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猫の嘔吐は普通じゃない!獣医が解説するトラブルの前兆となった3つのケース

2024.12.14

冬に増えると言われる猫の嘔吐。診察室での飼い主さんの言葉を具体例に、ひびき動物病院院長の岡田響先生に、猫の嘔吐について解説してもらおう。

猫が吐くのは「普通じゃない」

――犬と猫を飼育していますが、猫は犬に比べると良く吐きますね。犬の嘔吐は見たことがありません。

岡田先生 確かに、なぜかそういうイメージがあるようですね。飼い主さんにしてみれば、「うちの〇〇ちゃんはいつも〇〇だから吐いちゃうのよ」みたいに、当たり前になっているかもしれません。猫の嘔吐について正しく知っておくためにも「猫が吐くのは、普通じゃないよ」と最初に言っておきたいと思います。

猫はみんなよく吐くのかというと、そうではありません。吐くこと自体が日常的によくある、というのも普通のことではありません。ですので、前提として、吐くことは普通ではない、そういう認識をもっていて欲しいのです。

実際、猫が吐くという症状に関する相談や診療は、少なくはないです。無治療でいいような、軽度なものから、入院が必要なケース、命にかかわるケース、様々あります。

――うちの子は吐き「癖」がある、という言い方もするので、慣れてしまっていました!「普通じゃない」んですね?

岡田先生 多くの猫の飼い主さんは、ネットなどで検索されていると思うので、こんな時に吐く、という情報をなんとなく知っていらっしゃるでしょう。なので、私からは実際の診療で飼い主さんが訴えた言葉を「動物病院の具体例」としてそのまま紹介しましょう。最初の3つはちょっと怖い例です。

■動物病院の具体例その1
「何回も吐いているんです、そして何回もおトイレに行きます」

この「吐く」と「トイレ」のペアは、大抵緊急事態で、すぐに病院に連れて行く必要があります。猫は泌尿器トラブルが多く、膀胱炎や尿石症で尿中の結石や結晶、血餅(血液のかたまり)のため、尿路閉塞を起こしてうまく尿が出ない状態になると、数日で命取りになるほどの急激な病態の進行が起こります。この時に強い吐き気が出ます。

急速に進行するので、どの程度の危険性か?おしっこが出ない場合は出るための処置を緊急で実施するためにどうしたらいいか?などを検査と処置で追及しますが、命にかかわるために、必要な処置も多くなるので、費用もかさみます。

■動物病院の具体例その2
「ご飯は食べますが、最近、食後によく吐くんです」

若い子から中年ぐらいまでの猫の場合は、まず異物の誤飲誤食がないかのチェックが必要です。年齢的に中高年以上の子や、若くても肥満体形の子などは、内臓の病気や腫瘍・がんなどを気にしないといけないかもしれません。

食後数時間までは食餌が胃の中にとどまり、胃酸などで分解されます。食後数時間の嘔吐の場合、胃や小腸より先に流れ、代謝されている過程で嘔吐している可能性があります。そうすると、腸そのものの原因か、吸収してから膵臓や肝臓など内臓が動くときの原因か、などを考えながら、原因を探る検査が必要になります。

原因によってはやはり命の危険を伴うため、危険度を見極めるために、しっかり検査する必要があります。体力的な時間が許す場合は、治療しながら日を追って順番に検査をすることもあります。

異物の場合は、いつ飲んでどのあたりまで(体の中を)流れていそうか?本当に飲んでいるのか?などを検査します。

はっきりと誤食したモノがわかればすぐに治療できますが、不確実な場合や(食べたかどうかも)よくわからない場合も多いのです。やはり検査で疑いが高いのか低いのかを調べ、その後を検討します。毒物や毒性のある食べ物や植物・花などは、原因物質が特定しにくく、また、検査で中毒が判明した場合は、入院処置を検討する必要も出てくるでしょう。

しかし、ユリの花など、命にかかわる危険物を食べているのを見たら、すぐに獣医師に伝えてください。検査せずに、取るべき処置を選択できる場合があるからです。治療が間に合わずに、助けられないケースもあります。

■動物病院の具体例その3
「夏休み、田舎に連れて行ったのですけれど、帰ってきた日から食事をせずに、吐いてしまいました」

飼い主さんの話を聞くと福島から横浜までの車の移動で、エアコンは効いていたが、少しハァハァしているように見えた、とのことでした。熱中症関連の場合は命にかかわることがあるため、一通りの検査をさせてもらったところ、体温こそ高めの平熱でしたが、熱中症の後遺症を強く疑う内臓の損傷がありました。

猫は普段から車に頻繁に乗って移動することがないので、極度に緊張して、ストレス状態にあったか、狭いゲージで暑かったなどの、色々な条件が重なったのでしょう。結果的に熱中症か、ヒートストレス(過呼吸などで起こる体温上昇で熱中症のように体温が高温になる)の状態になった可能性があり、早急な入院管理が必要でした。

3つの怖いケースを紹介しましたが、嘔吐が大きなトラブルの前兆であることも多いのです。ですから「猫が吐くのはよくあること」という認識はとても危ないと、私は思います。次の「具体例その4」はよくあるケースです。

動物病院の具体例その4
「ドライフードを食べて、比較的すぐに、多分、全部吐きました。硬いフードがそのままの形で出てきました」

猫の突然の嘔吐に驚いて、相談に来られる方も多いです。そうした飼い主さんが良くおっしゃるのが上記の内容です。よくある症状なのに、なぜそうなるのか、医学的にはっきりと解明されていません。

急いでよく噛まずに飲み込んだ後に吐くことはあるので、飼主さんには勢いよく食べないように与えたり、別の食事(粒の大きさやフードのタイプを変える)や、食器や、知育玩具(一気に食べないような入れ物)を試すように提案をしています。

しかし、嘔吐が継続する場合は病気の可能性も高くなるので、これも「吐き癖だから」と楽観せずに、かかりつけの動物病院と相談してみてください。検査をして異常が無ければ安心できます。

最近は猫の嘔吐でネットを検索すると、大丈夫な嘔吐、危険な嘔吐などの記事がたくさん紹介されています。でも、「大丈夫な嘔吐だから」と、安心してしまい、実はもっと深刻な状況になっている、ということも珍しくないのです。

よくある猫の嘔吐記事で、「1回だけ吐いた程度の場合、元気で過ごしているようならあせらず観察を続けてもいいかもしれない。1日に3回以上吐いたり、1日1回だけでも3日続いている、とか、3回続くような場合は病院へ行く」と記載されていることが多いのですが、これは私もいつも患者さんによく話している内容と同じです。

――いままでペットフードや毛玉の嘔吐は普通のことだと思っていました。

岡田先生 ペットフードや毛玉の嘔吐は、確かにあります。でも、野生の猫はドライフードを食べませんし、食べ物を吐くのは普通ではないことだと、私は思います。嘔吐が続くと、将来別の病気につながるケースも考えられるからです。

でも、飼い主さんにしてみれば、「うちの○○ちゃんはいつも〇〇だから吐いちゃうのよ」と吐くのが当然のように受け入れられてしまっています。もちろん、まれにそういう子もいるでしょう。でも、認識を新たにして「吐くのは普通じゃない」とどこかで感じていて欲しいのです。

毛玉を吐くのも同じで、普通のことだからと、そのままにしておいては、別の病気でもっと悪くなってしまうかもしれないのです。日ごろからブラッシングをするなど、飼い主さんが対策を検討する必要があるでしょう。

――毛を吐き出すための猫草は与えた方が良いのでしょうか?

岡田先生 与えてもよいですよ。毛玉が出やすくなる子もいそうです。でも、積極的に吐かせるために与えるものではありません。

猫草は必ず必要なもの、というわけではなく、猫は肉食動物なので植物は基本的に必要無いのです。でも、猫草を積極的に食べている猫には、ドライフードばかりではなく、他の食材も与えてみてください。ドライフードだけでも生きられますが、不足している成分があるというサインかもしれません。

猫の嘔吐で動物病院に行く時のアドバイス

――猫の嘔吐で動物病院に行く時のアドバイスを教えてください。

岡田先生 まずは、「早く連れて来て」ですね。猫は犬と違って狂犬病の注射もないし、散歩の途中で病院に寄ることもないので、会う機会が少ないのです。ホームドクターが異常に気づいたり、アドバイスすること自体が難しいので、身体に変化が見られた時は、かなり進行していることも少なくないです。

吐いた時も、「よくあること」と安易に思わず、ちょっと聞いてみよう、と動物病院をうまく利用してほしいです。でも、電話やメールだけでは解決できないので、できれば実際に来て欲しいです。

嘔吐物はそのものを持ってきていただければ、そこにヒントがあることもあります。スマホの写真のほか、実物があればそれも持ってきた方がいいです。明らかに何か食べた場合は、そのものの残りや一部、写真、なんでもいいので、見られるものを一緒に持ってきてください。

その他緊急事項に該当する場合は、色々調べる前に、動物病院に問い合わせをしていただくことをお勧めします。そして病院に行くと決まったら、来院予約をしてください。あまり緊張せずに電話してもらうのが一番早いと思います。

――ありがとうございました!

取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

文/柿川鮎子

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