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親が子どもに対して感じるイライラの正体と対処法

2024.11.29

「子どもの行動に対してイライラする」…こんな経験はありませんか?お子様をお持ちの方の多くは、このような感情を一度でも抱いたことがあるのではないでしょうか。さて、その「イライラ」をどのように処理しましょうか。子どもに怒りますか、それともぐっとこらえて自分の中で飲み込みますか?ここで、「子どもに怒る」を選択する人は一定数いらっしゃると思いますが、実は、怒るだけではその「イライラ」は解消されないことがあります。それは、その「イライラ」の本当の正体が分かっていないことが原因です。では、「イライラ」の本当の正体とは何なのか、そしてそれに対する適切な対処とは?こちらについて説明してみようと思います。

「イライラ」の正体を理解する

 たとえば、子どもが親の言うことを聞かなかったとしましょう。そこで、親は「子どもがいうことを聞かなかったこと」に対して怒ります。しかし、親が持っている感情は本当に「怒り」なのでしょうか?結論からいうと、それは「怒り」ではなく、実は「悲しみ」や、まだ起きてない恐怖からくる「不安」である場合があります。子どもが自分の言うことを聞いてくれない悲しみ、子どもが言うことを聞かないままだったらどうしようという不安を、「怒り」という代わりの感情(これを「代理感情」と言います)で表現しているに過ぎないのです。

「悲しみ」やまだ起きてない恐怖からくる「不安」を感じた時に、「怒り」という代理感情を表現しても、それらの感情は消化されません。「悲しい」感情は、「悲しい」と表現することによって、消化されます。悲しさが溜まったときに、一気に泣くと心がスッとした経験がある人もいるのではないでしょうか。それは、心に溜め込んだ感情に対し、素直に感情の表現をしたからなのです。それでは、なぜ「子どもが言うことを聞かない」ときに「悲しみ」や「不安」が湧いてくるのでしょうか?

「ビリーフ」の存在を理解する

 人間は幼少期から成長する過程において、「これは、こういうものだ」「これは、こうあるべきだ」という信念や思い込みである「ビリーフ」というものが形成されます。「論理情動行動療法」で知られるアルバート・エリスは、「ビリーフ」は人間の感情や行動の主要な決定因子であり、特に「非合理的なビリーフ」が心理的な問題を引き起こすとして「ビリーフ」の役割を強調しました。(アルバート・エリス:1913年生まれ。ニューヨーク州立大学卒。コロンビア大学で臨床心理学の博士号を取得。論理療法(REBT)の創設者。アメリカの臨床心理学者のあいだで、精神分析のシグムント・フロイト、非指示療法のカール・ロジャーズと並ぶ、三大心理療法家の一人として、高く評価されている。アルバート・エリス研究所(ニューヨーク市)所長を経て、2007年に死去。※注)

たとえば、「子どもは親の言うことに従うべきだ」「やるべきことはやるのが当たり前だ」などということを信じている人は一定数いらっしゃると思いますが、これも幼少期からの成長の過程で身についた考え、すなわち「ビリーフ」なのです。「ビリーフ」を持っていることが悪いだとか、そういったことではありません。まずは、自分の中には多くの「ビリーフ」が存在しているということを認識することが大事なのです。

 そして、この「ビリーフ」は、自分に起こった出来事に対して、感情を生み出すフィルターの役割をします。たとえば、他人に褒められたとしましょう。このとき、「自分は褒められるだけの力量がある」というフィルター(=ビリーフ)を持っている人は、「嬉しいという感情」を生み出します。しかし、「自分は褒められるに値しない人間だ」というフィルターを持っている人は、「本当のことを言っているのか、素直に喜べない懐疑的な感情」、居心地の悪さを生み出します。このように、個々人がどのような「ビリーフ」を持っているかによって、生み出される感情が変わってくるのです。

 ここで、もし親が「子どもは親の言うことに従うべきだ」というビリーフを持っていた場合、子どもが言うことを聞かなかったときに「悲しみ」や「不安」を感じることがあります。これに対して、まったく悲しみや不安を感じない親もいます。それは、その親が幼少期より育ってくる過程で「子どもとは、そもそも言うことを聞かないものだ」というビリーフを持つようになったから、ということが多いです。どのようなビリーフを持っているかによって、子どもに対して湧いてくる感情も違えば、そこから派生する子どもへの接し方も変わってくるのです。

自分の「ビリーフ」に対して処置を施す

 親がどのような感情で物事を子どもに伝えるのか、は非常に重要です。子どもは、親から言葉と感情を受け取ったとき、感情のほうを強く受け取る傾向にあるからです。親から発せられた言葉がネガティブなものであっても、笑顔で話せば、子どもは笑顔の方をより強く受け取ります。よって、親が自分自身が持っている「ビリーフ」を理解し、自分が持っている感情は「本当はどのような感情なのか」を正しく理解することが大事です。

 しかし、中には根強く固まってしまった「ビリーフ」のせいで、正しい感情のコントロールがまったくうまくいかないといった人も中にはいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、自身の「ビリーフ」を書き換えるなどの処置をしてくれるようなセラピストにお世話になった方がいいこともあります。

 子どもにイライラしたとき、それは子どもに対する「悲しみ」や「不安」の代理感情なのかもしれません。また、その「悲しみ」や「不安」を生むのは、自分自身の中の「ビリーフ」と呼ばれるフィルターであることが多いです。ですので、自分の中に存在する「ビリーフ」を適切に理解し、適切に処置することによって、子どもに対して”適切な感情で”接することができるようになるのです。※注)アルバート・エリス著『現実は厳しい でも幸せにはなれる』(文響社)より引用。

文/井上顕滋(いのうえ・けんじ)

1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行い、「1年間で離職率8分の1」「2年間で経常利益26.8倍」「営業成約率平均31.9%アップ」などの実績をもつ。エグゼクティブコーチ、メンタルトレーナーとしてオリンピック出場の日本代表選手や世界一に輝いたプロスポーツ選手のサポートも行っている。自らも経営者として30年以上の部下育成の経験を持つ。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会(JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。

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