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「インプラント推し」「入れ歯しか薦めない」本当に信用できる歯科医はどっち?

2024.12.22

部分入れ歯、ブリッジ、インプラント… それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説! 治療法の選び方から、良い歯医者の見分け方まで、歯科医が丁寧に教えます。

部分入れ歯、ブリッジのメリット、デメリット

 歯を失う2大原因は歯周病と虫歯です。失った歯を人工的に補うために行う治療が補綴(ほてつ)治療で、主に保険が適用される部分入れ歯、ブリッジ、自由診療のインプラントの3つから選択することになります。部分入れ歯は歯を失った部分に人工の歯と歯茎を入れ、両隣の歯にバネで止めて使用します。メリットは何といっても費用面で、保険診療であれば1万円台で安価に作れることです。ただし、保険診療の場合は材料に制約があり、歯や歯茎の部分にプラスチック、バネに金属を使ったものとなります。

 一方、デメリットは両隣の歯や歯茎に負担がかかる点や、噛む力の回復が元の歯の10%程度しか見込めない点です。そして、取り外し式のため、食事ごとに外して手入れをしなければいけない煩わしさも大きなデメリットと言えます。ブリッジは取り外しが不要の固定式で、失った歯の両隣の歯に橋渡しするように人工の歯を被せて使用します。保険診療の場合、1本1万5000円~3万円程度で治療が可能ですが、部分入れ歯同様、材料の制約があります。使用できる材料は金銀パラジウム合金、いわゆる銀歯ですが、審美性の点から前歯から数えて3本目までの歯にはコンポジットレジンという白色のプラスチックを使用できることになっています。

 また、部分入れ歯でデメリットだった噛む力の回復についても、ブリッジは元の歯の70%程度残すことができます。部分入れ歯のデメリットを補うことができるブリッジですが、両隣の歯を削る必要があります。健康な歯を削らなければいけないという点が最大のデメリットです。

歯科医が保険適用外の治療を薦める理由

 インプラントは歯を失った部分の骨に外科手術で人工歯根を埋め込み、新しい歯をつくる治療です。固定式なので部分入れ歯のような取り外しの煩わしさがなく、ご自身の歯とよく似た形態のため、お手入れも非常にラクです。噛む力も元の歯の80~90%まで回復できます。また、周囲の歯と違和感のない見た目になるため、審美性の面でも満足度が高いと言えます。

 しかし、デメリットもあります。外科手術が必要で治療期間も3カ月以上かかるため、患者さんの負担は部分入れ歯、ブリッジとは比べものにならないぐらい大きいです。さらに自由診療のみのため、費用は1本40万円以上かかるのが一般的です。このことから「儲かるからインプラントを勧めているのでは?」と不安に感じる患者さんも少なくないようです。

 確かに自由診療の方が歯科医院の利益は高くなります。実際、最近は入れ歯は扱わない先生もいらっしゃいますが、私は歯科医がインプラントを推す理由は入れ歯、ブリッジを入れたお口の中の「将来」を知っていることが大きいと考えています。歯科では「バイオロジカルコスト」という用語がよく使われます。これは治療の際に自らの体に与えるダメージをコストとしてとらえる考え方です。保険診療の部分入れ歯やブリッジと自由診療のインプラントとでは、治療時のコストは部分入れ歯やブリッジのほうが低いです。しかし、治療後の経過まで考えたバイオロジカルコストでは、部分入れ歯やブリッジの方が明らかに高いのです。

 例えば部分入れ歯、ブリッジのデメリットとして先述した両隣の歯や歯茎への負担がそれに当たります。補綴治療では発音、審美の回復に加えて、残存組織の温存が非常に重要だと考えられていることからも、残っている組織を傷つけることによるバイオロジカルコストは非常に大きなものです。また、部分入れ歯やブリッジの挿入によって、それまで以上に汚れが溜まりやすくなるため、周囲の歯の歯周病や虫歯のリスクが高まることもバイオロジカルコストが高くなる理由です。実際、部分入れ歯の追跡調査の結果、3年以上経つと60%以上が使用しなくなることがわかっています。また、10年使い続けられる入れ歯は50%以下だといわれています。

 こうした観点から10年後、20年後の影響まで考えていることが、多くの歯科医が保健適用外であってもインプラントを勧める理由だと思います。実際、利益追求のためだけにどんな患者さんにもインプラントを勧めているようなクリニックでは、スタッフも定着しないでしょう。

「治療しなくてもいい」という先生は信頼できる?

 冒頭で歯を失った時に提案される治療は部分入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つだとお話ししましたが、実は4つ目があります。それが「治療をしない」という選択肢です。短縮歯列(SDA:Shortened Dental Arch)という概念で、特に第2大臼歯(奥歯)の場合は部分入れ歯やブリッジ、インプラントなどの補綴装置を入れなくても咀嚼などの影響はなく、治療をしないままでも問題ないというケースが報告されています。

 もちろん、お口の中の状況にもよりますし、基本的には補綴装置を入れることをお勧めしますが、特にインプラントと比較した場合、経済的な理由や治療ができない病気などがある場合は選択肢の1つとなります。日本では患者さんに何も治療をせずに帰すという発想があまりないこともあり、この第4の選択肢を示してくれる先生は多くないかもしれません。しかし、治療しない提案をする先生が信頼できないというわけではないことも知っておいてほしいと思います。

いい歯医者のシンプルな判断基準

 私のYouTubeでは「インプラしか勧めてこない」「入れ歯しか勧めてこない」という歯科医を信じてよいのかという質問をいただくことがあります。「儲け主義でない、安心して相談できるいい歯医者さん」をどうやって選ぶか悩んでいる方は多いようです。この判断基準について私の答えはシンプルです。それは「部分入れ歯、ブリッジ、インプラントすべてについて説明してくれること」。どの治療にもメリット、デメリットがあり、自由診療で作れる部分入れ歯やブリッジとの違いまでしっかり説明した上で選択させてくれる先生なら安心だと思います。

 特にインプラントはお手入れがラクなものの歯茎は傷む可能性があるため、インプラント周囲炎という歯周病に相当する病気のリスクが高まります。特に装着から5年経過後の発症率が高く、インプラント治療よりも費用がかかることから、汚れのコントロールやメンテナンスが重要です。このように装着後のリスクなどもしっかり説明を受けた上で、判断していただきたいと思います。

 私個人としては高い技術を持った医療施設で作られたもので、定期的に噛み合わせなどをチェックできるのであれば、保険診療でも十分に満足できる部分入れ歯が手に入ると考えています。また、ブリッジについては健康な歯を削ることに抵抗がないのであれば、選択肢として考えてよいでしょう。

 歯医者さん選びの1つの目安として、日本補綴歯科学会をはじめ、世界で最も大きいインプラントの学術組織であるITI、日本口腔インプラント学会など、インプラントの団体に所属している専門医や認定医から探す方法もあります。但し、インプラントが得意なのに専門医を持っていない先生もいらっしゃるので、必要条件ではありません。

 また、一言で歯科医といっても補綴治療、歯周病など、それぞれに専門があります。専門にこだわりすぎず、失った歯を補った後も歯茎や歯、噛み合わせなどについて幅広く診てもらえる点も重視するとよいでしょう。

文/永田浩司

ながた・こうじ。医療法人社団アスクラピア統括院長。歯科医。日本補綴歯科学会専門医・指導医、ヨーロッパインプラント学会(EAO) 認定医、ITIフェロー。トリプルライセンスを有する唯一の日本人。インプラントを使った日本で数少ない「オールオン4インプラント」治療をはじめ、予防歯科、一般歯科治療、訪問診療まで幅広い治療を行なっている。YouTubeチャンネル「アスクラピア東京」は登録者約5万人。

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