再利用ペースメーカーは新しいペースメーカーと同程度に安全かつ効果的であり、低・中所得国の多くの人に利用可能な治療選択肢を提供する可能性があるとする研究結果が報告された。この研究を実施した米ミシガン大学医学部循環器科内科部門のThomas Crawford氏は、「米国と異なり、低・中所得国の人は、ペースメーカー治療が利用できなかったり、利用できたとしても費用が高額過ぎたりすることが多い」と指摘。「われわれのMy Heart Your Heart(MHYH)プログラムは、それを変えることを目指している」と話している。この研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16~18日、米シカゴ)で発表された。
再利用ペースメーカーは安全で再利用可能
Crawford氏らは、7カ国の298人の成人を対象にしたランダム化比較試験で、再利用ペースメーカーの機能と安全性を、新しいペースメーカーと比較した。対象者は149人ずつ、新しいペースメーカーを植え込む群(新規ペースメーカー群)と再利用ペースメーカーを植え込む群(再利用ペースメーカー群)にランダムに割り付けられ、植え込みから2週間後と最長90日後に転帰の評価が行われた。
その結果、植え込み部位での感染症が生じ、ペースメーカーの抜去が必要になった患者は5人であり、そのうちの3人は新規ペースメーカー群、2人は再利用ペースメーカー群の患者であったことが明らかになった。また、新規ペースメーカー群の1人に、抗菌薬で対応可能な表在性皮膚感染症が発生した。ペースメーカーの植え込み後にリードの移動または交換手術を必要とした患者は、新規ペースメーカー群で5人、再利用ペースメーカー群で6人だった。ペースメーカーの故障は、いずれの群でも報告されなかった。再利用ペースメーカー群では死亡が3件発生したが、ペースメーカーの植え込みとは無関係だった。新規ペースメーカー群に死亡は発生しなかった。
こうした結果を受けてCrawford氏は、「これらの肯定的な初期の結果により、ペースメーカーの大規模な寄付とその再利用により世界中の人々の命を救うという現実に一歩近付いた」とAHAのニュースリリースの中で述べている。
研究者らは、「今回の3カ月間の結果は希望が持てるものだった。6カ月後と12カ月後の転帰を調査することで、電池の寿命を除けば、再利用ペースメーカーが新品同様に機能するかどうかが明らかになるだろう」と述べている。
米国では、リサイクルされたペースメーカーを植え込むことは違法だが、米食品医薬品局(FDA)は、それを海外に送ることは許可している。2010年、MHYHプログラムは、命を救うための代替治療法がない心臓病患者に対する人道的な使用のために、再利用ペースメーカーの海外への送付を開始した。リサイクルされるペースメーカーは、死亡した患者や、より高度なデバイスへのアップグレードを必要とする患者が使っていたものである。同プログラムでは、電池の寿命が4年以上のペースメーカーが、ミシガン州の研究所で再処理され、コネチカット州で再滅菌される。多くは墓地や火葬場業界にサービスを提供するリサイクル会社が回収したもので、全国の葬儀場からも寄付が寄せられているという。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年11月28日)
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(参考情報)
Press Release
https://newsroom.heart.org/news/reconditioned-pacemakers-worked-as-well-as-new-ones
構成/DIME編集部
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