方なら、ふとしたときに感情が手持ち無沙汰になって虚無感を覚えるかもしれません。
目標が見つかっても同様です。その目標を達成したときに新しい目標を見つけられず、やりがいのない日々を過ごすこともあるでしょう。
■自信を喪失している
自信を喪失したときに生まれた喪失感が長引くと、虚無感を覚えることがあります。「自分は何もできない人間だ」と思い込み、「どうせ何をやってもうまくいかない」と新たにチャレンジすることも億劫になるかもしれません。
たとえば、仕事で大きなミスをして上司に指摘されたり、取引先から信用を失ったりすることで、自信を喪失することがあります。
また、大きなミスでなくても、「これはわたしの得意分野だ」と自覚している分野で些細なミスをして、自信を喪失するケースもあるでしょう。
人間関係がうまくいかないときも、自信を喪失しがちです。恋愛がうまくいかない、友人ができない、友人と思ったらフレネミー(友人を装った敵。普段は友人のように振る舞っているが、実は相手を陥れてやろうとたくらんでいる)だったというケースも、自分という人間が嫌になり、喪失感や虚無感を覚えやすくなります。
■将来に不安を感じている
将来に不安を感じると、不安感が虚無感を生むことがあります。たとえば、老後の生活費が心配になり、「できる限りお金を貯めよう」と決意をしたとしましょう。
しかし、現実は給与内で生活をするのが精一杯で貯金をする余裕がないなら、「このままでは困窮する未来しかない」と思い詰め、虚しさを感じるかもしれません。
また、「結婚願望はあるが恋人ができたことがない」「業界全体が不振で社内でリストラのうわさが出ている」など、さまざまな不安が圧しかかり、虚無感を生む可能性もあります。
虚無感を覚えたときに実践したいこと
虚無感を覚えたときは、そのままでいるのは好ましいとはいえません。虚無感が長く続くと、いつの間にか、「生きることに意味があるのだろうか」「自分という存在は必要なのだろうか」と思考が内に入り込み、ポジティブな気持ちを持ちにくくなることがあります。
虚無感に襲われたときに実践したいことを、いくつかご紹介します。
■自分の気持ちを言語化して整理する
虚無感は、漠然とした虚しい気持ちです。しかし、漠然としたままで放置していると、いつまでも虚無感はなくなりません。
まずは虚無感の正体を見極めるためにも、自分の気持ちを言語化して整理してみましょう。いいようのない不安を感じているなら、「なぜ不安を感じるのか」という点を深掘りします。
お金に余裕がないことが不安の原因なら、収入や貯蓄を増やす具体的な計画を立てることで不安を払拭できるでしょう。副業を始める、定期預金を始めるといったことでも不安を軽減できるかもしれません。
■自分の気持ちを信頼できる人に話す
言語化して、整理した気持ちを信頼できる人に話してみましょう。思いを共有することで虚しさが軽くなり、虚無感から脱出しやすくなります。
相手によっては、具体的なアドバイスをもらえるかもしれません。多角的に問題を見つめられるようになり、心に圧しかかっていた不安が払拭される可能性もあります。
また、アドバイスをもらえなくても、思いを共有するだけでも気持ちは楽になります。信頼できる人が見つからないときは、カウンセラーに相談するのも一つの方法です。
■楽しいと感じられることを探す
楽しいと感じられそうなことを見つけて実行するのも、虚無感から脱出するのに有効な方法の一つです。趣味活動の時間を増やしたり、散歩や音楽鑑賞などをしたりすることで、虚無感が少し減るかもしれません。
疲れた心を癒そう
心が疲れると、虚無感を覚えやすくなります。虚無感を抱えて生きていくのは辛いものです。
虚しさに支配される前に自分の気持ちと向き合い、周囲に話したり趣味活動をしたりすることで、疲れた心を癒しましょう。
構成/林 泉