今までになかった、何かに認められたようなうれしい気持ち
――めでたく合格しました! 面接で印象に残っていることは?
「うちの短大は基本的に、高校を卒業した現役の学生が何かになりたくて来るところです。あなたはもう「何か」になっているのに、なぜうちに来るんですか?」といわれたことです。正直すごく返答に困りました。でも「自分は絵や美術を学ばないまま、何かにはなった。けれど、ここで新たに美術の基礎から学び、違う何かになれるものならなってみたい」と答えました。
12月に合格がわかった時は、本当にうれしかったです。その先の苦労への不安はありましたが、今まで何かに認めてもらえることってなかったので、あなたは合格!っていわれたのは、何か大きなものに認められたような気がしたものです。
――ご家族の反応は? そのころ、更年期の症状は大丈夫だったのですか?
実は少し不安でした。娘や息子の受験の時に、予算の問題など、何の制限もかけなかったわけではないので、自分がこの年齢で短大に進学し、お金を使うことに家族がどう思うか、少し不安だったんです。でも、夫も子どもも「よかったね」「いいじゃんいいじゃん。やりたいことはどんどんやればいいよ」みたいな反応で、ほっとしました。
ただ、画塾と違って、昼間毎日通学することになるので、仕事との両立はできるのか? またそれまでずっと自分は主婦として、昼間は家にいたので、それができないことも不安ではありました。更年期の症状は変わらず、よくはなかったですが、4月から新しい生活に入るので、もう体のことはかまっていられないというか(笑)、忙しさに、気がまぎれている感じでした。
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後編では、短大に入学してからの生活や、通学したことによる心境の変化などを伺います。
取材・文/田中亜紀子 インタビュー撮影/横田紋子(小学館)