DIME MAGAZINE
古い付き合いの編集者の方に『愚恋に説法』という本を紹介して頂きました。
この本はお坊さんである大愚元勝さんが書かれた恋愛指南本。お坊さんが煩悩の塊である恋愛指南なんてして良いのかと不安になりますが、読んでみるとそのギャップがなかなかに面白い。マッチングアプリでも不倫でも、どんな質問もいつの間にか仏教の話になっていて、仏教の幅広さと大愚氏の筆の巧さが光ります。
さて、本書は読者からの質問に答えるQ&A式になっているのですが、私もお悩み相談をよく受ける身として本書にあったご質問に回答をしてみました。
【ご質問】不倫相手がパートナーより自分を優先してくれているのは愛されている証拠ですよね？
【回答】
ご質問誠に有難うございます。
例えばこんな状況を考えてみましょう。
あなたが大親友のAさんと街を歩いていると、偶然重たい荷物を運ぼうとして困っているおじいさんを見かけました。心優しきあなたはおじいさんに手を貸してあげると、おじいさんはお礼を言いつつこんなことを言うのです。
「向こうにいるのは君の友達だろう？それなのに私を優先して助けてくれるなんて、君が友人より私のことを愛してくれている証拠だよね？」
「何を言ってるんだこのクソジジイ」と罵詈雑言を浴びせたくもなるものでしょう。確かに意図的に切り取ってみれば、その友人よりもおじいさんを優先したと言えなくもありませんが、それは「おじいさんは困っていた」が「友人は困っていなかった」という前提条件が抜け落ちています。
物事を比較する時は前提条件を揃えなくてはなりません。小学校の理科の授業でも「何かを調べる時は、それ以外の全ての条件を揃えなくてはいけない」と習いますが、まさにそれで御座います。
それでは今回のご質問はどうでしょうか？
不倫相手であるご質問者様が何をもって「優先された」と思ったのかは分かりませんが、パートナーと不倫相手では前提条件が全く異なります。
もしかしたらパートナーは友人と旅行に行っていて家を空けていたのかもしれませんし、そもそもあまりイチャイチャしたがらない性格の方の可能性だってあるでしょう。
いずれにしても前提条件が揃っていない以上、これだけで愛されている証拠とは言えません。
だいたい優先されているだけで愛されているのであれば、うざい上司も、うざい取引先も愛されていることになってしまいます。もちろん上司も取引先も嫌いですが、立場があるから仕方なく優先しているに過ぎないことは、ご質問者様にもお分かり頂けることでしょう。優先されることは愛されていることの証拠には全くもってなり得ません。
とはいえ、そもそも「証拠ですよね？」なんていう聞き方をされている時点で、ご質問者様も愛されていないことを薄々お察しのことでしょう。その予想はおそらく当たっており、そう遠くない未来、用済みになったご質問者様はポイ捨てされることと思います。
それでもいいと仰るなら私から言うことは御座いません。
しかし違う未来を望むのであれば「信じたい」という気持ちを抑えて、理性で判断をする必要があるでしょう。
巷ではやれ「自分の気持ちを信じろ」とか「本当の気持ちを大切にしろ」というように「気持ち信仰」がはびこっておりますが、自分の気持ちの思うがままに行動するのは獣がすることで御座います。
と私なりの回答をしたところで、『愚恋に説法』の大愚氏の回答を見てみましょう。
教説「邪淫の十罪」にも不倫の末路について相当きついことが書かれています。
（1）「夫（妻）から命を狙われます」
十罪なのに、1つ目からいきなり命を狙われた。まだあと9個あるのにいきなりこの調子で大丈夫なのでしょうか。初手で即死系の全体魔法を撃ってくるボス敵じゃん。
とこのように全ての質問に仏教を絡めるその文章は知的読み物としても面白く、仏教に興味を持つための一冊としてもお勧めです。
大愚和尚初となる恋愛攻略本
愚恋に説法 恋の病に効く30の処方箋
なぜ人は「愚かな恋」に振り回されるのか？その答えは、自分の命の運び方、つまりは「運命の操縦の仕方」を知らないから。叶わぬ片思いへの執着、恋人への依存、失恋への未練、パートナーの裏切りに対する嫉妬と怒り――。2600年前のブッダの教えで、人生を翻弄する愚かの恋の沼から抜け出す方法を説く新感覚の恋愛攻略本がついに誕生！
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者＝何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
文／ラブホの上野さん
漫画・ドラマ『ラブホの上野さん』原作。恋愛コラムライター。都内某所のラブホテルスタッフ。自分のホテルの売り上げを増やすためにラブホテルへの誘い方をツイッターで伝授していたところ、そのテクニックが話題になり漫画原作やコラムの執筆をすることになる。
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