酒税法改正で新ジャンル離れが進む中、値頃感のあるビールやチューハイが元気だ。ビールの新ブランドや、食事に合う〝甘くない〟缶チューハイなど、消費者のニーズに合わせた商品開発に、各社がしのぎを削った。
教えてくれたのは……
食品産業新聞社 秋田祐輔さん
食品に特化した専門紙・食品産業新聞において、和酒担当記者として全国を飛び回る。前職では日本酒の蔵元で酒造りに携わるという異色の経歴を持ち、酒造業界にも精通する。
http://www.ssnp.co.jp
新ジャンルからの流入客をいかに巻き込むか
今年の酒類市場は、2023年10月の酒税法改正でいわゆる〝新ジャンル〟と言われるビール系飲料が値上がりしたことにより、その客層がどこに流れるかが、ヒットのひとつのカギになった。
「何を選ぶか選択を迫られた人が多い中で、ビールや缶チューハイの新ブランドや、企画性のある商品に注目が集まりました。中でも、キリンビール『晴れ風』のヒットは印象的。人気タレントや俳優の広告起用や、ドネーションプロジェクト〝晴れ風ACTION〟など、積極的な戦略が功を奏しました」
そう語るのは、食品産業新聞 和酒担当記者・秋田祐輔さん。缶チューハイは、無糖やお茶割りなど、甘くないお酒が人気だと言う。
「〝食事に合う〟という点が選ばれている理由。ジン飲料も昨年に引き続き好調です」(秋田さん)
SDGsを意識した商品や健康食品とコラボしたノンアルコール飲料なども順調な売り上げを記録。価格優位が進む中、各社、消費者を動かす企画性で勝負した。
ビール市場を活性化する大型新製品が話題に!【ビール】
17年ぶりの新・ビール誕生で年間目標の7割を3か月でクリア
キリンビール『晴れ風』オープン価格(実勢価格225円/350ml)
キリン17年ぶりの新・スタンダードビール。ビールとしての飲みごたえと飲みやすさを両立させたバランスの良い味わいが、若年層やビール離脱者層まで支持を拡大。「〝晴れ風ACTION〟は、約1か月半で目標の4000万円を達成しました」(広報担当・小鮒直人さん)
売り上げの一部を使って、全国の季節の風物詩を保全・継承するための取り組みを支援する〝晴れ風ACTION〟。春は桜、夏は花火で展開。
初動出荷量はシリーズ4商品、平均の約3割増
シリーズ最高売り上げ更新中
サッポロビール『ヱビス クリエイティブブリュー 燻』284円(350ml)
130年以上受け継がれるヱビスの知見や技術をもとに、若手醸造家が作る『CREATIVE BREW』シリーズ第5弾。「ブナ材で燻した麦芽を一部採用、高温短時間仕込とヱビス酵母の掛け合わせによるスモーキーで香ばしい味わいが人気です」(広報担当)
「おいしいノンアルコール」でリピーターを獲得【ノンアル】
本格ビールの味と飲みごたえで、年間の販売計画を3か月で達成
アサヒビール『アサヒゼロ』オープン価格(実勢価格181円/350ml)
ビール醸造後にアルコール分を完全に取り除く「脱アルコール製法」により、ビールに近い味わいと飲みごたえを実現。「自社ビールとの飲み比べイベントで、延べ60万人以上に試飲してもらい、認知を高めました」(広報担当・佐野公美さん)
ブランドの信頼感と味の満足度で年間販売目標を約5か月でクリア
メルシャン×ファンケル『カロリミットノンアルコール 梅酒テイスト』
オープン価格(実勢価格209円/290ml)
ファンケルの『カロリミット』と共同開発。糖と脂肪の吸収抑制に働く、難消化性デキストリンを配合した、糖類・カロリーゼロのノンアル飲料。完熟梅を思わせるフルーティな味わいも受けた。