長年、国内の飼育頭数ナンバーワンは犬だった。それが猫に変わり、今やネコノミクスと呼ばれる経済効果が注目される程、猫の存在感が増している。
犬と違って、散歩の必要がない猫は、これからの高齢化社会にもマッチしている上、日本の狭い住環境でも飼育可能で、日本人にとって猫が適したペットであることは間違いない。そんな猫好きにとって気になるイベントが東京・池袋のサンシャインシティワールドインポートマートビルにて開催された。ロイヤルカナン ジャポンが主催する「第4回ジャパンキャットショー」である。キャットショーは19世紀に初めてイギリスで開催された後、世界中で行われており、純血種の猫の保全と普及を目的に、猫種ごとに定められた審査基準によってスタンダードにより近い容姿を兼ね備えた猫を評価している。
今回行われたのは猫の2大血統書登録団体であるCFA(The Cat Fanciers’ Association, Inc)とTICA(The International Cat Association)がそれぞれ行ったキャットショーで、普段、私達があまり見たことが無い猫種がたくさん登場して、美しい姿を見せてくれた。
会場では審査の様子を見ることができるだけでなく、飼い主さんの役に立つ「ねこセミナー」や、猫用品を販売するショップコーナーのほか、猫のフォトコンテストの展示などが楽しめるようになっていた。今年のフォトコンテストのテーマは「いつだってきみに夢中」。応募された写真の中から選ばれた上位12作品のうち、来場者のオンラインによる投票によりBEST3が決定した。
一位の作品、タイトル:今日から僕たち兄妹だよ!
ミカエルちゃん(ホワイト)×アリエルちゃん(ブルー)
主催のロイヤルカナンコーナーの展示のテーマは「まもる」。猫の真の健康や幸せな暮らしを守るためにどうすればよいのか、会場では熱心に質問する来場者の姿が目立っていた。
優勝した子猫部門のブリーダーさんに聞く
キャットショーの醍醐味は何と言っても普段、あまり見たことが無い猫種たちの姿を間近で見ることができること。今回、TICAの子猫部門でノミネートされたのは、ブリティッシュロングヘア、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、ラグドール、サイベリアン、アビシニアン、アメリカンショートヘア、ロシアンブルー、サバンナ、トイガーだった。
珍しい猫種とともに、ブリーダーさんや審査員のリアルな様子を見るのも楽しみのひとつ。さらに、スタンダードと呼ばれる純血種ごとの本来の骨格や、毛色、瞳の色、尾の長さといった特徴を知ることができるのも楽しい。
また、審査を待つ間、猫たちは個別にゲージの中で待機しているのだが、元気な子猫たちは中でコロコロ転がって遊んだり、外にいるオーナーさんや会場の人にアイコンタクトをしてにゃーと呼びかけるなど、愛らしい仕草で私たちを楽しませてくれた。
ケージの中で座っているだけでワクワクさせてくれるショーに登場する猫たち。今回、子猫部門で優勝したブリーダーの熊井彩椰(あや)さんに、直接、話を聞いてみた。7か月のサイベリアンという珍しい猫種のオーナーさんである。
「サイベリアンはロシア生まれで、コートがトリプルコート、三重になっている珍しい猫種です。猫アレルギーの原因となるタンパク質の分泌量が少ないので、アレルギーになりにくい(全く出ないわけではありません)猫でもあります。
性格は犬みたいで賢く、従順で、良く慣れる、とても良い子なんですよ。ぜひ多くの人にその魅力を知ってもらいたいなと思っています。
TICAの子猫部門で優勝のサイベリアン。トリプルコートを触ってみたい!?
飼育で気をつけているところはいろいろありますが、やっぱりご飯については重要なことだと考えています」とコメントしてくれた。特に優勝した理由のひとつとして、グルーミングを評価してもらえたことが嬉しいと語ってくれた。
うちの子が健康で幸せになる3つのヒント
今回のキャットショーでは猫の飼い主さんの役に立つ講演が行われた。ペット防災専門家の平井潤子先生による「知っておきたい!猫のための防災対策」、猫心理学の専門家 高木佐保先生の「猫のこころを知ろう!猫の心理から読み解く“ねこのきもち”」、東京猫医療センター院長の服部幸先生の「猫の嘔吐SOSこんなときどうしたらいい?」のほか、二人の審査員によるキャットショーの楽しみ方講座なども開催された。これら講演から学んだ「うちの子が健康で楽しく暮らすための3つのヒント」を紹介しよう。
1)健康維持に重要な猫の食事
ブリーダーの熊井さんも、また、「ねこセミナー」に登壇した東京猫医療センター院長・獣医師の服部幸先生も、キャットフードは健康維持のために重要な要素であると語っていた。特に服部先生は「信頼できるメーカーの、質の良いフードを選ぶことが大切」と教えてくれた。
2)猫の健康や幸せを維持することは飼い主さんの役目
服部先生は今回、猫の嘔吐について講演したが、誤飲・誤食は飼い主さんが防ぐことができる事故だと言う。そして、「いつもと何かが違う、ちょっとの違いを感じることが、大切です」とアドバイスしてくれた。猫の防災対策も飼い主さんが準備すべきことのひとつ。猫の幸せのために、飼い主がやるべきことがある点を気づかせてくれた。
3)猫と遊ぶことの大切さ
服部先生の言う「ちょっとの違い」を知るために大事なのが、遊ぶこと。今回のキャットショーでも審査員は猫じゃらしで猫と遊ばせながら、審査をしていた。猫の自然な動きを見るのと同時に、遊ぶことでストレス解消にもなる。審査であっても、きちんと猫に配慮していることが伝わって来た。
猫の世界を堪能できるキャットショー。猫好きもそうでない人も、猫のパワーに触れ、感じることは多かったはず。キャットショーの猫もうちの子も、どっちも可愛くて最高!ということを再認識することができた。機会があれば、ぜひあなたもキャットショーを体験してみて。
文/柿川鮎子
撮影/木村圭司