日経平均株価は、2024年10月27日の衆議院選挙や11月5日の米大統領選挙といった重要イベントを通過した後、おおむね3万8000円から4万円のレンジ相場を形成。方向感に欠ける相場展開が続いている。
そんな直近の日経平均株価に関する分析リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので、本稿ではその概要をお伝えする。
ちなみにレンジ相場とは、一定の範囲(=レンジ)内で上下を繰り返す相場のこと。相場判断のための材料が不足している時や、経済や政局が先行き不透明の状況の際になりやすいと言われている。これに対して株価が継続的に上昇、または下降している相場をトレンド相場という。
日本株は米関税引き上げを警戒、ただ実際は慎重な判断となり、株価急落リスクは小さいとみる
前述したように、日経平均株価はレンジ相場を形成する展開が続いている(図表1)。その背景には、
(1)次期トランプ政権の関税引き上げ政策への警戒、
(2)日本企業の業績伸び悩みの懸念、
(3)ウクライナとロシアを巡る地政学リスクの高まり
もあると思われる。
(1)について、中国製品は60%、全輸入品は一律10~20%を課すとしているが、三井住友DSアセットマネジメントは中国に対しては40%へ引き上げ、その他の国は個別交渉と想定している。
公約どおりにすべて関税を引き上げた場合、米国経済には強いインフレ圧力が生じると考えられるため、引き上げは相応に時間をかけて慎重に行われる見通し。そのため、公約どおりに一気に関税が引き上げられ、日本株が急落するリスクは小さいとみている。
■日本企業の業績は4-12月期決算に注目、ウクライナ情勢は懸念だが、一段の拡大は想定せず
(2)の日本企業の業績について、3月期決算企業の4-9月期決算は、市場の想定よりも業績の伸びが鈍かったとの声が聞かれる。
また、主要企業自身による今年度の業績予想も、純利益は前年同期比で依然マイナスとなっており、大きく上方修正されることはなかった。次回4-12月期の決算発表は、来年1月下旬から始まるが、ここで上方修正の動きが顕著にみられるか否かが注目される。
(3)のウクライナとロシアの戦闘激化は懸念材料であるため、市場には一定程度警戒が残り、しばらく状況を見守る流れが続くと思われる。ただ、三井住友DSアセットマネジメントは一段の戦闘拡大と原油などの商品市況への深刻な影響は回避されると考えており、市場は徐々に落ち着きを取り戻す可能性が高いとみている。
なお、トランプ氏はウクライナとロシアの停戦協議に意欲を示していることから、大統領就任後の対応も見極めが必要だ。
■日経平均は今後レンジ相場を上抜け年度末4万500円の予想、長期上昇トレンドは依然継続
以上を踏まえると、(1)から(3)に、よほどネガティブなショックが発生しない限り、日経平均は個々の材料を冷静に消化しながら、やや時間をかけて徐々に水準を切り上げていく公算が大きいと考えている。
三井住友DSアセットマネジメントでは日経平均の年末着地水準を3万9600円、来年3月末の着地水準を4万500円と予想しており、年度末にかけて日経平均はレンジ相場を上抜けていくとみている。
なお、少し長い目でみれば、日経平均は10年超続いた長期上昇トレンドの上値抵抗線を大きく上抜けており(図表2)、足元のレンジ相場を過度に心配する必要はないと思われる。
参考までに、この上値抵抗線が来年3月末に位置する水準は3万6700円程度。そのため、仮に日経平均が年度内に3万7000円を割り込んでも、長期的な上昇トレンドは継続中と判断される。
構成/清水眞希