「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。
私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。
YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。
悩みすら「諸行無常」である
インドの古い言葉―パーリ語で書かれた仏典にdukkha(ドゥッカ)という単語が頻繁に登場します。これが中国に入って「苦」と訳されました。
私たちは「苦」と聞くと、怒りや憎しみ、悲しみなどネガティブな感情をイメージするでしょう。
しかし、喜びや楽しみなど、一見ポジティブなもの、良いものとされる感情もじつはドゥッカ=苦なのです。
喜びも楽しみも「苦」である。
ブッダはそのように説かれました。
「どういうことなの?」と混乱してしまったかもしれませんが、ドゥッカは決してネガティブな表現ではありません。ドゥッカとは「変化して止まることがない」状態を表した言葉なのです。
私たちは「喜びの反対は苦しみ」というように、すぐに二元論で考えてしまいがちですが、喜びも苦しみも、一時的に心に現れては消えてゆく、変化する刺激にすぎません。
これは振り子の原理で考えるとわかりやすいでしょう。
感情がネガティブな方向に振れれば苦しみになり、ポジティブな方向に振れれば喜びになりますよね。
じつのところ、この喜びの感情は永遠のものではありません。
例えば、大好きな人がいて、告白をしたらOKしてもらえた。これはとても嬉しい出来事ですから、喜びも爆発してしまいます。それこそ「この愛が100年続いてほしい」と願うわけです。
でも、恋愛は楽しいことばかりではありませんし、たいていの場合、いつかは別れが訪れます。
好きであればあるほど、楽しい思い出が多ければ多いほど、それを失ったときの悲しみが大きくなり、これが振り子のごとく苦しみの方向へ勢いよく動いてしまうのです。
結局のところ、自分の心がいちばん安定するのは、喜びにも、悲しみにも、どちらにも振り子が振れていないフラットな状態のとき。
仏教でいう「心の安寧(幸せ)」とは、つねに自分の心を見つめて、振り幅があることを知り、そのうえで安定した状態に持っていけるようにすることなのです。
■喜びも苦しみも永遠には続かない
つねに付き合いたてのような、いわゆるラブラブの状態が理想であるという、そういった恋愛観を持つ人は、付き合う期間が長くなるほどに苦しむことが多いかもしれません。
仕事などで「自己肯定感が高くないとだめだ」「つねにポジティブでいなければならない」と頑張る人は、そうなれない自分に苦しむことでしょう。
喜びや悲しみには、絶対値がありません。
いつでも恋人とはラブラブでありたい。自己肯定感の高い人間になるべきだ。毎日を前向きな気持ちで過ごさなければいけない。そのような、世の中で「より良い」「こうあるべきだ」とされていることを絶対視して生きると、かえって幸せから遠ざかるということです。
もちろん、喜ぶときには素直に喜びましょう。でも、その喜びも永遠に続くものではないことを理解しなければいけません。
一方で「このままずっと私は不幸なんだろうか……」と、思って悩んでおられる方はたくさんいらっしゃいますが、大丈夫です。
苦しみもまた、延々と続くものではないのです。
仏教では、この世に存在するすべてのものは「仮のもの」であると考えます。あらゆる事象は、同一性を保つことなく、つねに変化し続けている。この真理を「諸行無常」と呼んでいます。
どんなことも永遠に続きはしません。
楽あれば苦あり。されど、苦あれば楽ありなのです。
そして、もとより喜びも苦しみも自分の内側で生まれるもの。自分の管理できる範囲内にあるものなのです。
まずは、そのしくみを知るところから始めていきましょう。
☆ ☆ ☆
いかがだったでしょうか?
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。
人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。
大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?
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■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
構成/DIME編集部