2024年10月1日に、改正景品表示法が施行されました。
今回の景品表示法改正では、特に故意による「優良誤認表示」と「有利誤認表示」を直ちに刑事罰の対象とする変更(=直罰化)が注目されています。
本記事では、優良誤認表示と有利誤認表示の定義と具体例、景品表示法改正によって何が変わったのかなどを解説します。
1. 優良誤認表示・有利誤認表示とは
景品表示法では、事業者に対して、一般消費者を誤解させるような不当表示を禁止しています。
不当表示の中でも、商品やサービスの品質等に関するものは「優良誤認表示」、価格等に関するものは「有利誤認表示」と呼ばれています。
1-1. 優良誤認表示の定義・具体例
「優良誤認表示」とは、商品やサービスの品質、規格その他の内容に関する不当表示です。
事業者は、自己の供給する商品・サービスの品質、規格その他の内容について、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある以下の表示をしてはなりません(景品表示法5条1号)。
(1)実際のものよりも著しく優良であると示す表示
(2)事実に相違して、競合事業者が販売するものよりも著しく優良であると示す表示
たとえば、以下のような表示は優良誤認表示に当たると考えられます。
優良誤認表示の具体例
「使用者の9割以上が効果を実感しています!」
→アンケート結果については、質問内容・対象者・人数などを適切に示していなければ、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
「日本一の最高品質を誇る商品です!」
→品質の感じ方は人によって異なり、日本一であることの立証は困難であるため、優良誤認表示に該当するおそれがあります。
1-2. 有利誤認表示の定義・具体例
「有利誤認表示」とは、商品やサービスの価格その他の取引条件に関する不当表示です。
事業者は、自己の供給する商品・サービスの価格その他の取引条件について、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある以下の表示をしてはなりません(景品表示法5条2号)。
(1)実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
(2)競合事業者が販売するものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
たとえば、以下のような表示は有利誤認表示に当たると考えられます。
有利誤認表示の具体例
「通常価格10万円から8割引きの2万円!」
→最近の相当期間にわたって通常価格(10万円)で販売したことがなければ、有利誤認表示に該当するおそれがあります。
「いつでも解約できます!」
→違約金などの解約条件が設けられているにもかかわらず、それを伝えずにいつでも解約できると表示している場合は、有利誤認表示に該当するおそれがあります。
2. 2024年10月施行|景品表示改正法により、優良誤認表示・有利誤認表示が直罰化
2024年10月1日に施行された景品表示法改正により、優良誤認表示と有利誤認表示に対する罰則が強化されました。
2-1. 改正前|措置命令違反が刑事罰の対象
改正法の施行前は、優良誤認表示や有利誤認表示をしただけでは、直ちに刑事罰の対象にはなりませんでした。
優良誤認表示または有利誤認表示をした事業者が、消費者庁長官による措置命令を受けた後、さらに措置命令に違反した場合に、初めて刑事罰の対象とされていました。
2-2. 改正後|故意による優良誤認表示・有利誤認表示は、直ちに刑事罰の対象
2024年10月1日以降は、故意に優良誤認表示または有利誤認表示をした者は、措置命令を経ずに「100万円以下の罰金」に処すものとされました(=直罰化。景品表示法48条)。
また、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、法人の業務または財産に関して故意に優良誤認表示または有利誤認表示をした場合には、両罰規定によって法人に対しても「100万円以下の罰金」が科されます(同法49条1項2号)。
なお、措置命令違反に対しては従来どおり、違反者に対して「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」(同法46条)、両罰規定により法人に対しても「3億円以下の罰金」(同法49条1項1号)が科されます。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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