企業向けのファイナンシャル インフラを構築するStripe は、大型言語モデル (LLM) を用いた AI エージェントと金融サービスを繋ぐ「Stripe エージェント ツールキット」 の提供を開始する。
これにより各企業はLLM で決済や資金の獲得、請求処理などのアクションを呼び出し、AI によるエージェント ワークフローに決済プロセスを盛り込むことが可能になる。
LLM エージェントワークフローに決済を追加
AI エージェントは、大型言語モデル (LLM) を用いて、設定された目標を達成するために関連するシステムと対話しながら、データを収集して最適な行動を選ぶソフトウェアプログラムだ。達成すべき目標は人間が定めるが、実行に必要な行動は AI エージェントが独自に決定する。
フレームワークでプロンプトと機能呼び出しを組み合わせることで、エージェントを構築。LLM と関数呼び出し (Function Calling) を組み合わせて、複雑なタスクを完了するために協働するプロセスがエージェント型ワークフローとなる。
「Stripe エージェントツールキット」 は、Stripe の Node.js および Python SDK を基盤として構築されており、AI エージェントに Stripe API へのアクセスを提供して、関数呼び出しをサポートする LLM プロバイダーと連携する。
このフレームワークを使用すると、マルチエージェント型ワークフローの構築が容易になり、各タスクを分割し、それぞれのタスクを各専門エージェントに割り当てることで効率的な作業分担を実現できる。
「ツール」は、LLM プロバイダがエージェントフレームワークに実行を 「依頼 」できるスニペットで、各エージェントに提供される。
例えば、「11月1日 のニューヨークからサンフランシスコに飛ぶ航空券を500ドル以内で予約したい」場合、LLMと関数呼び出しを活用することで、(1)「出発地」や、「目的地」、「出発時間日」や「予算費用」という複数の要素に分解して、(2)その条件にあったフライトを検索、(3)検索結果と選択肢を提示、(4)予約用のURLを特定、(5)航空券を購入、というそれぞれの手順に対応するエージェントのセットを組み立ててこの要求に応えることができる。
「Stripe エージェントツールキット」 は、このようなワークフローを簡素化するため、VercelのAI SDK、LangChain、CrewAIをネイティブサポートしている。
■従量課金で使用料に応じて課金
「Stripe エージェント ツールキット」を活用して、従量課金を実践することもできる。従量課金とは、顧客が特定の製品やサービスを使用した量に基づいて請求される価格戦略で、最終的な請求額は、顧客が使用した製品やサービスの量に直接比例する。
この課金方法は、顧客に透明性のある価格体系を提供する一方で、企業の収益の安定性を促進することで、価格設定にバランスの取れたアプローチを提供することが可能だ。
様々な事業分野で従量課金が用いられつつあるが、特に SaaS (ソフトウェア・アズ・ア・サービス) 分野においては、顕著な増加傾向が見られている。
エージェントのワークフローには、通常トークンの使用量や時間で測定される物質的なコストがかかる。従量課金では、顧客の製品の使用量に基づいて課金できる。
「Stripe エージェント ツールキット」を利用すると、プロンプトと完了のトークン数を簡単に追跡して、その顧客に対して請求を行なうことができる。
■Stripe API へのアクセスと金融サービスの利用が可能に
さらに、Stripe エージェントツールキットを使用して決済サービスを統合すれば、組込型金融を利用して一連の資金フローを自動化することができる。
法人向けクレジットカードが作成できるバンキング (BaaS) API Stripe Issuing (※)を利用すると、AI エージェントが事業支出の際に使用できる使い切りのバーチャルカードを生成し、購入することが可能になる。
※ Stripe Issuing は日本では現在未展開
さらに、ユーザーの購入意図と承認行動が一致するよう、プログラムで承認を許可または拒否することができる。また、支出管理機能を利用して、予算を設定したり、AI エージェントによる支出を制限したりすることも可能だ。
ストライプジャパン株式会社 代表取締役のダニエル・へフェルナン氏は次のように述べている。
「LLM が実質私たちの業務や生活に今後どのように機能し、影響していくのかは未知数ですが、AI エージェントが将来、私たちの働き方の大きな部分を占めるようになることは明らかであり、Stripe は AI エージェントと決済が一体となった際の新たな可能性に期待を寄せています」
Stripe では今後、SDK (ソフトウェア開発キット) の対象範囲を最小限に抑え、Stripe API のサブセットに焦点を当てることでサポート範囲を拡大。また、SDK で利用可能な機能やデータを管理するために豊富な設定オプションを、随時提供していくという。
◎クイックガイドはこちらから。
https://docs.stripe.com/agents/quickstart
構成/清水眞希