動画配信も映画も、従来のセオリーではヒットが難しくなっている時代。2024年のヒット作の傾向は、ローカル特性を生かした作品づくりや、これまでにない斬新な形でのプロモートにその要因があった?
教えてくれたのは……
映画ジャーナリスト 立田敦子さん
評論家、モデレーター、コンサルタントなど、多彩な顔を持つ。さまざまな媒体に批評、インタビュー、映画祭レポートなどを寄稿。ゴールデン・グローブ賞インターナショナル投票者。Webメディア『Fan’s Voice』も運営する。
英語でなくてもグローバルなヒットを狙える時代に
サブスク動画から幾多のヒットが生まれた2024年、映画界を含めたヒットの傾向について、映画ジャーナリストの立田敦子さんに分析してもらった。
「まず、話題になった『SHOGUN 将軍』はアメリカ制作ですが、日本人俳優が多く出演し、日本語で演技している。英語作品でなくても世界的に注目され、評価される時代になってきました。これは2021年の韓国ドラマ『イカゲーム』大ヒットの影響が大きかったですね。欧米の作品は飽和状態で、新たな刺激をアジア圏に求めている傾向があり、外国人からすれば日本の歴史物はファンタジーの世界。そこに特化すれば世界規模で数字を残せる可能性があるかも。日本ではNetflix作品が人気ですが、特に今年は『シティーハンター』『忍びの家』『地面師たち』など、やっと配信においても日本コンテンツの存在感を示しつつあります。」
一方で劇場公開される映画についてはこう語る。
「日本の観客は評価や面白さが担保されている〝安全パイ〟を好む傾向があり、トム・クルーズ作品や、シリーズものは安心感があるので特に強い。一方で『侍タイムスリッパー』のように、大手配給会社がインディーズ映画から秀作を見つけ、拡大公開する流れもあります」
「界隈」からヒットを掘り起こそうとするのも、時代を反映していると言えそうだ。
動画配信編
配信後、「週間グローバルTOP10(非英語映画)」(4/22-28)で初登場1位を記録
Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中
80年代の大ヒット漫画を実写化、舞台を令和の新宿に設定した純粋娯楽アクションに。「主演の鈴木亮平が良かったですね。原作のセクハラだらけの表現を抑えて、モダンにアダプテーションする形で上手く作った点も評価できます」(立田さん)
お色気要素もポリコレを意識しマイルドに!
世界92の国と地域でTOP10入りを果たす!!※1
Netflix シリーズ『忍びの家 House of Ninjas』Netflix にて独占配信中
俳優・賀来賢人が自身の原案をデイヴ・ボイル監督に託し主演&プロデュースした忍者ものドラマ。江口洋介ら、豪華俳優が脇を固めた。「世界的にも良い成績を出せた作品です」(立田さん)
日本の「週間TOP10(シリーズ)」6週連続1位
Netflixシリーズ『地面師たち』Netflix にて独占配信中
現実に起きた詐欺事件がモチーフ。犯罪の手口をリアルに見せたことに加え、綾野剛、豊川悦司はじめ役者陣の熱演も話題に。「残虐描写に関しては〝韓国ノワール〟を取り入れていますね」(立田さん)
「Netflix俳優」とも呼ばれるようになったピエール瀧も出演。
3週連続で日本の「週間TOP10(シリーズ)」で1位獲得
Netflixシリーズ『極悪女王』Netflix にて独占配信中
ダンプ松本やクラッシュ・ギャルズなど、80年代の女子プロレスの熱狂を、再現性高く映像化し往年のファンを中心にヒット。「力量のある白石和彌監督の手により、すばらしい出来栄えに」(立田さん)
全世界900万ビューを獲得!
ディズニープラス『SHOGUN 将軍』
「英国の小説が原作のアメリカ制作作品。でも、日本人俳優が多く出演し、主演の真田広之さんがプロデューサーに加わり、正確な日本描写に大きく貢献しました」(立田さん)
ディズニープラスの「スター」で独占配信中
日本発と言われるが、原作は海外!
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※1 Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で1位