中学入試熱が過熱する中、AI研究者・岩波邦明医師が執筆した学童向け暗算ドリル『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』(小学館)がひと際注目を集めている。そんな話題のAI研究者・岩波医師が、新たな学童向けドリル『AI脳が身につく最強図形ドリル』(小学館)を2024年12月4日に出版する。
岩波邦明さん
医師。AI研究者。現在、スタンフォード大学大学院コースでAIを専攻。1987年生まれ。東京大学医学部卒。MENSA会員。在学中に暗算法「岩波メソッド ゴースト暗算」を開発。著書は66万部を超えるベストセラーに。AI資格「Stanford AI Graduate & Professional Certificate」を取得。
岩波医師の実体験をもとに‶計算問題を介さずに理数センスを高める〟という目からウロコな本書の魅力に迫ったインタビュー特集第1弾に続く今回のテーマは‶AI脳〟。図形センスとAI脳の相関関係を紐解く。
〝AI脳〟とはAIを上手に使いこなすための力
――タイトルにある〝AI脳〟とは何でしょうか?
僕は‶AI脳〟を‶AIを使いこなすための力・センス〟と定義しています。スタンフォードで最先端のAIを学ぶにつれ、AI時代到来の足音を強く感じるようになりました。10年後、20年後になるかもしれませんが、今の子どもたちが大人になり、AIと接することが当たり前の社会で活躍するためには、AIをきちんと使いこなす力を備えていることが重要になります。AIと一言でいっても、特徴・特色は様々です。今後はこれまで以上に多種多様なAIが登場するでしょう。そういったときに、<できること><できないこと>をある程度理解できなければ、AIの性能を十全に活かすことはできませんよね。
では、どうやってAIのできる・できないを見極めるのか? AIのことを詳しく知らなくても、それがとても複雑な仕組みで動いていることは想像できますよね。例えば、高校の数学分野でいうところの微分、確率、ベクトルが生成AI開発の根幹部を支えています。つまり、その仕組みは数式で表すことができるのですが、かといって数式だけを見せて仕組みを理解しろというのはあまりにも酷です。スタンフォード大生の場合はどうでしょうか? 実はスタンフォード大の教授たちも数式だけを抽出して教鞭をとることはしません。AIの仕組みをシンプルに図化した資料を使って講義するのです。スタンフォード大の学生は、図化した資料から情報を取得する力も、情報を図化する力も優れている。このことはスタンフォード大の講義を受講する中で、僕が感銘を受けたことのひとつです。
――複雑な情報を体系的に整理して矛盾や飛躍のない筋道を立てる論理的思考力、そして整理した情報の関係性をシンプルな図に置き換える図解思考力は、図形センスを磨くことで習得しやすくなる。
はい。本書『AI脳が身につく最強図形ドリル』で身に付く‶図形センス〟は、ビジネスパーソン界隈でトレンドになっている論理的思考力、図解思考力などと相互関係にあると考えています。
自学で身につけるのも、親子で一緒に学ぶのもおすすめ!
――本書で身に付く図形センスは、図形問題が得意になる以上のメリットがあると伺いました。それを実感したエピソードがあれば教えてください。
直近の話でいえば、スタンフォード大の修了テストでしょうか。この修了テストでは、3時間という試験時間が短く感じるくらい、膨大な量の問題を解くことになります。その設問ひとつひとつが何を問おうとしているのか。これを瞬時に見極め、答えを素早く導き出さないといけない。そこで文章を頭の中で図化する力(図形センス)が役に立ちます。
――学習指導要領の改訂で、近年の入試テストでは文章問題が多く出題されると聞きます。図形問題だけでなく、文章問題が苦手な子どもたちが本書に取り組んでも、いい効果を実感してもらえそうですね。
そうですね。〝図形センスが高い〟ということは‶論理的に話をする力を身につけている〟と言い換えることもできるでしょう。図形センスは応用の幅がとにかく広い。また本書は、短期記憶力を刺激するような工夫を盛り込んでいますので、脳トレとしても楽しんでいただけます。入試を控えている子どもたちだけでなく、ぜひご家族で一緒に取り組んでほしいですね。
取材・文/渡辺和博