少子化で子供の人口が減少する中、先行きに不安のあった玩具業界だが、業績は逆に右肩上がり。昨年度の市場規模は初の1兆円を突破した。この好況に大きく貢献したのが「キダルト」層の存在だ。
キダルト
キダルト(Kidult)とは、「いつまでも子供の心を持った大人」を意味する、子供(kids)と大人(adult)を掛け合わせた造語で、ファッション界発祥の言葉と言われる。今年の「日本おもちゃ大賞」では、「ハイターゲット・トイ部門」が「キダルト部門」に名称を変更。業界をあげて、キダルト現象を盛り上げた。
同部門で大賞に輝いたタカラトミーの『フォトジェニックリカ』シリーズは、子供だけではなく、キダルト層にも支持される商品だ。
「コロナ禍をきっかけに、大人がリカちゃんの着せ替え用の洋服を手作りしたり、その写真をSNSにアップしたりする〝リカ活〟がブームになりました。今だからこそできる楽しみ方が増えたことも大人を捉えたと考えています」(タカラトミー 広報課・柳寺薫乃さん)
人気ぶりは販売店にも波及した。おもちゃ販売チェーンの「トイザらス」では、昨年10月から全国30あまりの店舗に、キダルトコーナーを展開している。
「都心の店舗では、会社帰りのOLやカップルなどこれまでとは少し異なる客層の来店が増加しました」(日本トイザらス・広報担当者)
トレンド化の背景に、「キダルト層の年代の広がり」を挙げるのが、流通アナリストの渡辺広明さんだ。
「今までは自分のためにおもちゃを買う大人がこの市場を支えていました。最近は、もう自分では遊んだり集めたりはしないけれど、自分の気に入ったおもちゃを代わりに子供や孫に与えたいという〝キダルト買い〟の高まりも好調な販売につながったと思います。キダルトも上はシニア世代まで広がっています。少子化でも買い手は減らず当面は安泰かと思います」(渡辺さん)
キダルト買いはファッションやお菓子などにも広がると渡辺さんは予測。来年はキダルトがターゲットの商品が次々にバズりそうだ。
【DIMEの読み】
オタク第1世代が還暦を超えた今、おもちゃ好きのシニアは確実に増えていくだろう。子供心を持ったシニアが、子や孫に買ってあげたくなるような商品からヒットが生まれていきそうだ。
日本おもちゃ大賞にも「キダルト部門」が登場
タカラトミー『フォトジェニックリカ』各5500円
関節が動く可動式の「ネオリカボディ」を採用。自然で表情豊かな様々なポージングが可能となり、SNS映えする写真も簡単に撮れる。デイジー、アイリス、ダリアがある。
BANDAI SPIRITS『超合金ルービックキューブ』9900円
『ルービックキューブ』らしく一部を回転させることでロックが解除されロボットに変形。胸部パネルからロケットパンチが発射できる。
© 2024. TM & © Spin Master Toys UK Limited, used under license.
少子化により、この10年間で15歳未満の人口は約12%も減少。キダルトの後押しもあり玩具業界の市場規模は拡大を遂げた。
「トイザらス」には専用コーナーも!
「トイザらス・ベビーザらス つくば店」のキダルトコーナー。夕方以降も、キダルトコーナーだけ賑わう状況がしばしば見られるという。
取材・文/安藤政弘
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