強盗殺人の実行犯や振り込め詐欺の電話役などの犯罪メンバーを募る“闇バイト”問題が深刻化している。
どうすれば闇バイト問題は沈静化できるのだろうか。また、自身や身の回りの人が、闇バイトの求人に応募してしまい、個人情報が抜かれたり、犯罪に加担したりと被害に遭わないためにはどのような策が打てるのか、本記事でまとめた。
“闇バイト”の求人と企業声明がSNSでトレンド入りして話題に
2024年11月、日雇い・即払いの求人アプリ「タイミー」内に闇バイトを匂わせる求人が上がっていると、X(旧Twitter)のユーザーが指摘し、また、タイミー側の防衛策が不十分ではないかと疑問視するコメントも相次いだ。
<タイミーの闇バイト対策についてお知らせ>
タイミーでは、求人を掲載する事業者のチェックと、求人内容のチェックを中心に闇バイト対策を徹底しています。
求人内容は、勤務日までに全件チェックする体制を構築しており、怪しい求人は掲載を止める措置を講じています。…— タイミー (@Timee_official) November 8, 2024
引用:https://twitter.com/Timee_official/status/1854685565809307890
一方、闇バイトの求人を行なう側に対しても、熊本県警が、同求人を取りまとめる暴力団員を逮捕し事務所を捜索したり、11月に厚生労働省が雇用の仲介事業者に対して闇バイト対策を講ずるよう通知したり、と行政が対策に乗り出している。
タイミー上で深夜の猫探しと称して、猫=高級車の意で、盗難対象をさがす求人や、入浴介助と称して性的サービスを求める求人など闇バイトを疑う求人掲載があった。同社は全件チェックする体制であると投稿しているが、その実効性に疑問の声が上がっている。
即日の仕事がすぐに決まるプラットフォームでのチェック体制は限界か?
前出のタイミーでは、X上で“求人内容は、勤務日までに全件チェックする体制を構築しており、怪しい求人は掲載を止める措置を講じています。(中略) 現場で違和感を感じたらすぐに勤務を終了し、通報ボタンでお知らせください”と、闇バイト求人の防衛策について説明している。
求人掲出前にチェックするのは難しいのだろうか。
「受け子」「出し子」「叩き」といった、闇バイトに直接つながるキーワードであれば、事前に弾けるが、求人原稿が巧妙化しているとその難易度は高くなる。
タイミーのように、人手が足りない時に短時間で労働力を調達する仕組みの場合、求人の事前チェックをする時間も、求人を出してから労働者が見つかるまでの時間も少ない。
また、タイミーに類似する人材ビジネス関係者の話では、“AIを活用して求人原稿のチェックをしたとしても、正規の求人と見分けがつかない闇バイト求人は弾けない。人間が手動で原稿チェックをしたとしても、すり抜けるものはすり抜けてしまう。掲載後にすぐ労働者が決まってしまうと、チェックが間に合わない恐れもある。
闇バイトは報酬が高額なので、給与額でチェックする手も考えられるが、正規バイトとの金額の境界が曖昧だと見分けるのは難しい”と、完全に闇バイトを排除できないのが実情だ。
そうなると、タイミーのような求人プラットフォームの必要性にすら疑問を感じるだろうが、働き方の多様化や人出不足の深刻化といった社会課題の解決に役立っている面もある。プラットフォーム事業者の闇バイト対策が実効的なものにできるかどうかが、その存続を左右しそうだ。
対処療法的に、闇バイト求人を出す組織の動機を削ぐのはアリ
闇バイト求人の掲出を抑止する方法は、求人原稿のチェック強化に加えて、求人企業の本人確認を強化する手もある。
例えば、求人企業の社長やその企業の株主の身元が確認できる免許証やマイナンバーカードの画像を受け入れ、また企業名や代表者名が反社会的勢力のリストに一致しないかの確認を取る。企業の登記簿謄本に記載のある住所が実在するものか、また実在していてもレンタルオフィスやバーチャルオフィスが本店だった場合、営業実体があるか。取引開始時に、そういった企業の情報をつぶさに確認しておくことが、抑止力になるといえる。
闇バイト求人者からすれば、情報確認がされるほど、闇バイト求人掲載がバレた際に警察の捜査がしやすくなるので、「足が付きやすい」としてそのプラットフォームを使う動機が減るはずだ。
実際に、タイミーの競合であるメルカリハロでは、「あんぜんの取り組み」ページで事業者に対して“契約申し込みをされたパートナーに対して、反社会的勢力排除の確認・スクリーニングや事業内容の審査を行い、審査を通過したパートナーのみが求人を掲載することができます。”としている。
詳しい審査内容は非開示だが、同グループでは、金融決済サービス「メルペイ」を手掛けているので、金融業に対して求められる厳しい本人確認や取引監視ルールである「犯罪収益移転防止法」水準のチェックが行われている。
■金融機関での本人確認の例
引用元:全国銀行協会
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)では、法人の場合、名称、事業内容、取引目的などを銀行に定時して確認を受けないと取引できない。
求人掲載と排除のイタチごっこが続くのは自明。特に若い世代への防衛策を厚く
仮にタイミーのような求人プラットフォームの規制が強化されたところで、SNSやネット掲示板など、監視の目が届きにくい場所での闇バイト求人掲出は続くので、根絶は難しいし、闇バイトは我々の身近に存在する脅威であるとも認識しておきたい。
東京都が設置している特殊詐欺加害防止特設サイトでは、闇バイトかどうか見分けるクイズが3問出題されるようになっている。
2023年12月に行った調査結果では、“全問正解した高校生は23%にしか満たない”とあり、情報リテラシー不足が浮き彫りになった。2024年12月現在で新たな調査結果は確認できないが、連日のニュース報道などによりリテラシーが向上していると願いたい。
求人内容に対し、以下のような条件やキーワードが含まれていたら、闇バイトではないか?と疑いの目を持つようにしたい。
■闇バイトを疑うべき条件・キーワード
・報酬が数万円と高額に見え、時給の記載がない
・SNSのDMで求人応募の連絡をするよう書かれている
・「受け子」「出し子」「UD」「運び」「叩き」「銀行口座売買」など振り込め詐欺、強盗、運び屋等の示唆
・テレグラム、シグナル、WeChatなどのアプリのアカウントを求めてくる
特に20代以下の子供をもつ@DIMEの読者の皆さんは、きちんと本人と対話し、怪しいそうな求人を見かけたら、相談するようにと教育してもらいたい。
文/久我吉史
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