その他の特徴的なアノマリー
曜日効果:かつて「月曜日は下がりやすい」など曜日単位で傾向があると言われたこともありました。しかし、今は情報が常時出回り、世界中の投資家が24時間対応しているような時代。曜日の違いによる傾向は薄れています。
四半期末のリバランス:大口投資家(年金基金や投資ファンドなど)は、3ヶ月ごとにポートフォリオ(保有資産)の見直しをすることが多いです。このため、3月末、6月末、9月末、12月末には株式の売買が増えて、株価が一時的に動きやすくなる場合があります。
オプション満期日(クアドルプル・ウィッチング):年4回(3月・6月・9月・12月)には、株式や株価指数に関するオプションや先物といった「デリバティブ商品」が一斉に期限を迎える「クアドルプル・ウィッチング」という日があります。この日は取引が増え、値動きが荒くなりやすいとされています。短期的には注意が必要なタイミングです。
現代の視点:アノマリーは薄れつつある?
IT技術の進歩、情報の即時共有、アルゴリズム取引などが進んだ今、過去によく見られたアノマリーが弱まっている、または形を変えているという指摘もあります。つまり、みんなが「夏は相場が動かない」と分かっていたら、その分を織り込んだ動きが起こり、結果的に目立たなくなる可能性があります。
それでもアノマリーが語られ続けるのは「投資家の心理」が影響するからです。株式市場は経済理論だけでなく、人間の感情や行動パターンも織り込まれています。多くの投資家があるアノマリーを意識すればするほど、ある程度その通りの動きが出やすくなることもあるのです。
アノマリーとの付き合い方:参考程度に
投資ビギナーのビジネスパーソンにとって、アノマリーは「投資の教科書」ではなく「ちょっとしたヒント」程度に考えた方が安全です。市場を動かす大きな要因は、企業業績、経済成長率、利上げ・利下げなどの金融政策、地政学的リスクなど、もっと本質的なものです。アノマリーはあくまで「過去にこういう傾向があった」という経験則なので、それ自体を頼りに大きな投資判断をするのはリスクがあります。
一方で、アノマリーを全く無視する必要もありません。
たとえば、「年末は市場が上がりやすいらしいから、年内に追加投資をしてみようかな」といった柔軟な発想で接する分には問題ないでしょう。あるいは、「5月から夏は動きにくいなら、積極的な短期売買は控え、長期目線でじっくり保有しよう」という戦略を立てるきっかけにもなります。
おわりに
1年を通じ、アメリカ株式市場には様々なアノマリーがあります。
これらは「必ず当たる魔法の法則」ではなく、あくまで過去に見られたパターンに過ぎません。でも多くの投資家が気にしているため、少なからず市場に影響を与えることもあります。
投資をするうえでは、基本的な企業分析や経済状況への理解が最も大切です。その上で、アノマリーをちょっとした「季節の行事」感覚で把握しておけば、市場観察がより面白くなります。投資初心者のビジネスパーソンも、この知識をきっかけに、米国株投資をより深く楽しんでみてはいかがでしょうか。
文/鈴木林太郎