「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。
私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。
YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。
生き方が「うまい人」と「下手な人」の違いとは
少し難しい言葉になりますが、ブッダの教えを、シンプルに、わかりやすく集約した七仏通誡偈という偈文(仏の教えを韻文[詩]の形式で述べたもの)があります。
諸悪莫作……「悪いことをしない」
衆善奉行……「良いことをしなさい」
自浄其意……「心を清らかに保ちなさい」
是諸仏教……「覚りを開いたブッダたちが説いた教え」
では、悪いこととは? 良いこととは? それらはいったいなんなのか?七仏通誡偈の話をすると、よくそのような質問が挙げられます。
ここでいう善悪には、まず道徳的な善悪の意味があります。そして、それと同時に、善は「巧み」であり、悪は「下手」であることを指しています。
道徳を守って生きなさい。
下手をやめて巧みに生きなさい。
そして、心を清らかに保ちなさい。
ブッダはこう説いているのです。
ふだん私たちが生きているなかで、無意識の行動は少なくありません。例えば、歩く動作ひとつをとっても、右足、左足、と交互に出しながら、体の重心やバランスを、崩したり、整えたりするわけですが、これらの動作をいちいち頭で考えなくても感覚的に動かせていますよね。
でも、赤ちゃんのときにハイハイから二足歩行になるまでのプロセスはかなり大変です。少しずつ動き方のコツを積み重ねることで、立ち上がって歩けるようになるわけです。それと同じで、今でこそ無意識でできる行動も、小さなことの積み重ねによる賜物なのです。
では、仮に私たちが無意識に行っている習慣のなかに〝下手なこと〟があったとしたら……。知らず知らずのうちに「下手なやり方」を積み重ねてしまっていたら……。
なんにせよ無意識なのですから、これはなかなか直せません。
では、どうしたらいいのか?
それは無意識の状態から、自分の意識にのぼらせること。重要なのは、自分自身で「下手なこと」に気づくということなのです。
■信念を変えれば、運命が変わる
「なぜか、あの人の話し方は癇に障る」
「言いたいことはわかるけど、言い方がきつくて話していると嫌な気持ちになる」
こんなケースは、日常の人間関係のなかでもよくあるのではないかと思います。話し方が下手な人は、たとえ言っている内容が正論だったとしても、相手にどこか嫌な印象を持たれてしまいます。
それこそ声のトーンや振る舞い、口グセなど、無意識にやっていることが多いので、本人はなかなか気づきにくい点が多かったりもするでしょう。
話し方の場合は、外に向かって発信しているものなので、他人に気づいてもらったり、指摘してもらったりすることで直していくことができます。しかし、自分の考え方のクセは当人にしかわからないので、「巧み」になるためには、自分自身で下手な部分に気づかなければいけません。
マハトマ・ガンディーの有名な言葉にもあります。
「信念が変われば、思考が変わる。思考が変われば、言葉が変わる。言葉が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる」
だいたい私たちは「運命」のところだけを見て、不幸を嘆きがちです。しかし、それではなにも改善されません。大本である「信念」を変えなければ、その先にある「運命」を変えることはできないからです。
私たちの持っている「信念」は、親や友人・知人、メディアなど周りのさまざまなものから影響を受けるなかで、知らず知らずのうちにつくり上げられているものです。誰もがその無意識の信念に基づいて、考えたり、話したり、行動したりします。そして、それが自分の人格や運命を決めているのです。
ブッダは、そんな私たちの根底にある信念や思考体系を変えようとしました。
もちろん、子どものころから積み重ねてきたものなので、変えることは容易ではありません。でも、自分の運命を、人生を本気で変えたいと願うのであれば、そこに立ち返るほかないのです。逆にいえば、大本を変えることができれば、今ある悩みや苦しみをすべて手放すことができるのです。
例えば、周りの人とコミュニケーションを取るのが苦手で、人付き合いがうまくできず悩んでいる場合。「自分は生まれつきこんな性格だから不幸なんだ」「誰とも仲良くなれないんだ」と運命だけを嘆いていても、なにも変えることはできません。そんなとき、「周りの人に感謝の気持ちを持ち、それを少しずつでも伝えるようにしてみよう」という信念を持ってみる。
小さなことでも「ありがたいな」という思いを持ち、「ありがとう」と声に出して伝えるようにしていく。そうしていくことで、周りの人のあなたに対する評価や態度が変わり、向こうからも話しかけてもらえるようになったり、コミュニケーションが生まれたりするようになるかもしれません。
「人に感謝する」という信念を持ち、思考を変え、言葉を変え、行動を変え、習慣を変えることで人格が変わり、運命も変わっていくとは、こういうことです。
仏教とは、自分自身を振り返るための〝気づきの手法〟をパッケージ化したものなのです。
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いかがだったでしょうか?
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。
人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。
大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?
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■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
構成/DIME編集部