小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

83歳おばあちゃんの推しはJリーガー!推し活によって高齢者の幸福度は上がるのか?

2024.12.20

人生100年時代、できるだけ長生きしたいものだが、現役が終わった70~80代以降の生き方を、今から考えておいて損はない。昨今では「健康寿命」だけでなく「幸福寿命」という言葉も使われるようになってきたが、この言葉のとおり、最も大切なのは、いくつになっても「自分が何に幸せを感じるか?」をよく知っておくこと。

今回は、その一つのヒントとなる事例を紹介したい。とある高齢者総合福祉施設で暮らす83歳のおばあちゃんが、Jリーグ選手の推し活を行い、神戸から鹿児島まで遠征応援までしてしまうほどのめりこみ、イキイキとハッピーに過ごしているのだ。

推し活は高齢者の幸福度を向上させる?

サントリーウエルネス株式会社の生命科学研究所が行った研究結果によると、高齢者施設の利用者の幸福度が「推し活」とともに段階的に進展することがわかった。

本研究は、同研究所が京都大学 人と社会の未来研究院と、大阪公立大学 大学院情報学研究科 基幹情報学専攻と共同で実施したもの。同社が推進している活動「Be supporters!(ビーサポーターズ)(以下、Beサポ!)に参加する、要介護状態にある高齢者施設の利用者を対象に、「応援活動」いわゆる「推し活」と幸福度の関係性を明らかにする研究だ。

研究成果は、2024年11月に開催された「第43回日本認知症学会学術集会」で発表された。

Beサポ!の活動が始まったのは2020年12月のこと。すでに全国約230施設・延べ約1万人(2024年8月時点)に参加者が広がっているという。

Beサポ!のコンセプトは、「いくつになってもワクワクしたい、すべての人へ」。高齢者施設の利用者や認知症の人などは、普段は周囲に支えられる場面が多いが、地元のJリーグのクラブを応援することで、支える存在になることを目指す活動だ。

その活動において、施設職員から嬉しい報告が数多く寄せられた。

「脚が不自由で歩行器を使っている利用者が、好きな選手の写真を見るために、自力で一歩踏み出した」
「腕が不自由でリハビリに積極的ではない利用者が、応援しているときは腕を挙げて手を叩く」
「部屋に閉じこもりがちだった利用者が、他の方と一緒に応援することで笑顔が増えた」

これらの変化を受け、同研究所は利用者に起きた事象と感情・行動を構造化し、「応援活動」と幸福度の関係性を明らかにした。

主な結果として、「推し活」と「生きがい」の連動が確認された。

また「選手にサインを求めるようになる」「ブラジル人選手を応援するためにポルトガル語の勉強を始める」「地域の住民やサポーターに声をかけられるようになる」などの事象から、いわゆる「つながりの力」である「社会関係資本」と、自己実現に向けた人間の欲求を理論化した「段階的欲求」が進展していることが示唆された。

「人生100年時代の物語大賞」が発表に

同社はBeサポ!の活動と魅力を広く伝えようと、「人生100年時代の物語大賞」を実施し、Beサポ!を通じて生まれた高齢者のエピソードを取り上げ、表彰する機会を設けている。今年は2024年12月11日に開催された。

大賞を受賞したのは、兵庫県神戸市の高齢者総合福祉施設「オリンピア兵庫」で暮らす83歳の松本照子氏(以下、テルコさん)のストーリーだ。

●大好きなのりくんに会えた! テルコさんの推し活遠征ストーリー

藤本選手とのツーショット撮影が実現して喜ぶテルコさん
(画像提供:鹿児島ユナイテッドFC)

2024年9月、テルコさんは、推しである鹿児島ユナイテッドFCの「のりくん」こと藤本憲明選手の応援のため、神戸から鹿児島まで約850kmを移動し、リアルのスタジアム観戦を行った。

テルコさんは、藤本選手がヴィッセル神戸に在籍していたときにファンとなり、鹿児島に移籍してからも応援を続けている根っからのファン。

もともとテルコさんは周りの人との交流をあまり好まないタイプで、認知症を患い気分が沈むこともあったという。しかし、サッカーの応援を通じて周りとの交流も増え、笑顔が増えた。藤本選手の話をすると表情がパッと明るく笑顔になり、「大好きやねん」と嬉しそうに話すほど。

藤本選手の誕生日祝いをするテルコさん
(画像提供:高齢者総合福祉施設 オリンピア兵庫)

「入居したての頃は、みなさん、感情をうまくコントロールできない方もいらっしゃいますが、テルコさんもそのような状態でした。けれど、Beサポ!の活動を通じて利用者さんたちの輪に入っていき、笑顔が増えたと感じています。他の方の手をとって一緒に声援を送るなど、テルコさんの優しい一面がどんどん出てきています」(施設スタッフ 稲田さん)

そんな中、テルコさんは遠くに移籍した大好きな選手に会いに行くという目標が毎日の希望となっていった。そしてついにテルコさんの熱い想いが通じ、施設や家族、サポーターが支援し、遠征の夢が実現した。

藤本選手からのビデオメッセージを見たテルコさん。最後は嬉しさのあまり涙する場面も。
(画像提供:高齢者総合福祉施設 オリンピア兵庫)

藤本選手とはSNS上で交流もしている。

鹿児島ユナイテッドFCの藤本選手の背番号が入ったユニフォームを着るテルコさん
(画像提供:高齢者総合福祉施設 オリンピア兵庫)

大賞としてテルコさんのストーリーが受賞した後、同社 代表取締役社長の沖中直人氏は「藤本選手がテルコさんとの間で、パワーのやり取りをしているとおっしゃっていましたが、まさにこのBeサポ!の活動を通じてテルコさんから藤本選手にパワーを、そして介護施設の皆さんにもテルコさんがパワーを送り、送り返されることによって、関係性の質が良くなっていくということを実証していただけたかなと思っています」と感想を語った。

大賞を応募した施設職員とサントリーウエルネス(株)代表取締役社長 沖中直人氏

いくつになっても、推しに夢中になるようなワクワクとドキドキは、人を元気にし、また人との関係も良くしてくれるようだ。推しに限らず、夢中になって熱くなれる何かを、常に見つけることが、今の私たちが覚えておくべきことかもしれない。

取材・文/石原亜香利

なぜ人は推したがるのか?人が推し活で見出す3つの幸せ

数ある動物の中でも「推す」という行動を取るのは人間だけ。人はなぜ、何かを推したがるのだろうか。愛知淑徳大学・久保南海子先生に、心理学の観点から見た「推し活」につ...

40代以上の4人に1人が「推し」がいることが明らかに

ビデオリサーチ内の生活者に関するシンクタンク「ひと研究所」は、全国男女15~69歳を対象に、「推し活に関するアンケート調査」を実施。その調査結果から、世代ごとの...

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年12月16日(月) 発売

DIME最新号は、「大谷翔平研究!」。今年を象徴するDIMEトレンド大賞の発表や、Aぇ!group、こっちのけんと他豪華インタビューも満載!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。