初めまして。私、大愚元勝と申します。
愛知県にある福厳寺で住職を務める傍ら、YouTubeで全国の老若男女のお悩み相談を受けることもしています。驚くことに今や登録者数は約70万人、そして約4500人の方が回答待ち状態にあり、私の元に届く相談の中には恋愛や結婚にまつわる悩みも少なくありません。
「え、お坊さんに恋バナ?」
そう思われる方もいるかもしれません。しかし、仏教に精通するお坊さんは恋愛相談にうってつけの相手なんです。理由は2つ。
①お葬式を通して幸せな最期を迎えた人の人生に触れているから
②仏教を説いたブッダは心の操縦術のマスターだから
つまり「幸せな結婚生活を送ってきた人」がどんな生き方をしてきたのかというサンプルを知り尽くし、さらにはブッダの教えという自分や相手の心を理解するための「最強の攻略本」を持っているのがお坊さんなのです。
ということで、2600年前の仏教の教えをお伝えしながら、現代の人々が抱える恋愛の悩みに処方箋をお届けしていきたいと思います。今回のお悩みはこちら。
悩み:恋人や結婚相手がいる友達と独身の自分を比べて辛い
自分と近い年齢の人が結婚して幸せそうにしていると、つい自分と比べて辛くなってしまう。結婚の有無で人の優劣は生まれないのに、こういった悩みを持つ方は少なくありません。
なぜ、無意味なことを比べてしまうのか。これは、仏教でいう「慢」が出るからです。
恋愛に役立つ仏教用語➀「慢」
他者と自分を比較して優越感や劣等感を感じる煩悩のひとつ。
この「慢」に支配されると、誰かと会った時、相手をこうカテゴライズしてしまいます。
(1)自分より上→「私よりすごい人がいる!」と自分を卑下してしまう
(2)自分より下→相手を見下し、思い上がってしまう
(3)自分と同じくらい→安心できる
この分類を無意識で瞬時に行い、誰かと比べて、勝手に辛くなっているのです。
この「慢」は、自分が思ってるよりも非常に強力に働きます。だから「今、“慢”が出ているかも」と意識して、自分を客観視しないといけません。
しかも、現代には、この無意識の「慢」を強烈に刺激してくる、とても良くないしくみがあります。それは、SNSです。
■SNSが「慢」を激しく刺激する理由
SNSがない頃も、友人と自分を比べて落ち込むことはあったでしょう。でも今は、自分とは全く関係ない人まで含めて「自分と同じような年齢の人が結婚して幸せそうにしている様子」がSNSで流れてきて、比べてしまいます。
結婚や子どもを望んでいる場合、自分の肉体も、自分の心も強烈にその状態を求めているのに、それが叶わない。現代は、周りが結婚していく情報が目に入り、刺激される機会が過去に比べ何倍も多くあります。
この時に「慢」が働き、「お前は駄目だ」と何度も見せつけられているように感じてしまう。これは、自分の握ったナイフでグサグサと、自分の心を自分で傷つけていくような状態です。だから、苦しいのです。
SNSを見ただけなのに、心が追い込まれてしまう。だから今「とても辛い」と感じる人が多いのだと思います。
■理性を持って自分の価値観をリセットしよう
そもそも、あなたはどうして友人と自分を比べてしまい、辛いのでしょうか。それは「結婚していることが、当たり前でしょ?」という、価値観を持っているからですよね。
では、価値というものはどうやって生まれているのでしょうか。
例えば「自分が持ってないけど他人が持っているもの」は、うらやましく感じます。つまり「自分からの物理的、そして時間的な距離」がその価値を決めているんです。
すぐに手に入るものは価値が低いし、自分から遠いもの、自分が得るまでにすごく時間がかかるものは、価値が高まる。だから、自分に自信がなく「結婚は自分には難しく遠い目標」と思っている人ほど、過剰に「結婚」に価値を感じてしまうんです。そして憧れを募らせて、結婚できない自分を「駄目だ駄目だ」と思ってしまう。
その状態から抜け出すためには、マインドリセットをするのがおすすめです。
×自分はダメだから結婚できない
〇いつでも結婚できるけど、今選んでるんです
こういった気持ちを持ちましょう。
仏教には、十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)という考え方があります。これは、恋愛する相手を見極めるためにも非常に役立ちます。十重禁戒に照らし合わせて、人を見てみてください。この基準を守れる人は、なかなか現れないことに気づくでしょう。
だから、「ちゃんと素敵な人に出会ったら、結婚するんだ」と思ってみてください。そんなに結婚に対して焦らなくていいのです。
■「エゴ」を手放す練習をしよう
他人と自分を比べてしまう人の中には「友達の中で自分が一番スペックの高い相手と結婚したい」と思ってしまう人もいるでしょう。
これは、先ほどお伝えした「慢」、そして仏教でいう「我」(エゴ)が出てしまうせいでもあります。
恋愛に役立つ仏教用語②「我(エゴ)」
「この私を最も高い優先順位で、最も高く評価し、最も愛してほしい」と求める感覚。
我慢という言葉は仏教ではあまり良い意味を持ちません。友人と自分を比べて辛い人ほど「我」と「慢」の塊だということです。では、自分の我や慢を手放すにはどうすればいいのか。
実は仏教では、我や慢を手放すために出家するのです。
ブッダは、子どもも奥さんも、次期「王」という社会的ステータスも全て捨てて出家しました。それはなぜか。実は、多くを持てば持つほどがんじがらめになって「不自由」になるからです。
結婚をしたという事実だけを見ればその人が羨ましいかもしれません。でも、恋人がいない、結婚もしていないあなたは、恋人のいる人や、結婚してる人たちよりも、「自由」です。何かに集中する時間があり、自分がやりたいことやなすべきことに100%力を注ぐことができます。
これはもう、結婚している人がどんなに望んでも手に入らないものです。だから、恋人がいない・結婚していない状況の自由さとポテンシャルに気づいてほしいのです。
一番いけないのは、中途半端に生きてしまうことです。仕事は適当、中途半端にマッチングアプリをいじり、いたずらに悩んでお酒を飲んでいるうちに、時間が奪われていくのはもったいなくないですか?
本来、独り身なのは嘆くことじゃない。むしろ、可能性の塊なんですよ。
■自分の運命を変えよう
とはいえ、結婚をしたい方にとって、先が見えないことは不安だと思います。そこでおすすめなのが「2年後に結婚しちゃったとしたら、もう『自由』の猶予は2年しかない」と考えてみることです。
そう考えれば、あなたがやることはひとつです。自分が本当にやりたい、成し遂げたいものに邁進すること。そうすると、自然とモテるようにもなります。
悩んで何もかも中途半端になってしまうなら、一度恋愛や結婚から離れて、本気で何かに取り組んでみてください。仕事でも趣味でも、何でもいいんです。本気でやると、その人の姿に「勢い」が出てきます。つまり、「姿勢」が良くなる。すると、他者からの注目が集まるようになり、魅力が出てくるのです。
(1)心持ちを変える
(2)姿勢が変わる
(3)人格が変わる
この3ステップが実現できると自分の命の運び方が変わり、あなたの「運命」が変わります。
「辛い」と悩むのはもったいないことです。独身のポテンシャルを最大限に生かして、お仕事でも、なんでも、とにかく動いていろんな人と出会って可能性を広げてみてください。チャンスは、ふと思わぬところから舞い降りてくるものですよ。
大愚和尚初となる恋愛攻略本が新発売!
なぜ人は「愚かな恋」に振り回されるのか?その答えは、自分の命の運び方、つまりは「運命の操縦の仕方」を知らないから。叶わぬ片思いへの執着、恋人への依存、失恋への未練、パートナーの裏切りに対する嫉妬と怒り――。2600年前のブッダの教えで、人生を翻弄する愚かの恋の沼から抜け出す方法を説く新感覚の恋愛攻略本がついに誕生!
■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
取材・文/坂本実紀