命を脅かす危険も！外科手術を受けた患者の3分の1に「有害事象」が発生

2024.12.01

外科手術を受けた入院患者の38％に有害事象が生じており、そのような有害事象の38％は、重篤、生命を脅かす、あるいは致命的なものであったが、多くは回避可能なものでもあったことが、新たな研究で明らかにされた。クロード・ベルナール・リヨン大学（フランス）公衆衛生学教授のAntoine Duclos氏らによるこの研究の詳細は、「The BMJ」に11月13日掲載された。Duclos氏らは、「現代の医療では有害事象が依然として蔓延しており、入院中の患者に重大かつ回避可能な害をもたらしている」と結論付けている。

外科手術を受けた患者の3分の1に有害事象が発生か

この研究でDuclos氏らは、2018年に米マサチューセッツ州の11カ所の病院に手術入院した患者から抽出した1,009人を対象に、周術期ケアに関連して生じた有害事象の発生頻度や重症度、回避可能性について検討した。

有害事象の中でも、深刻な害を引き起こし、大規模な介入や回復期間の延長が必要となる場合（深刻な有害事象）、生命を脅かすイベントを伴う場合（生命を脅かす有害事象）、または致命的なアウトカムにつながる場合（致命的な有害事象）を「重大（major）」と見なした。

その結果、対象者の38.0％（383人）に1件以上の有害事象（計593件）が生じており、15.9％（160人）は「重大」な有害事象を経験していたことが明らかになった。また、593件の有害事象のうち353件（59.5％）は潜在的に回避可能なものであり、123件（20.7％）はおそらく/確実に回避可能なものだった。重大な有害事象は225件（全有害事象の38.3％、深刻な有害事象185件、生命を脅かす有害事象34件、致命的な有害事象6件）で、このうちの107件（47.6％）は潜在的に回避可能、35件（15.6％）はおそらく/確実に回避可能だったと考えられた。有害事象の種類は、外科手術に関連したものが292件で最も多く、次いで、薬物有害事象（158件）、医療関連感染症（74件）、転倒や褥瘡などの患者のケアに関連する問題（66件）が続いた。有害事象が生じた場所は、一般治療室での289件が最も多く、次いで、手術室（155件）、集中治療室（77件）などが続いた。

本論文の付随論評を執筆した、医療過誤に反対する母親の会の会長を務めるHelen Haskell氏は、「このような回避可能な有害事象が発生する原因としては、医師のバーンアウト（燃え尽き症候群）、看護師不足、健康問題を検出し予防できるテクノロジーの活用の失敗などが考えられる。しかし、患者や家族の協力を得てその原因を解明しようとする動きがほとんど進展していないため、こうした事態が起こり続けている」と指摘している。その上で同氏は、「患者の安全性の向上に真に関心があるならば、患者と家族が、受けるケアに関する説明の正確さについて意見を述べ、解決策を見つける活動に参加できるようにする必要がある」と話している。（HealthDay News 2024年11月14日）

（参考情報）
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/387/bmj-2024-080480

Editorial
https://www.bmj.com/content/387/bmj.q2437

Press Release
https://bmjgroup.com/adverse-events-affect-over-1-in-3-surgery-patients-us-study-finds/

構成／DIME編集部

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