大型化、高級化、SUVモデルと電気自動車のトレンドが変わりつつある中、コンパクトサイズのEVが続々と登場している。今回は、今年デビューした注目の最新モデルを比較試乗した。
コンパクトEVに再び注目!
日産自動車が100%電気で駆動する『リーフ』を世界で初めて販売した頃「EVは電池容量と重量のバランスを考えると、コンパクトカーやシティコミューターが一番適している」と言われていた。しかし、テスラが大型の高級EVを開発、販売したことで流れが変わりはじめ、自動車メーカー各社が高級モデルを手がけるようになった。その後、床下に電池を搭載するのに都合のいいSUVがEVの主流になっていく。こうした動きも一段落し、EVが登場した初期の頃、主役と言われていたコンパクトEVが再び注目を集めるようになってきた。
フィアット『600e』(セイチェント・イー)は、名車『500』『600』のスタイリングからインスピレーションを得たイタリアンデザインの5ドアモデル。フィアットブランドとして初めてレーンポジションアシスト、シートマッサージ、ハンズフリーパワーリフトゲート、キーレスエントリーの4項目の便利機能を採用した最新モデル。54.06kWhのバッテリーは車体前部に搭載されたモーターが前輪を駆動し、一充電走行距離はWLTCモードで493kmを実現している。
一方の『ミニ』は4代目から『ミニ クーパー』が正式名称になり、EVはガソリンエンジン車とは異なる、空気抵抗を低減する3ドアのボディーを纏った専用モデルだ。モーターは1モーターで前輪を駆動するFF仕様で、総電力量は54.2kWhとなっている。また、一充電走行距離はWLTCモードで446kmとなっている。
両車とも、充電方式は200Vの普通充電とCHAdeMOの急速充電に対応している。さらに『ミニ クーパー』 は車両に蓄えられた電力を外部に給電できる機能を備えているのが特徴だ。
この2台を比較すると、それぞれ個性がはっきりしており明確な違いを体感できる。『600e』はクセのないファミリー仕様のEV。室内空間は広く、大人4人が乗っても快適に走る。ハンドリングも軽く、ゆったりした走りが特徴で初心者にもおすすめできるモデル。一方の『ミニ クーパー』はEVになっても「ゴーカートフィーリング」のコンセプトが継承されている。キビキビとした走りはスポーツティーで遊び心もたっぷり。趣味で乗りたくなる2+2のコンパクトEVだ。
親近感のある表情が印象的なイタリアンEV
フィアット『600e』
Specification
■全長×全幅×全高:4200×1780×1595mm
■ホイールベース:2560mm
■車両重量:1580kg
■総電力量:54.06kWh
■モーター形式:交流同期
■最高出力:156PS/4070~7500rpm
■最大トルク:270Nm/500~4060rpm
■変速機:電気式無段
■一充電走行距離:493km(WLTCモード)
■車両本体価格:585万円
ドライビングライトを点灯した顔は『500e』よりチコちゃん似という印象。全幅は1780mm、全高は1595mmなので、SUVでも通用する全高だが全体的なデザインはフィアット系のコンパクトカーに近い。
ホイールベースは2560mmで、これは『ミニ クーパー』より35mm長く、全長は340mmも『600e』のほうが長い。最低地上高も199mm確保されている。この仕様で4WDのEVが発売されたら面白くなりそう。
ボディーに対してウインドウの面積が小さいデザインなので、リアゲートのウインドウも小さく腰高に見える。実際にリアゲートの開口部も路面から約770mmもある。ゲートは電動で開閉する。
EVでもとことん走りを楽しめるジャストサイズ
MINI『ミニ クーパー SE』
Specification
■全長×全幅×全高:3860×1755×1460mm
■ホイールベース:2525mm
■車両重量:1640kg
■総電力量:54.2kWh
■モーター形式:交流同期
■最高出力:218PS/7000rpm
■最大トルク:330Nm/1000〜4500rpm
■変速機:電気式無段
■燃費:446km(WLTCモード)
■車両本体価格:531万円
※オールエレクトリック
BMWが開発を担当した2002年以降の『ミニ』はヘッドライトのデザインにこだわってきた。4代目はリング状の中に上下2本のLEDライトを配している。フィアットより大きく見えるがひと回り小さい。
EVの場合、空気抵抗も電費向上の障害になるため、ドアハンドルはフラッシュサーフェスにし、ルーフのロッドアンテナをやめて、フィンアンテナを独自に採用することで空気抵抗の軽減を図っている。
全高は『600e』より135mm低いので幅広いデザインが強調されて見える。左右のテールランプの形状も『ミニ』の特徴だが『ミニ クーパー』になって新しいデザインを採り入れている。