生成AIの隆盛やインバウンド需要の拡大など、さまざまな出来事があった2024年も残すところあとわずかとなった。今年はどのようなキーワードが話題となったのだろうか。
PR TIMESは、2024年11月28日(木)、運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2024年1月1日~2024年10月31日に企業から発表したプレスリリース総計32万8938件を対象に、データ分析と総括、業界分析と各種ランキングなどを発表したので、結果をお伝えしよう。
キーワードランキング:「AI」発表が1万件超え、「生成AI」も9位に上昇
「PR TIMES」ではプレスリリース発表の際に、発表企業がプレスリリース内容に関係するキーワードを最大10個登録することができる。2024年1~10月に発表された総計32万8938件のプレスリリースのキーワード登録総数は39万6227種に上った。
総合ランキングでは2024年の企業活動の潮流を、そして月別ランキング推移からは企業動向の変遷と流行の兆しをキーワードを通して分析した。
2024年総合ランキングでは、上期に続き、「イベント」が1位、「DX」が2位、「新商品」が3位、4位に「AI」と続いた。
「AI」は、過去を振り返っても2019年2788件、2020年3745件、2021年4897件、2022年4896件、2023年9335件、2024年1万393件と初めて1万件を超えたことになる。
そして、2023年以降「AI」と合わせて伸びてきた「生成AI」が遂に総合でTOP10に入るまでとなった。
2023年と比較すると、1位の「イベント」も2023年は1万4394件、2024年は1万4214件と件数自体は横ばい。TOP10のキーワードにおいて単純増加したのは「AI」と「生成AI」の2つのみで、“AI”の躍進を改めて感じる結果となった。
また、本ランキングの発表を開始した2020年以降TOP5をキープしているキーワードは、「新商品」(2020年:4位、2021年:2位、2022年:4位、2023年:3位、2024年:3位)と「キャンペーン」(2020年:3位、2021年:4位、2022年:5位、2023年:5位、2024年:5位)で、この2つのキーワードは企業のプレスリリース配信におけるド定番と言えそうだ。
2024年のキーワードランキングを月別に見ると、総合の結果通りに1位を「イベント」が独占していた。2位3位は「DX」と「新商品」がほぼ独占状態であるものの、5,6,10月の「AI」のほか、7月には「夏休み」が3位にランクインしている。
どの月も上位に入るのは総合ランキングの結果と同じキーワードが並ぶ中、1月の「バレンタイン」と7月の「夏休み」は、総合でもそれぞれ「バレンタイン」:149位(1115件)、「夏休み」:36位(2839件)にランクインしており、季節ワードの中でも特に使用されていることが判明。
急上昇キーワードランキング:生成AIが前年比2.9倍で1位
急上昇キーワードランキングでは、2023年と2024年のそれぞれ同期間(1月1日~10月31日)におけるキーワードが使用されたプレスリリースの件数の増加数が多い順にランキング化した。
1位は2024年総合ランキングでもTOP10入りとなった「生成AI」で、3695件増加。2位の「能登半島地震」と10位「石川県」、19位「地震」はいずれも1月に発生した地震によるもので、企業による復興支援や寄付、その後も地元企業の復旧報告など発表が続いた。
また、4位「インバウンド」や6位「観光」7位「ホテル」など、観光業の盛り上がりをこのランキングからも感じることができる。
一方で、12位「2024年問題」15位「人手不足」16位「業務効率化」といった日本社会がこれから迎える課題に向けた解決サービスを提供する企業の発表も増えてきている。
注目キーワード:今年増えたキーワード、来年増えそうなキーワードは?
「生成AI」
2023年:1972件→2024年:5667件 +3695件(187.4%増)
急上昇キーワードランキングでも1位となった通り、「生成AI」が2024年に最も企業発表で使われるようになったキーワードだ。
2023年に爆発的に増加したAI関連のサービスの中でも、生成AIを活用した技術は多く、企業向けサービスに活用されるケースはもちろん、生活者が直接生成AIを利用できるサービスに関する発表も増えており、馴染み深いキーワードとなった。
さらに今年は、大規模言語モデルを指す「LLM」(2023年:515件→2024年:760件)など、関連する技術がキーワードでも使用され始めており、生成AIの中でも外部情報の検索を組み合わせて回答精度を向上させる「RAG」が2023年2件から2024年228件と急増している。
「本社移転」
2023年:62件→2024年:140件 +78件(125.8%増)
コロナ禍の始まりにあたる2020年に急減して以降、2021年~2023年は増えつつも横ばいにあった「本社移転」のプレスリリースが2024年には前年比約2.3倍と急増していた。
発表内容を見ると、リアル回帰がビジネスにも到来しており、リモート勤務を減らしたり原則出社方針を立てたりと、オフィス拡大などを目的とした本社移転が実施されるケースが増えている。
加えて、本社をはじめとするオフィスが会社の理念や考えを投影することも多く、本社移転をPRの機会としてプレスリリース発表されることが増えていることも影響していると考えられる。
「猛暑」
2023年に193件であった「猛暑」は、2024年に346件と約1.8倍に増えている。昨年に続き、猛暑日が続いた2024年は企業発表でも「猛暑」が使われることが増加。
月別に見ると、4月頃から徐々に増え始め、最も多かったのは7月の126件であった。夏のグルメやレジャーに関する情報発信に加えて、今年は2023年からの猛暑への危機感を受けてか夏本番を前に、対策グッズなどの新商品発売に関する発表も増えていた。
「ショートドラマ」
「ショートドラマ」は2024年には昨年の約3.8倍にもなる169件のプレスリリースで使用された。
SNSにおける縦型動画の流行を受けて増えているショートドラマだが、エンタメコンテンツとして発信されるものに限らず、多くの企業が自社のマーケティングに活用するケースがプレスリリースの増加からも読み取れる。
ショートドラマで企業のPRを請け負う企業設立やショートドラマを表彰するアワードの新設など、来年以降も企業発表に登場する機会が増えそうだ。
業界カテゴリ別分析:業界分けで見えてくる流行の兆し
プレスリリース配信時に選択するビジネスカテゴリを元に業界カテゴリ別の企業発表トレンドをランキングにした。
「美容・健康」カテゴリでは、TOP10には「スキンケア」や「ヘルスケア」など同カテゴリでは王道のようなキーワードが並んだ。
一方で、14位「韓国コスメ」といった流行に沿ったランクインがあったり、15位「ジム」16位「筋トレ」19位「睡眠」20位「健康経営」などは2023年にはTOP20外だったキーワードがランクインするなど、例年大きな変動の少ない業界別ランキングにおいては、流行に敏感な同カテゴリらしい結果となった。
「交通・運輸・輸送」カテゴリでは、いよいよ当該年となった「2024年問題」が2位となり、関連する「タクシー」は2023年47位から12位と大幅に順位が上がっている。
また、19位「自動運転」や20位「脱炭素」といった新しい技術や関心ごとに関するキーワードも順位を上げていた。
調査概要
対象期間:2024年1月1日~2024年10月31日
集計対象:PR TIMESプレスリリース32万8938件
発表項目:2024年総合&月別キーワードランキング、注目キーワード、業界別分析 等
発表日:2024年11月28日
発表者:株式会社PR TIMES
関連情報
https://prtimes.jp/
構成/Ara