ロングドライブでも乗り心地やノイズによるストレスは最小限
すでにこの@DIMEではマイナーチェンジ後のe:HEV Z PLaYパッケージのFFモデルの試乗記をお届けし、走行中の静かさが高まり、18インチタイヤ装着車にして、以前あったリヤからの突き上げ感は薄まり、全体的にクラスアップしたような、フラットで快適な乗り味になっていることを確認、報告しているが、「足回りの変更なし」と説明される4WDモデルの16インチタイヤ装着車の熟成ぶりを、東京~南房総鴨川までのロングドライブで確かめることにした。もちろん、藤井風の「きらり」とともに。
それにしても、標準型のヴェゼルはクリーンかつコンパクトなSUVにして上級感あるスタイリングが特徴だが、このHuNTパッケージになると印象は大きく変わる。ルーフレールの装備やボディ下部のカッパー・メタリック塗装バンパーロアーガーニッシュのアクセント、専用アルミホイールによって、標準型ヴェゼルではまったく感じられない!? 土のにおいがする、アウトドアにより似合う、SUVテイストを強めたエクステリアデザインに変貌しているのだ。それでもワイルドさは控え目だが・・・。
e:HEV X HuNTパッケージの4WDを走らせれば、まずはEVモードでの出足の重厚なスムーズさ、そして高まった車内の静かさを確認できる。16インチタイヤを履く乗り味はクラス上のSUVを思わせる、骨太感あるしっかり感あるタッチで、パワーステアリング、ペダル類の適度な重さはまるでちょっと前のドイツ車のようでもある。荒れた路面ではゴツゴツ感があるものの、段差などを超えても硬めながら角の取れたマイルドさある乗り心地を示し、ショックを一発で収束させる(ここが乗り心地の快適度に貢献する)ボディの剛性感、足回りの熟成されたチューニングを実感させられることになる。
そして、マイナーチェンジで行われたバッテリーの使用領域の拡大によって、EV走行をさらに粘り強く行ってくれるとともに、EV走行モードからエンジンが始動するHVモードへの移行も実にシームレス。合わせてすでに説明したフロアの各遮音材と防音材の厚み、配置を最適化によって車内に侵入するエンジンノイズが抑えられ、ロードノイズも低減している印象だ。つまり、EV走行をする範囲が増え、より静かに走ることができるのが、マイナーチェンジ後のヴェゼルということになる。このあたりはマイナーチェンジ前のユーザーが悔しがるであろう改良、進化と言えそうだ。
ゆえに、ロングドライブでもドライバー、乗員の乗り心地やノイズによるストレスは最小限。実際、東京~鴨川往復のドライブも、渋滞追従機能付きACC、トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能)、車線維持支援システム(LKAS)の機能にも助けられ、疲れ知らずだった。これでブラインドスポットインフォメーションがあれば完璧だが(Zグレードに装備)、そのあたりは予算との相談だろう。
活発な走りを楽しみたいユーザーにも朗報がある。ドライブモードのSPORTモードを選択すれば、マイナーチェンジを受けたヴェゼルはアクセルレスポンスがより高まり、アクセルペダルを深々と踏めば、無段変速のCVTにして有段式ATのようなシフトアップ感ある気持ちいい加速を味わうことさえできるのだ。さらに日常走行域でもよりトルキーに感じられる制御を加えたことで、動力性能の”余裕感”と走りやすさも向上。言い換えれば、意のままの加速が味わえるようになったということだ。
もちろん、ホンダ車、ヴェゼルの持ち味である操縦性の良さも、依然、健在だ。たとえば山道走行でもスイスイと曲がり走れる軽快感と、路面に吸い付くような安定感のバランスが見事。パドルシフトを操作すればスムーズな減速、再加速も自在である。
そんなマイナーチェンジを受けたヴェゼルのe:HEV X HuNTパッケージは、都会派の標準型にないアウトドアシーン、大自然に似合うエクステリア、インテリアデザイン(とくにシート地)もあって、楽しみの幅をさらに広げてくれるコンパクトSUVに進化したと言っていい。購入時には、ユーザーそれぞれの使い勝手を念頭に、乗り心地が改善され、軽快に走るFFと、悪路や雪道により強い4WDの乗り味の比較をぜひ行ってほしい。いずれにしても、e:HEV Zの4WDも選べるようになったPLaYパッケージの追加など、幅広い選択が可能になっているのがマイナーチェンジを受けた新型ヴェゼルだ。なお、東京~南房総鴨川の往復、高速道路60%、一般道40%走行(2名乗車+荷物)の実燃費は21.1km/Lと、WLTCモード燃費の21.5km/Lに迫るもので、ハイブリッドながら、4WDのSUVとしてはかなりの燃費性能を示してくれたことも報告しておきたい。
そうそう、ラゲッジルームは2~4名のドライブ旅行の荷物であれば十分なスペースが確保されている。また、ドアがフルドアになっていて(サイドシルをカバーするタイプ)、雨の日の道、雪道を走ってもサイドシルが汚れにくく、乗降時にパンツやスカートを汚さない本格SUVと同じ仕立てになっていることも注目ポイントだ。SUVでも車重増を嫌い、フルドアを採用していないクルマもある。
最後に価格だが、e:HEV X HuNTパッケージのFFと4WDの価格差は22万円。4WDは駆動方式の違いだけでなく、寒い時期に嬉しい運転席&助手席シートヒーター、PTCヒーター(自己温度制御システム)、親水/ヒーテッドドアミラー+熱線入りフロントウインドウの装備が加わることも考慮したい。
文・写真/青山尚暉