5. 「103万円の壁」が引き上げられるとどうなる?
基礎控除+給与所得控除の「103万円の壁」が引き上げられた場合、会社の従業員(正社員・契約社員・派遣社員など)、会社役員、公務員、パート、アルバイトなど、幅広い給与所得者にとって減税となります。
累進課税との関係で、減税の効果は高所得者の方が低所得者よりも大きくなります。
扶養控除の「103万円の壁」が引き上げられたら、勤労意欲のある学生アルバイトなどにとっては、親の扶養から外れる心配が少なくなるため、シフトを増やしてより多くの収入を稼ぎやすくなるでしょう。
配偶者控除の「103万円の壁」を引き上げる場合は、配偶者特別控除についても見直すと思われます。
配偶者特別控除の見直しの内容によっては、衆院選をきっかけとする政策の周知効果も相まって、パートやアルバイトとして働く主婦などの「働き控え」を軽減する効果が期待できます。
「103万円の壁」の引き上げはいずれも減税であるため、国民の所得が変わらないと仮定すると、国の税収は減ります。住民税も連動して減税されるならば、都道府県や市町村の税収も減ることになります。
ただし、減税によってプラスの経済効果が生じ、国民の所得が増えれば、税収の減少は十分にカバーできるとする見解もあります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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