「家族と仲が悪く毎日イライラしている」「職場の上司と性格が合わなくてつらい」「恋愛がうまくいかず苦しい」。
私たちの人生には、このような乗り越えるべき「壁」がたくさんあります。その中でも最も大きな障害は「自分自身」かもしれません。なぜなら、悩みや苦しみは、「他人」が生み出しているのではなく、紛れもなく「自分」から生まれているものだから。
YouTube登録者数約70万人を誇る大人気僧侶・大愚和尚こと大愚元勝氏による累計5万部突破のベストセラー『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』から一部を抜粋・編集し、自分を知り、受け入れ、変えていくためのヒントを紹介します。
2500年前の智慧が「今ある悩み」を手放すツールになる
「仏教の考え方って、アドラー心理学によく似ていますよね」
こうおっしゃる方をよくお見かけします。仏教のことを勉強され始めて間もない方に多くいらっしゃる印象です。
これは、順番が逆なのです。仏教がアドラー心理学に似ているのではなく、アドラー心理学が仏教に似ているということです。
心理学者のアルフレッド・アドラーがこの世に誕生したのは1870年であり、アドラー心理学を提唱するようになったのは20世紀に入ってからのことです。
それに対し、ブッダが仏教を確立したのは今から約2500年前の紀元前5世紀ごろのこと。
「心の平穏を得るために、いかにして苦しみを手放すか」という両者の基本テーマは同じながら、学問としての歴史の長さが違います。
アドラーさんが活躍した時代には、ヨーロッパでも仏教が盛んに研究され、多くの学者に影響を与えていましたから、アドラーさんも少なからず、仏教の影響を受けていたのかもしれません。
■仏教の基本姿勢は「三蔵」を習得すること
そんな仏教には「三蔵」と呼ばれる学問体系が存在します。これは仏教を学ぶうえで欠かせない姿勢、習得すべき学問のことを指す言葉で、「経・律・論」という3つのパートで構成されています。
「経」は、「ブッダの教え」のことです。35歳で覚りを開かれたブッダは、80歳で亡くなるまでの45年間、各地を歩いて教えを説き、多くの人々を苦しみから救いました。そのブッダに付き添い、誰よりもブッダの教えを聞いた弟子がアーナンダでした。ブッダ亡きあと、アーナンダを中心としてまとめたブッダの教えが「経」です。
「律」は、守るべき集団ルールのこと。
「1人だと怠ける。2人だと喧嘩をしたら終わり。3人だと2対1に分かれて対立する。だから、4人以上で集まって、助け合い、励まし合いながら修行する」
ブッダはこのように弟子たちに勧めました。この修行者の集まりのことを〝サンガ〟と呼びます。4人以上が集まれば、生まれ育った環境や持っている考え方が違って当然なので、全員が折り合って争うことなく生活していくための決まりが必要。それが「律」です。
「論」は、経や律に対しての注釈書、または、経や律について後世の弟子たちが独自の理論をまとめたものです。
この「経・律・論」を総称して「三蔵」と呼び、三蔵すべてに習熟したお坊さんのことを、三蔵法師と呼びます。三蔵法師といえば、中国の小説『西遊記』に登場するキャラクターが有名ですが、あれは固有名詞ではありません。歴史上、「三蔵」をマスターした法師はたくさんおられるのです。
■仏教には「苦しみの手放し方」の答えがある。さて、ここからが本題です。
三蔵の最後の「論」のなかに、人間の心について詳細に分析した「阿毘達磨」という解説書があります。
わかりやすく表現すると、仏教心理学の教科書です。
そして、この「阿毘達磨」のなかに登場する「苦の手放し方」について、できるだけ難しい仏教用語を使わずに、やさしく解説したのがこの本であるとお考えください。
2500年前の教えが現代でも通用するの?
そんな疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう。
でも、心配はいりません。通用するからこそ、仏教は廃れることなく連綿と伝えられてきたのです。そして、歴史上の多くの心理学者の方々も参考にしてきたのです。
仏教では、私たちが抱えている悩みや苦しみが、どのようにして生まれてきて、どんな性質をしていて、心身にいかに悪影響を及ぼすのかについて、体系的に、そしてきわめて論理的にまとめられています。
そして、「どうやって苦しみを手放していくか?」という問いに対する解決方法が、とても細かく、理路整然と示されています。
しかもその内容は、現代の科学者がいろいろな調査を重ねて突き止めたことや、心理学者が常識として口にする「今のやり方」につながっています。
ブッダは2500年前の時点ですでに、その領域に到達していたのです。
■ブッダは心のマスター
プロサッカー選手は、サッカーのマスターです。料理の鉄人は、料理のマスターです。ブッダはいうなれば〝心のマスター〟であり、その教えを学び、実践し、悩める人々に伝えるのが私たち僧侶の役割です。仏教を学問として学ぶのではなく、心をおさめるトレーニングとして積み重ねること。それを修行と呼びます。
私はどこかで心理学を学んだわけではありませんが、YouTube『大愚和尚の一問一答』で、多方面からのお悩み相談を受けることができるのも、ブッダの教えを学び、修行しているからでしょう。
これから本書でお伝えしていく内容も、あなたの悩みや不安の解消にきっと役立てていただけるのではないかと思っています。ブッダが導いた答えは、それだけ実用的で、効果的なのです。
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いかがだったでしょうか?
『自分という壁 自分の心に振り回されない29の方法』は、自己との向き合い方を深く考えさせてくれる一冊です。
人生の壁に直面した時、それを他人や環境のせいにするのではなく、自分の内側を見つめ直すことで新たな道が見えてくるかもしれません。
大愚和尚のメッセージは、読む人の心にそっと寄り添い、勇気を与えてくれます。本書を通じて、人生に立ちはだかる「壁」を超える力を、一緒に見つけてみませんか?
今回紹介した書籍はこちら
怒り、悲しみ、不安、嫉妬、後悔――。あなたを苦しめるネガティブな感情との向き合い方、上手な手放し方を身につける方法とは?長年にわたり数多くの人々の悩みや苦しみと向き合ってきた禅僧である大愚和尚が、仏教の思考法に基づき、自分の心との向き合い方、負の感情の手放し方を伝授する必読の一冊!
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■著者情報
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。佛心僧学院学長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。 駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」
構成/DIME編集部