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「煩悩」って結局、何ですか?心を蝕む3大煩悩の正体

2024.12.22

「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。

私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。

YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。

心を蝕む3つの毒「欲・怒り・無知」とは

「我」「慢」などの本能から生じる感情。

これを仏教では「煩悩」と呼びます。

そして、この煩悩が私たちにネガティブな感情をもたらすわけですが、ここではそれを促進する3つの要素について説明していきましょう。

ものごとを良い方向に促してくれるものの代表例として薬を挙げるとするならば、この3つは真逆の働きをしますので、毒とお考えください。

いや、毒というより猛毒と表現したほうが適切かもしれません。

ブッダはこの3つの要素に対して「貪」「瞋」「痴」という名前を与え、人間の肉体と精神、ひいては人生を台無しにしてしまう「三毒」と位置づけました。

スムーズに苦悩を手放していくためには、この貪瞋痴のしくみを理解し、自分のことを冷静に見つめていく必要があります。原因を知らなければ、対処もままならないというわけです。

■「欲」「怒り」「無知」でワンセット

「貪」とは「欲」のこと。

「なにかがほしい」「なにかを求めていきたい」「好きなものに近寄っていきたい、自分に近づけたい」と願う衝動、すなわちエネルギーとお考えください。

好きな人であったり、お金であったり、物品であったり、社会的地位であったりと、あらゆるものが対象になります。

対象が磁石のS極であったら、自分は全力でN極になりたいと思う―そういう欲求が「貪」です。

「瞋」は「怒り」です。

「貪」と反対に、「嫌いなものを自分から遠ざけたい、引き離したい」と望むエネルギー。対象が磁石のS極なら自分もS極に、向こうがN極なら自分もN極になりたいと思う感情が「瞋」です。

嫌いだから遠ざけたい。でも、遠ざけられない。だから、怒る。

その流れをイメージするとわかりやすいでしょう。

「痴」は「無知」を意味します。

智慧がないためにどうしていいかがわからず、心身ともに不安定になってしまう。あるいは、智慧がないために愚かな行為に走ってしまう。そんな心境ととらえてください。

「貪」「瞋」のところで取り上げたエネルギーに例えると、行き場を失ってぐるぐる回っているような状態です。

■三大煩悩が生み出す負のサイクル

この貪瞋痴は、それぞれの性格こそ異なるものの、じつは密接にかかわり合っています。

「欲(貪)」が満たされないから、「怒り(瞋)」が生まれる。
「怒り(瞋)」が発生しても「無知(痴)」ゆえに鎮め方がわからない。
「無知(痴)」で現実や自分の本質を理解できていないため、新たな「欲(貪)」が生まれる。

絶えずこれをくり返しているのです。

現代では脳科学が進歩したことで、人間の心理メカニズムをある程度科学的に説明できるようになりましたが、ブッダは2500年以上前の時点ですでに、体感的にこの負のサイクルに気づいていたというわけです。

こういう感情を抱くと、心臓がドキドキしたり、頭がカッとなったりする。

それが続くと体が疲弊し、心身の調子が悪くなる。

結果的に、すべてのものごとがうまくいかなくなる。

ブッダは自分の肉体と精神の変化を徹底的に観察することによって得られた答えを、すべてエビデンスにしていったわけですね。

ほったらかしにしておくと、苦悩が消えることはなく、自分の肉体・精神・人生を滅ぼしていってしまう―だから貪瞋痴は三毒なのです。

恋愛に例えると、とてもわかりやすいかもしれません。

あなたに好きな人ができたとします。

もっと近づきたい。触れ合いたい。付き合いたい。結婚したい。

これは「欲(貪)」です。

そして、相手も自分のことを好きになってほしい、好きになってくれるかもしれないと期待します。

しかし、世の中はかなわぬ恋が大半。残念ながら、「こうなってほしい」という欲望は、その人の心が生み出した都合の良い「妄想」にすぎません。相手がこちらの好意を察して避けるようになったり、勇気を出して告白するもフラれたり、という結末が待っていることも多いでしょう。

すると今度は、「なんでうまくいかないんだ」「自分の思いどおりにならないんだ」という「怒り(瞋)」が生まれます。相手のことを好きな気持ちが強く、失恋のダメージが大きければ大きいほど、怒りの度合いが強くなることは自明の理。「相手も自分のことが好きかもしれない」「好きになってくれるかもしれない」というのは完全に妄想であり、勝手にひとり相撲をとって自爆しているだけなのに、いつの間にかふつふつとこみ上げてくる怒りを抱える自分に苦悩することになるのです。

にもかかわらず、「それは愚かな自分の妄想にすぎない」ことを知らない。つまり、「無知(痴)」であるがために、再びかなわぬ恋を追い求めたり、ひどい場合には、好きな相手に対してストーカー行為をしてしまったりするようなこともあります。

また、いわゆるダメ男やダメ女との恋愛に失敗し、「二度と同じ過ちをくり返さない」と心に誓いながら、また似たようなタイプの人に引っかかることもあるでしょう。

はっきりいえば、われわれ人間はアホなのです。「無知」は人間が巧みに生きることを阻む毒なのです。

■「誰かのせい」にしていては苦しみから抜け出せない

あなたは、貪瞋痴の無限ループにハマっていないでしょうか?

自分の胸に手を当てて考えてみてください。

「私は大丈夫。煩悩はないし、人生に苦悩することもない」

そう断言できる人であれば、ブッダのアドバイスに耳を傾けなくても巧みに生きていけるでしょうし、そもそもこの本は必要ありません。

まさしく〝釈迦に説法〟です。

でも、そんな人はおそらく少ないですよね。人は大なり小なり、苦悩を抱えているものです。ゼロということは、なかなかないと思います。

だから、巧みに生きるための智慧を身につけなければならないのです。

何度も言うように、苦悩を生む原因は自分自身にあります。

その自分を客観的に、正しく見ること。これが智慧です。

「我」や「慢」によって自分のことを色眼鏡で見ていることに気づかない限り、苦悩がなくなることはありません。

自分の都合の良いようにものごとを見て、望むように事が運んでくれるだろうと考えて、それを前提にものごとに取り組んでいては、結果的に失敗し、苦しみ、悩み、ストレスを溜め込むことになります。

そして、その原因が自分にあることを棚に上げて(その事実に気づかずに)、原因を相手に求め、「あいつが悪い」と非難・攻撃します。

究極的には殺人を犯すか、自らを殺害してしまうことにもなります。

そういう極端なことをしてしまう愚かな存在が、人間なのです。

だからこそ、そうならないために、巧みに生きていくために、智慧を育てましょう。人間の心のしくみを理解し、感情をコントロールできるようになりましょう。

その方法論がきちんと体系立てられているのがブッダの教え、すなわち仏教です。

第2章〜第4章では欲・怒り・無知というカテゴリーに分け、負の感情について説明していきます。そこで紹介する負の感情ごとの対処法を習得する前に、大前提としてそのことを頭に入れておいてください。

☆ ☆ ☆

いかがだったでしょうか?

『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。

人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。

大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?

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■著者情報

大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。

YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答

構成/DIME編集部

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