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「うまくいったあの人」への嫉妬を手放すたったひとつの方法

2024.12.17

「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。

私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。

YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。

「うまくいったあの人」への嫉妬を手放す方法

■「嫉妬」は他人に対する強い怒り

「自分の好きな人がほかの人と付き合ってしまった」

「職場で若くてきれいな同僚だけがチヤホヤされている」

「友達がSNSに楽しそうな投稿をたくさんしている」

このような場合、相手に対して「羨ましい」「妬ましい」という嫉妬の感情が湧いてしまうことがありますよね。

意外に思われるかもしれませんが、仏教において嫉妬は「怒り」のグループに分類されています。

「いいなぁ」と相手を羨みながらも、ほかの人が幸せであることに強い怒りを感じている。

それはいったい、どういうことなのか?

好きな相手を自分のものにしたい。

周りから好かれたい、もっと良い扱いを受けたい。

人よりも充実した楽しい生活をしたい。

これはなにかに近づきたい、手に入れたいと願う「貪(欲望)」の気持ちが働いているということです。

でも、好意を寄せている相手や職場の仲間たちは、私ではないほかの誰かに愛情や関心を向けている、友達や知り合いが私よりも楽しそうな生活をしている、「そんなことは許せない!」という怒りの感情を持ってしまうわけです。

「嫉妬」には、怒りだけでなく、不安、憎しみなどさまざまな感情が複雑に絡み合っていることも大きな特徴といえるでしょう。

恋愛感情がもつれると「好きなのに嫌い」「嫌いなのに好き」というような、なんともいえない感覚に襲われることがありますよね。

いろいろな感情が入り乱れている状態なので、心の混乱状態といっていいかもしれません。知性も理性もあるはずの大人でも混乱して、相手を罵ったり、時には物理的・心理的の両面で相手を攻撃してしまう―嫉妬は、とてもやっかいな感情なのです。

心を濁すとされる毒のなかには、簡単に抑えられるものもあれば、非常に解毒が困難なものもあり、その処理の仕方もさまざまです。

そのなかでも嫉妬は難易度最上位ランク。

仏教でも扱いが難しい感情とされています。

■「本能的な嫉妬」と「社会的な嫉妬」

シンプルな構造をしていない嫉妬だからこそ「人間って本当に面白いな」と感じさせてくれることもあります。

「今、なにしてたの?」
「どこに行ってたの?」
「携帯電話の履歴見せて?」

いくら付き合っている恋人同士でも、いつもそんなふうに束縛されたら、相手は「もういいよ……」とウンザリしてしまいますよね。

でも例えば、連絡もなく朝帰りをして「会社の若い子たちと飲んできたよ」とバカ正直に報告したとします。

そのときに相手が「あ、そう」と素っ気ない態度をとったらどうでしょう?

まったく嫉妬されない、あるいは関心を持ってもらえないとなんだかさみしく感じてしまい、「自分は愛されていないのか?」と思ってしまったりするのではないでしょうか。

ちょっとはヤキモチを焼いてもらいたいけど、焼かれすぎるのも億劫で嫌。

これは人間特有の面倒くさい感情かもしれませんね。

嫉妬も捨てられる嫉妬と、捨てられない嫉妬に分けられます。

自分の恋人が浮気をしているとなったら、それは「自分のパートナーを取られたくない」という動物的な本能なので、嫉妬してしまうのはやむを得ないでしょう。

一方で、人間にとってやっかいな嫉妬というのは、そういった性のような本能にかかわらないものです。

「同期のあいつのほうが早く出世している」

「友達が自分よりも華やかで楽しそうな生活をしている」

「隣の家族は高い車を何台も持っている」

こういった感情は動物的な嫉妬ではなく、これまで生きてきたなかで得た情報や知識の組み合わせによって生まれる嫉妬です。

「こういう暮らしをすることが成功者の証だ」「より望ましい人生だ」という世間の価値観や刷り込みによるものであり、錯覚ともいえるでしょう。

要するに、他人と自分を比べて下す評価なので、人間が社会的な動物であるがゆえに生まれてくる嫉妬ということです。

■嫉妬の反対は喜び

「すぐに人と比べて嫉妬してしまう自分が嫌」

それこそ現代ではSNSなどで他人の生活や行動が丸見え状態なので、不必要な嫉妬の感情を抱いてしまう方が多いのも無理はありません。

じつは嫉妬に対する処置は至ってシンプル。

「他人の喜びに対して、あなたも一緒になって喜んであげること」

これが最も効果的です。

ただ、誰しもどうしても競争心があって、ついつい相手を妬ましく思ってしまうものなので、なかなかすぐにはできないでしょう。

例えば、私たちはオリンピックを見ながら「頑張れ!」とスポーツ選手のことを応援したりしますよね。

まったく知らない赤の他人なのに、金メダルを取ると「やったー!」とその活躍ぶりをみんなで喜びます。

そもそも仏教では「嫉妬」の反対語が「喜び」なので、「自分ごとのように、本当に喜んであげることを練習しなさい」とブッダも説いていました。

嫉妬は怒りの一種であり、毒のひとつですので、ずっと持ち続けると心を破壊していきます。

全然知らない人、自分とはレベルが違っていて敵わないと思える人に対しては素直に喜べるのに、これが自分の知り合いや自分と似たようなレベルの人(だと思い込んでいる人)だと、妬ましく思ってしまう。

野球の大谷翔平選手やゴルフの松山英樹選手、あるいは世界的に活躍しているアーティストに対して「妬ましい!」と思う人はほとんどいないでしょう。これが自分のチームメイトや同僚、友達だと嫉妬してしまい、その成功を素直に喜ぶことができないのです。

だからこそ、意識的に喜ぶ練習をしなければなりません。

■他人の成功を喜べる人は自分も幸せになれる

プロゴルファーのタイガー・ウッズ選手は、同じ試合で戦っている相手のショットでも「入れ!」と一緒になって応援したそうです。

ふつうは自分が勝ちたいのですから「外れろ!」と念じてしまいますよね。

でも、彼はライバルのショットだとしても、自分の脳内に外れるイメージがつくられることを嫌いました。

自分にとってもネガティブなイメージトレーニングになってしまいますので、彼は当たり前のように他人の成功を願い、喜んでいるということです。

そうすることで、いざ自分が打つときにも、失敗する姿ではなく、成功する姿を想像しやすくなり、結果的にポジティブな循環が生まれます。

この原理を知っておくと、他人の成功を喜ぶことの意義もわかってくるのではないでしょうか。

私の実体験としてもお伝えしたいお話があります。

私は僧侶であるとともに空手家の顔も持っていますが、同じ道場に黒帯を取るのに16年かかった後輩Yくんがいました。

黒帯は流派にもよりますが、私の所属している団体では、8~10年くらいで取得できるので、時間がかかったほうだといえます。

Yくんは試合に出る仲間のためにミット打ちやアップに付き合うことを優先してしまい、自分の試合の出番を忘れてしまうくらいのお人好しでした。

そして、同期や後輩たちがどんどん自分を追い越していくにもかかわらず、妬みの感情などを見せることなく、相手の成功を心から喜んでくれるような人でした。

大会で良い成績を残したことはなかったのですが、「Yくんに黒帯を取らせたい」「Yくんが黒帯じゃなかったら、誰が黒帯だというんだ」―道場にいる誰もがそう思っていました。

だからといって黒帯の昇段試験に情状酌量はありませんので、やはり戦いになると先輩たちに敵わず、何度も何度も倒されてしまっていました。

それでも、16年目のその昇段試験では最後まで闘う姿勢が崩れませんでした。

小さいときからいじめられっ子だったYくんは、強くなりたいと思って空手道場に入り、長い年月をかけて黒帯を手にしたわけです。

本人も泣きながら喜んでいましたが、道場の仲間も同じように一緒になって喜びました。

試合でもなかなか勝てず、後輩たちにも追い抜かれる状況にありながら、Yくんはつねに他人の成功を一緒になって喜べる人でした。

だからこそ、周りの誰からも好かれ、心から応援されたのだと思います。

■「それは本当にほしいものか?」を見極める

そうはいっても他人の成功を喜ぶことはなかなか難しい……と思ってしまう方には、それ以外の対処法もお伝えしておきたいと思います。

ひとつは、競い合わないで済む人間関係をつくることです。

年の離れた人、まったく違う業界の知り合いなど、ふだんの自分の生活とは関係のない場所で出会った人や、属性が異なる人であれば、比較したり、競争したりするところがあまりないため、フラットな気持ちで付き合うことができるでしょう。

誰かに対して「いいなぁ」と思ってしまうのはしょうがないことですし、それ自体がダメなわけではありません。けれども、そこから「どうしてあの人ばっかり!」「自分のほうが……」などといった黒い気持ちに吞まれないことが大切なのです。

「いいなぁ。でも、私は私で頑張ろう」と、自分とは切り離して、切り替えて考えられるようにできれば、苦しい気持ちにとらわれることは減っていくでしょう。

また一方で、「いいなぁ」と感じてしまうことは、「本当に自分が求めているものなのか?」を自問自答してみるのも良いと思います。

例えば、毎日たくさんの人に囲まれて食事や遊びを楽しんでいる人や、高価なブランド品に囲まれている人。「たくさんの友達がいる人は優れている」「高価なブランド品を持つのは成功している証だ」などといった、世間の価値観に惑わされていないでしょうか。

よくよく考えてみたら、あなた自身はひとりで静かに過ごすほうが好きだったり、高価なブランド品よりも自分が本当に気に入るものを探すほうが好きだったりするかもしれません。

自分の心を見つめ、「自分が本当に大切にしたいものはなにか?」を考えてみると、苦しい嫉妬の感情がじつは「錯覚」だったことに気がつけるでしょう。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。

人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。

大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?

今回紹介した書籍はこちら

自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法

怒り、悲しみ、不安、嫉妬、後悔――。あなたを苦しめるネガティブな感情との向き合い方、上手な手放し方を身につける方法とは?長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である大愚和尚が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方を伝授する必読の一冊!

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■著者情報

大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。

YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答

構成/DIME編集部

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