「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。
私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。
YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。
瞑想とは、自分の心の移ろいに「気づく」こと
自分の内側にある心に集中し、「なにが起きているのか」をはっきり認識することの大切さについては、これまでにも何度かお話ししてきました。
その〝集中して気づき続けること〟が仏教でいうところの「瞑想」です。
ブッダは人生を懸けて心の中で苦しみがつくられる過程を観察しました。瞑想とは、自分の持つ「貪」「瞋」「痴」の三毒に自分自身で気づくこと。自分の心に向き合わなければ、その苦しみも手放せないのです。
■怒りの感情をクールダウンさせるコツ
さまざまな苦しみの根源となる感情のひとつに「怒り」があり、その怒りを鎮めるためにはものごとを理性的、客観的に見ていくことが重要です。
その方法は、自分の心に(1)集中し、(2)観察し、(3)気づき、(4)超えていくこと。
これが私の考える瞑想の4つのステップになります。
例えば、「許せない!」と思うほど、すごく腹が立つ相手がいたとします。
そんなときには、どうやって理性的に対処すればいいのか?
私は次のようにお伝えしています。
「怒りの感情に呑まれそうになったら〝なぜ怒っているのか?〟を書き出してみる。そして、〝相手になにを求めているのか?〟を考えてみましょう」
みなさん、実際に試してみると「そんなにたいしたことじゃなかったな……」ということも多く、それを「第三者に見せてごらんなさい」と言うと恥ずかしくなってしまわれる方もいます。
このように自分の感情を冷静になって見つめたり、時間を使って考えたりすることにこそ意味があるのです。
感情が暴走しはじめると自分自身を見失ってしまいますが、いろいろと思い返しながら考えていくと、「あの人にこんなことをされたから腹が立った」
「私が本当に求めていることはなんだろうか?」と事実を冷静にとらえることで理性が働きます。そして、自分の頭で論理的に考えているうちに自ずと激しい怒りの感情も鎮まっていきます。
つまり、感情はアクセル、理性はブレーキの役割があるということですね。
怒りを放出し続けているのはすなわち、三毒の「瞋」に侵されている状態なので、自分自身の心や体をどんどん破壊していくことになります。それでは結局自分のほうが損をしてしまいますよね。書き示すことで自分の感情の動きを客観的に見つめることができたら、次は瞑想4ステップの最後のひとつ「超えていく」を実践してみましょう。
例えば、職場にどうしても許せない嫌なやつがいるのであれば、自分の得意分野で頭角を現すほどに成績を上げて相手を立場的に追い越し、自分自身が上司のポジションに就く―そういうイメージです。
怒りを原動力に変えることがすべてプラスに働くとは限りませんが、ただ悶々とした日々を過ごすよりは効果的ですし、もし成功すれば悩みも解決するうえにあなた自身もレベルアップができて、一石二鳥が実現できます。
以前、オリンピックで金メダルを獲得された某女子スケート選手の方が、苦しい実体験をバネに頑張ってきたという話を聞いたことがあります。子どものころから注目を浴びる選手だったので、時にはマスコミに事実無根のひどい記事を書かれて悔しい思いをしてきたそうです。
彼女がどうしたかというと、マスコミのやり方を徹底的に研究して、それを逆手に取りながら取材する側の気持ちを理解することに努めたといいます。
自分が抱くネガティブな感情を、逆に自分の能力を高めるために活用できたら儲けもの。
「ピンチはチャンス」とはよくいわれますが、悔しい感情を活かすも殺すも自分次第なのです。
■事実と妄想を区別しながら自分の感情を客観視する
心の中では、自分自身の経験だけでなく、親や周囲の人間からの刷り込みなど、あなた自身が持つ情報を基にして苦しみとなる妄想がつくられていきます。
瞑想とは自分のなかに取り入れた情報を、事実と妄想にはっきりと分けていく作業であり、そのなかで「自分が本当はどういった感情を抱いているのか」に気づくこと。
例えば、恋人がなかなか連絡をくれないことに腹を立てているという場合。これは怒りの感情のように見えますが、自分の心と向き合って考えてみると、本当は「もっと自分のことを気にかけてほしい」という、悲しみやさみしさの感情が根底にあったりします。
感情は生まれては消え、ものごとが絶え間なく動き続けることで自分自身の認識も目まぐるしく変化していくでしょう。
私たちは五感だけでなく、なにかが心に触れることでも〝生きている〟と強烈に実感する生きものです。
それが善い感情であれ、悪い感情であれ、その両方にしっかりと向き合いながら、自分の心の移ろいに気づき続けていくことが大切なのです。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。
人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。
大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?
今回紹介した書籍はこちら
怒り、悲しみ、不安、嫉妬、後悔――。あなたを苦しめるネガティブな感情との向き合い方、上手な手放し方を身につける方法とは?長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である大愚和尚が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方を伝授する必読の一冊!
大愚和尚初となる恋愛攻略本も新発売!
なぜ人は「愚かな恋」に振り回されるのか?その答えは、自分の命の運び方、つまりは「運命の操縦の仕方」を知らないから。叶わぬ片思いへの執着、恋人への依存、失恋への未練、パートナーの裏切りに対する嫉妬と怒り――。2600年前のブッダの教えで、人生を翻弄する愚かの恋の沼から抜け出す方法を説く新感覚の恋愛攻略本がついに誕生!
■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
構成/DIME編集部