「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。
私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。
YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。
「羨ましいあの人」と同じ努力が自分にできるか
■「憧れること」と「羨むこと」の違いとは
私もあの人みたいになりたい!!
みなさんも子どものころには「大きくなったら、なにになりたい?」といった質問を何回もされてきたことでしょう。
そのころは、おそらく大人になった今よりも純粋な気持ちで「プロ野球選手になりたい!」「アイドルになりたい!」などと憧れの人を思い浮かべ、「自分もあんなふうになりたいな」と思っていたのではないかと思います。
誰かを羨ましいと思う気持ちに「羨望」があります。羨望と「憧れ」は似ていますが、少し違ったニュアンスでとらえる必要があるでしょう。
憧れには「いいな」と思う理想像があり、自分もそうなりたいと願ったり、心が惹かれたりするものです。
それに対して、羨望はあくまでも〝羨み〟であるということ。
「自分よりも給料が多くていいな」
「大きな家に住んでいていいな」
「高級車に乗っていていいな」
「かわいくてスタイルも良くていいな」
いずれも自分と他人との境遇の違いから感情が芽生えており、「こうなりたい」と想像する自分の姿が、つねに他人との比較によって成り立っています。
これが「プロ野球選手になりたい!」「アイドルになりたい!」と目をキラキラさせながら将来の自分を想像している子どもたちとの大きな違いですよね。
こういった羨みは仏教でいうところの「慢」にあたります。
なにかにつけて他人と比べることをやめられない生きものであるがゆえの欲求。すなわち、仏教では持たざるべきもの、捨てるべきものとされる煩悩です。
年がら年中、誰かと比較してしまうとキリがありません。もっとたくさんのお金、もっと大きい家、もっと高級な車、もっと素敵な容姿……。
この「もっと……」という欲求には際限がありませんので、どこまでいっても羨望が満たされることはないでしょう。
でも、憧れの場合はそうではありません。 自分で思い描く理想像があり、それを目指して自分が努力していく原動力になる。これはとても素晴らしい心がけですよね。
羨望に駆られて、他人との比較で小さな優越感や劣等感に浸っている限り、あなたの人生が幸せで満たされることはないでしょう。
自分の憧れを追いかけるのではなく、羨望に駆られて生きてしまう。分不相応というか、自分に納得がいかないまま「もっと、もっと」と追い続けて一生を終えていく。そんな卑屈な人生になってしまいます。
■羨みが嫉妬に変わっていませんか?
「羨みではなく、憧れを持ちなさい」
声を大にして言いたいのは、これに尽きます。
憧れがあるからこそ、人は成長できます。やはり自分自身を成長させるための糧にするべきでしょう。
羨みは、自分より優れているものを見たときに生まれるものであり、自分より劣っていると感じたものには抱かない感情ですよね。
例えば、「なんでこの人はこんなに仕事が(あるいは勉強が)できるんだろう?」と感じたのであれば、その人と自分とを比較するのではなく、それをじっくりと観察して、自分もそうなれるように努力すればいいのです。
これが間違った方向、悪い方向へと進んでしまうと、「なんであいつばっかり……」「どうせ私なんか……」という妬みや僻みにしかなりません。それこそ「なんかムカつく」「引きずり下ろしてやろう」と今度は足を引っ張ることに注力してしまうでしょう。
みなさん、なかなか表にこそ出しませんが、心の奥底にある羨みが嫉妬の感情に変わってしまっています。『大愚和尚の一問一答』でたくさんの方々の悩みを聞いていても、そう感じることが少なくありません。
■「無知であること」が嫉妬の苦しみを生む
なかには、私に対してはっきりと嫌味ごとをおっしゃる方もいます。
「なんでこの人は、わざわざこんなことを言うんだろう?」
「私はお坊さんだから反論したりしないと思っているのだろうか?」
お寺にいると、思わずそう思ってしまうような憎まれ口を叩かれることがよくあります。
とくに最近は、トイレを和式から洋式に変えたり、本堂に冷暖房の設備を加えたり、参拝に来てくださる方々に快適に過ごしていただく目的で建物の整備・建て替えなどを進めているので、「コロナ禍なのに、お寺は儲かっていいね」「まさに坊主丸儲けってやつだね」―そんなことを言われたりします。
私も修行が足りずに無知であったころは、そういった言動にいちいち腹を立ててしまったり、「そうじゃないんだけどな……」と心の中で傷ついたりしていました。
でも、今の私はこのように返します。
「そんなに羨ましいと思うなら、あなたもお坊さんになってみませんか?」
「365日、朝4時に起きる修行生活を5年、10年とやりますか? どんなに寒くても、雪が降っても裸足で寺中を掃除しなければいけませんが、ご一緒にどうですか?」
そんなふうに、お坊さんへの道を勧めるようになりました。
すると、なぜかみなさん「いやいや、結構です」と断られます。お坊さんだけが特別な苦労をしていると言いたいわけではありませんが、もし私に羨ましさを感じるのであれば、ぜひ同じことをやってみていただくのが良いと思うのです。
また、実際にお坊さんになってみれば、「坊主になっても丸儲けにはならないな」とご自身で感じていただけるのではないかとも思います。
なんにせよ、無知であることは不幸につながります。
最初から現実を知っていたとしたら、きっと羨むこともないでしょう。
「羨ましい」と思ってしまうようななにかを持っている人は、人知れず努力や苦労をしているものです。素晴らしいスタイルを持つ芸能人の方々は、週5でジムに通ってきついトレーニングをしたり、体型をキープするために好きな食べ物を我慢して食生活に気を遣ったりしている方も多いでしょう。
「もともと素質に恵まれているんじゃないか」などと思うかもしれませんが、どんなことであれ、なにかを保っていくためには相応の努力が必要です。
私も子どものころは「宇宙飛行士になりたい!」「宇宙に行けるなんて羨ましい!」と思っていましたが、宇宙に行くための長く厳しい訓練生活や、数カ月も宇宙船の中で命の危険と隣り合わせになりながら生活するという現実を直視したら、「とても私には耐えられないな……」ときっぱり諦めることができました。
「やれるもんなら、やってごらんなさい!」
そんな煽り文句を言うつもりはありませんが、〝その道のプロ〟と呼ばれる人たちだけでなく、それがどんな仕事だとしても、実際に自分でもやってみる、あるいはやってみることを想像してみると、モノの見方は変わります。そうすると、軽はずみな羨みもなくなると思います。
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いかがだったでしょうか?
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。
人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。
大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?
今回紹介した書籍はこちら
怒り、悲しみ、不安、嫉妬、後悔――。あなたを苦しめるネガティブな感情との向き合い方、上手な手放し方を身につける方法とは?長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である大愚和尚が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方を伝授する必読の一冊!
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■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
構成/DIME編集部