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VTuberグループ「すぺしゃりて」はグリーの主力事業になるか?

2024.12.20

グリーの業績をけん引する存在として注目されるメタバース事業が、2025年6月期第1四半期において堅調なスタートを切りました。

売上高は前年比で横ばいだったものの、営業利益は24%の増益。今期通期の営業利益は5億円を計画していますが、進捗率は29%に達しました。

「すぺしゃりて」などのVTuberへの投資を加速しています。

VTuber事業は7割の増収

グリーはメタバース事業において大きく2つのサービスを展開しています。3Dアバターを使ってライブ配信ができるREALITYのプラットフォーム事業とVTuber事業。

プラットフォーム事業は2025年6月期第1四半期が9%の増収。12%の営業減益でした。

■プラットフォーム事業業績推移

グリーは2023年1月にYouTuberのラファエルが顧問を務めるライバー事務所ONECARATと、REALITYにおける提携関係を結んでいます。

ONECARATは17LIVEやPocochaなどとも提携していましたが、バーチャルプラットフォームへの参入は今回が初めて。REALITYはユーザーの裾野を広げることにより、安定的な成長と収益性を確保しています。

足元では大型アップデートに向けた開発を進めており、1割の営業減益となりました。

VTuber事業の売上高は7割もの増収となり、第1四半期の売上高は1.4億円。ただし、この事業は投資先行で利益は出ていません。

■VTuber事業業績推移

グリーはメタバース事業継続成長事業の一つに位置づけています。かつてはゲーム・アニメ事業が業績をけん引していましたが、当たり外れのブレが大きく、安定的に成長させるのは簡単ではありません。そこで、メタバースに期待をかけたのです。

その中でもVTuber事業は中長期的な成長の核とも言える存在でしょう。

本阿弥あずさがスター候補の一人に成長

ゲーム配信主体のVTuber事務所「すぺしゃりて」の1期生がデビューしたのは2023年11月。グリーのVTuber事業は本格的に活動を開始してから1年ほどしかたっていません。

2024年1月、1期生にメンバー3名が追加。その中の本阿弥あずさは、10月に「すぺしゃりて」で初のチャンネル登録者数が10万を突破しました。

9月には英語圏でFPSゲームを主体として活動する5人組グループ「EVE.EXE」がデビュー。本格的な世界進出への布石を打っています。

「すぺしゃりて」はゲームを主体としたVTuber事務所ですが、ダンスや歌など個人の好きなものにスポットを当てた「Vebop Project」もグリーの傘下にあり、2024年9月に新規タレントオーディションを開催しました。この事務所からはVTuberユニットである迷電ワークスなどがすでにデビューしています。

グリーのVTuber事業は四半期単体で2億円前後の赤字を出しています。VTuberの発掘からデビュー、ユニットの立ち上げまでの展開が早く、それだけ投資を加速して成長に期待をかけているということでしょう。背景には、激変するVTuber業界でできるだけ早く一定の知名度を獲得したいという思いがあるはず。

この業界は「ホロライブ」と「にじさんじ」の2強のシェアが高く、ゲーム特化型には「ぶいすぽっ!」という競合がすでに存在します。

さらに最近ではYouTuberマネジメントのUUUMやコロコロコミック、大丸松坂屋百貨店までもが新規参入を発表しました。

「ホロライブ」と「にじさんじ」はVTuberファンの開拓と同時に成長。業界の発展に寄与しましたが、VTuberは活動領域がゲームや音楽などに限定されてしまうため、ファンの裾野をどこまでも拡大できるわけではありません。

コロコロコミックは小学生などの子供のファンを開拓するという意味において画期的と言えます。しかし、「すぺしゃりて」と「ぶいすぽっ!」のように競合がいる領域は、シェアの奪い合いという側面が強くなります。

グリーは、2027年6月期のメタバース事業の売上目標を前期実績の2.5倍となる179億円に設定しています。急成長のカギを握るのはVTuber事業であり、今期から来期にかけてが一つの山場となるでしょう。本阿弥あずさのようなスター候補を継続的に育てる必要があります。

成功例の少ないメタバース領域に果敢にチャレンジ

グリーがメタバース事業の成長を急いでいるのは、主力だったゲーム・アニメ事業が弱含んでいることも背景にあります。

2025年6月期第1四半期の同事業は2割の減収、5割の営業減益となりました。ゲーム事業単体では0.7億円の営業損失。人気タイトルの「ヘブンバーンズレッド」の中国展開を開始するなど世界進出を進めているものの、一部運用タイトルが不調。第1四半期は新規タイトルのリリースもなく、軟調でのスタートとなりました。

今期は新タイトルである「魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra」のリリースを控えています。人気IPを活用したゲームですが、モバイルゲームは必ずしもヒットするとは限らず、見通しを立てづらいという弱点も抱えています。

一方、VTuber事業は配信による収益やグッズ、イベントの実施など収益基盤を整備しやすく、計画を立てやすいという特徴があります。

グリーは法人向けの仮想空間サービス「REALITY Worlds」をすでに提供しており、イベントも実施していました。ブロックチェーンゲーム「クリプトキャッチ! 釣り★スタ」も2024年6月に配信を開始しています。

バーチャル配信サービスREALITYとVTuber、仮想空間サービス、ブロックチェーンゲームは相性がよく、メタバース空間を盛り上げるのに必要な要素。新たなエンタメ空間の創出に成功できるのか、力の見せ所だと言えます。

©すぺしゃりて

文/不破聡

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