■連載/ゴン川野のPC Audio Lab
東京駅八重洲口直結の「ステーションコンファレンス東京」の2フロアを使い11月2日に「秋のヘッドフォン祭2024」が開催された。次回の冬のヘッドフォン祭はminiとなり、2025年2月8日開催予定なので、今回が今年最後のヘッドフォン祭になった。
ポスターにもなった目玉製品はfinalの新ハイエンドモデル「D8000 DC」で4種類のヘッドホンアンプが用意されており、アンプによってもかなり音質が変わったのが印象的だった。ヘッドホンとイヤホン以外にもポータブルCDプレーヤー、FMラジオ、アナログプレーヤーなど多彩な製品が展示されており、ヘッドホンをコアに新たなシステムの可能性が見えてきた。
高性能アンプで実力発揮! final「D8000 DC」
前回のヘッドフォン祭でゲリラ的に登場したのがfinalのハイエンドモデル「DC8000 DC」と「DC8000 DC Pro Edition」である。今回は製品名も入り、4種類のヘッドホンアンプが用意され2モデル合計4台の試聴機が並んだ。試聴できたのはバランスヘッドホン出力を初搭載したESOTERIC「N-05XD」とMSB Technology「Premier Headphone Amplifier」である。MSBはヘッドホン用パワーアンプなので同社のDACと組み合わせて、音量を調整している。
MSBシステムで聴いた「DC8000 DC」は、鮮明で粒立ちがよく広々とした空間が感じられた。宇多田ヒカルのボーカルはわずかにドライで歯切れが良かった。ESOTERIC「N-05XD」ではボーカルに華やかさが加わり、心地よい響きが加わった。音源はQobuzを使用。正直、ヘッドホンアンプでここまで音が変化するとは思わなかった。他のアンプでも聴いたが、この2台が抜群の高音質だった。また「DC8000 DC」のポテンシャルの高さを実感、軽量化されたこともあり、これは手に入れたいと物欲がうずいた。すでに同社のオンラインストアで予約開始中で発送は12月中旬以降を予定。
ヘッドホンアンプのハイエンド、MSBのシステムで試聴。S/Nがよく高解像度の音を聴かせてくれた
ディスクリートDACとヘッドホンアンプ用に高性能バッファーアンプを搭載したESOTERIC「N-05XD」は鮮明で華やかな音だった
「DC8000 DC Pro Edition」はモニター用で顕微鏡的な解像度と色付けのない音を再生する
有線イヤホンにも力の入るfinal
finalは多数の有線イヤホンも出品していた。Aシリーズの新製品「A6000」は12月下旬より順次発送予定。完全新設計のφ6mmのダイナミック型ドライバー「f-Core DU」を採用。これをステンレスマウントフレームに固定して粒立ちがよく鮮明な音を追求している。ハウジングは樹脂性でハードグレイン加工によりザラザラとした表面仕上げになる。剛性を高めると同時に、キズや指紋が付きにくくなるという。ダイナミック型とは思えないほど粒立ちのいい音でボーカルのリップノイズまで鮮明に再現してくれた。
BAドライバーを採用するSシリーズからは、ステンレス筐体の「S4000」と真鍮筐体の「S5000」が登場。フルレンジBAドライバーを水平対向配置することで、2つのドライバーの不要な内部振動をキャンセルしている。また、BAドライバーの前部に空間を設ける「トーンチャンバーシステム」により筐体の素材による響きを引き出すという。確かに硬くて剛性の高いステンレスを使った「S4000」は響きが抑えられシャープな輪郭な音で、真鍮を使った「S5000」はややウォームな音色で柔らかくフワッとした響きが乗る。こちらも12月中旬より発送予定だ。
左の「S5000」は5万4800円、右の「S4000」は4万4800円
DITAから超軽量振動版の「Mecha」
参考展示されたDITAのIEM「Mecha」は超軽量なリチウムマグネシウム合金の振動板をデュアルマグネットで駆動する。ダイナミック型らしい中低域に厚みがある音で、S/Nがよく、音色はニュートラルだった。価格は12万円前後になりそうだ。
さらに興味深いのがセミオープンの「KA-1」である。これに関してはCEOのダニー氏が説明してくれた。ヘッドバンドがありイヤピースはない。フルオープン型のような開放感のある音を追求して、3Dプリンタで試作されている。ケーブル端子は2pinとMMCXの両方に対応、ドングルタイプのBluetoothアダプタも使え、オプションでインイヤーとオンイヤーにもできるという。ヘッドバンドは折りたたみ式で、価格は15万円ぐらいになりそうだ。これは面白そうなので製品化が楽しみである。
金属製のハウジングに収められたDITA「Mecha」。端子は交換式でφ3.5mm、φ4.4mmに加えUSB-C接続にも対応
「KA-1」はセミオープン型の新発想イヤホン。あらゆる使い方ができる
MMCX端子と2pin端子の両方を装備してシュア掛けにも対応
FIIOから多くの新製品が登場!
FIIOの気になる平面磁界型のヘッドホンが「FT-1 Pro」である。独自開発された厚さ1μmの特殊フィルムを使ったドライバーを搭載して、インピーダンスは20Ωを実現。中低域はややあっさりした味付けだが、平面型らしい分離のいい音を聴かせてくれた。価格と発売時期は未定。
突如現れた平面型の「FT-1 Pro」は374gと軽量設計だ
「K17」はデスクトップDAC/アンプで、DACにAKM「AK4499EX」をデュアルで、「AK4191EQ」をシングルで搭載。ややドンシャリでスッキリした音だった
「S15」はデスクトップハイレゾ対応ストリーマー。「Qualcomm 660 SoC」を搭載して多彩なアナログ、デジタルの入出力に対応、ストリーミング対応だけでなく、HDDやSSDを内蔵できる。フラットバランスで透明感のある音を聴かせてくれた
「TT13」はアルミ合金製パネルのフルオートアナログプレーヤー。Bluetooth機能搭載で、アクティブスピーカーを駆動できる高出力ラインアウトも搭載している
「RR11」はポータブルFMラジオでアルミ合金製のボディを採用。音質は思ったよりクリアでノイズも少なかった
「DM13」はCDジャケットサイズのCDプレーヤー。ヘッドフォン端子付きでφ4.4mmバランス接続にも対応する。光、同軸、USBのデジタル出力を搭載。Bluetooth機能とCDのリッピング機能があり、バッテリー内蔵で連続再生は約8時間。価格は2万円台を想定している
音飛びをガードするESP搭載、CD-Rに記録したFLAC、WAV、WMA、AAC、MP3も再生できる
「JM21」は海外予価が税別約200ドルとハイコスパながら、シーラスロジック製のDACとオペアンプをデュアルで搭載して、φ4.4mmバランス接続に対応する。厚さ13mm、156gで、連続再生時間は最大12時間、BluetoothのコーデックはaptX HD、LHDC、LDACにも対応、日本価格は3万円台になりそうだ