美容医療の敷居は下がってきてはいるものの、物価高でなかなか投資しにくいこともある。そんな状況下で市販コスメ界では、美容医療のマイクロニードル施術に似せた「マイクロニードルコスメ」というジャンルがじわじわと浸透してきている。
そもそもマイクロニードル施術とは、皮膚に微小な傷をつけ、孔をあけることで、「創傷治癒」という自然な治癒プロセスを刺激する施術や手法全般を指す。この過程で、肌にあるコラーゲンやエラスチンの生成を促進し、シワやたるみの改善、毛穴の縮小など多様な美肌効果を期待するというものだ。
美容医療のマイクロニードル施術は麻酔をして行う針治療だが、マイクロニードルコスメは麻酔不要で痛みもなし。美容成分がぐんぐん入っていくことで、美容医療を受けている気になる実感が魅力だという。
今回は美容皮膚科医の横山歩依里(あいり)氏に、マイクロニードル施術の需要や市販のマイクロニードルコスメの特徴、注意点について話を聞いた。
痛みへの抵抗が薄れ、マイクロニードル施術は引き続き活況
横山 歩依里氏
エルムクリニック麻布院 院長 美容皮膚科医
広島大学医学部医学科卒業。JCHO東京新宿メディカルセンター及び関連病院(国立国際医療研究センター病院、東京山手メディカルセンター)にて勤務。皮膚科・形成外科研修。2022年7月にエルムクリニック麻布院を開院。美容皮膚科学会所属、ジュビダームビスタ認定医、ボトックスビスタ認定医、日本化粧品検定1級。
横山氏の美容皮膚科、エルムクリニック麻布院では、マイクロニードル施術も行っている。近年の需要はどうなっているのだろうか?
「当院のマイクロニードル施術はポテンツァとダーマペンと呼ばれるもので、どちらも現在ではとてもポピュラーな治療です。これらはマイクロニードリングデバイスの名前で、肌の再生を促進するために微小な針を使用します。いずれも施術前に麻酔クリームを塗布し、施術中の痛みを軽減します。
当院で推奨しているポテンツァは、ダウンタイムを極力抑えてニキビ跡や毛穴の治療をしたい方にとてもニーズがあります。他にも、モードや導入薬剤を使い分けて、赤みの治療やハリ出しの効果を出すこともできます」
マイクロニードル施術は、麻酔は施すものの、多少の痛みがあることが予想される。体感のレベルは人それぞれではあるが、イメージ的にハードルが少し高いのではないか。
「より効果の強い表面麻酔が使用したり、笑気麻酔を併用したりすれば、より痛みは抑えることができます。また当院では、看護師技術の向上によりスピーディーに施術を行えるようになったり、麻酔を部分的にはがしながら施術を行うような工夫をしたりすることで、極力痛みは抑えられています。今のところ、痛みで施術を中止したことはありません。
美容医療が広まっていることもあり、痛みに対する抵抗は低くなってきている印象です」
ぞくぞくと誕生するマイクロニードルコスメ。種類と特徴は?
そして近年、ぞくぞくと生まれているのが、肌に細かい針を刺したり、肌に当てたりして美容液などを届ける原理のコスメ、マイクロニードルコスメだ。
今市場に出ているものは以下のような種類があるという。
・注射器状のスティックの先についた無数のマイクロニードルを肌に押し当て、角層まで刺さったマイクロニードルから美容成分を注入するもの
・パッチ状シートに成分を針状に固形化した突起が剣山のようにたくさんついているもの
・塗布後に溶ける美容成分を小さな針状に固形化し、美容液などに配合したもの
・化粧水や乳液などに小さな針状のパウダーを混ぜたもの
「市販のマイクロニードルコスメはクリニックの施術と違い、真皮の上の角層のところまでニードルが到達するものになります。あくまで市販で売り出せる薬機法に違反しないレベルのものなので、実際に表皮を超えて2mm以上針を刺せるクリニック施術と比べると、どうしても一回の効果は劣ります。
しかしメリットとしては、容易に手に入ることや値段的にも手軽に試せること、痛みを感じず済むことなどが考えられます。また月に一度のクリニックでの施術より毎日のスキンケアのほうが効果が出る場合も大いにあります。肌状態的にクリニック施術は向いておらず、マイクロニードルコスメが著効する場合もあります」
市販のマイクロニードルコスメを選ぶときの注意点
市販のマイクロニードルコスメを利用する際、注意点はあるのだろうか?
「家庭で手軽に使えるレベルではありますが、他のコスメと同様に肌状態によっては刺激が強すぎる場合があるので、注意すべきでしょう。一度パッチテストをしてみると安心です。
一口にマイクロニードルコスメといってもさまざまな製品があり良し悪しがあるので、配合成分や針の数・長さ等比較してみると良いでしょう」
マイクロニードルコスメは、すでに活用しているツウの女性もいる一方で、まだまだ認知度は低く、ハードルも少し高い。今後、美容施術がさらに当たり前になるにつれ、針コスメがより増えていくのかもしれない。
取材・文/石原亜香利
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