現代の日本の道路では、そのほとんどがアスファルト舗装され快適に走行できる環境が整っています。しかしバイク乗りたるもの、いつでも冒険心を忘れたくありません。ハラハラドキドキできるツーリングスポットに行きたいな~!
…そんなライダーの希望を叶えてくれる道が、徳島県にあるんです。
『剣山スーパー林道』は、87.7kmという長さを誇る日本最長の林道。延々と続くオフロードを走り続ける贅沢な道のりの魅力、そして気を付けるべきポイントをご紹介します。
日本一の未舗装林道の魅力
剣山スーパー林道は、徳島県勝浦郡上勝町から那賀郡那賀町までを繋ぐ、全長87.7kmの林道。標高600~1000mの山岳地帯を抜ける険しい道のりが続き、国内ではこれ以上ないほどに冒険感を味わえる唯一無二の存在です。
残念ながら冬季(令和6年12月2日~令和7年3月31日)は通行止めですが、春になれば再び冒険心を胸に抱いたライダーたちが走り始めるのです。
さて、そんな剣山スーパー林道の一番の魅力はもちろん、ほぼ全道を占めるオフロード(未舗装路)です。
アスファルト舗装が一般的な日本においては、舗装されていない道が数十キロメートル続くだけでも非常にレア。その中でも、競技車でない二輪が走行可能なフラットダート(凹凸の少ない未舗装路)となると、剣山スーパー林道を除いては滅多にない貴重な場所なのです。
時にはズルッと滑りながらも砂と石をかきながら進む道中。路面には大粒な石やえぐれている箇所も多く、筆者のような初心者には一切油断できない危険な路面です。冷や汗なのか運動をしたからなのか、10kmも走れば全身汗だくになっているのです。
「なんでそんな大変な思いをしながらオフロードを走りたいの?」と聞かれると、なかなか明確な答えは出ませんが…。
ひとつ言えるのは、オンロード(舗装路)と比べてうまく走れないからこそ面白いのだと思います。自分とバイクが一体となって、困難な道に挑む。やりがいや達成感のような、スポーツ的な要素が大きいのかもしれませんね。
剣山スーパー林道が持つ様々な面
87.7kmという長い距離の中では、剣山スーパー林道という1本の道の中でも様々なシチュエーションがあります。例えば東側は比較的路面が安定している快適な区間が多く、キャンプ場があったり景観地があったりと気持ちのいい道が続きます。
中間地点の付近には軽食が楽しめる『ファガスの森 高城』があるため、疲れた心と身体を癒すのにもピッタリ。名物の山菜うどんや鹿肉カレーを食べながら、同じ志を持って訪れた他のライダーと情報交換するのもよいですね。
一方西側では、20kmほども延々と続くダート区間が名物です。
路面に関しても、デコボコが大きかったり洗い越し(道の上を流れる川)があったりとハードな箇所も多めです。全道通して林道内はスマホの電波が圏外になるため、特に初めての方は無理せずゆっくり進んでくださいね。
ちなみに剣山スーパー林道をほぼ全道走破している筆者は、クロスカブ110に乗る一般的なライダー。何も知らずに挑戦したため、それはもう「ヒィ~~っ!」と叫びながらのツーリングとなりました。
剣山スーパー林道の注意ポイント
人里離れたオフロードの道を延々と走るのだから、剣山スーパー林道でのツーリングには危険がたくさん潜んでいます。注意すべきポイントを3点簡単にお伝えします。
1:時間と体力に余裕をもつこと
慣れない方がオフロードを走るには、オンロードの何倍もの時間と体力を消耗します。疲れている中で焦って無理なスピードで走ってしまうと、転倒や、運が悪ければ崖の下に落ちてしまうこともあるかもしれません。
幸い剣山スーパー林道の中には、途中で離脱をできるスポットが何か所か用意されています。
次の予定や夕暮れまでの時間、自分の体力に余裕があるうちに離脱をすることも視野に入れて走りましょう。勇気ある撤退は、失敗ではありません!
2:通行止めをチェックすること
山岳地帯を抜けるため、自然災害などによる通行止めは日常茶飯事。むしろ全道が問題なく開通していることの方が珍しいぐらいです。
多くの場合は、道中に前もって通行止めのお知らせやう回路を案内する看板が立てられています。看板を見かけた際は落ち着いて停車をした上で、ルートを修正しましょう。
最新情報はとくしま林道ナビなどでチェックできるので、あらかじめ確認してお出かけするとスムーズですよ。
3:悪天候時は走らない
先ほども書いた通り、山岳地帯を通る剣山スーパー林道では自然災害が日常茶飯事。雨などが原因で土砂崩れ・落石・倒木といった事故も起きやすくなります。またツーリングの最中は晴れていたとしても、大雨のあとは1週間ほど災害の危険があると言われています。
災害に巻き込まれてしまっては、せっかくのツーリングを楽しめなくなってしまいます。例え遠方からの訪問で滅多に立ち寄れない貴重な機会であったとしても、安全こそが第一。雨天後は剣山スーパー林道を走らない選択を視野に入れましょう。
──こんなにも冒険気分が味わえる道は、日本全国探せども剣山スーパー林道だけ。注意すべきポイントもありますが、ある程度オフロード走行の経験がある方は覗いてみるだけでも面白いかもしれません。
逆に初心者の方は、いきなりの挑戦はオススメできません。まずは出入口付近の一部分をちょこっと走るだけでも十分冒険感が味わえると思いますよ。なるべく1人で行かず、万が一の転倒などに備えて必ず複数人でお出かけしてくださいね。
文/高木はるか
アウトドア系ライター。つよく、しぶとく、たくましくをモットーにバイクとキャンプしてます。 愛車はversys650、クロスカブ110、スーパーカブ90。
高木はるかの記事は下記のサイトから
https://riding-camping-haruka.com
編集/inox.