「是正」とはどういう意味があるのか、正確にはよくわからない方も多いのではないでしょうか?「是正」とは、悪い状況や不都合なことなどを改め正すことです。「是正勧告」「是正措置」など、「是正」を使った言葉も少なくありません。本記事では、是正の2つの意味や例文、類義語などをご紹介します。
目次
「是正」とは?
「是正(ぜせい)」とは、悪い点や不都合な点を改め正すことです。ビジネスで使われることが多い言葉で、特に建築や医療で使われます。
ここでは、「是正」の意味や使う場面を解説します。
■言葉の意味
「是正」とは、悪い状況を良くするという意味です。「是正」の「是」には、道理にかなっているという意味があり、「是正」は「道理にかなうよう正す」という意味合いになります。
「是正」の使い方には、悪い状況を正すとき、不平等な状況を正すときの2つのシーンで使われます。
ここでは、「是正」の2つの意味をみていきましょう。
参考:デジタル大辞泉
悪い状況を正す
「是正」は、悪い状況に陥っているシーンを正すときに使います。
主に、次のような状況が該当します。
・組織や団体が法律や規則に違反している
・組織や団体の行為が社会に悪影響を及ぼしている
政治や政治家の行動が国民にとって好ましくないと考えられるときも、その対策について「是正」という表現が使われます。
「是正」は明らかに悪い状況を良くするときに使われる言葉で、特に悪い状況ではなく、「より良くする」場合に使う言葉ではありません。
不平等を正す
「是正」は、社会や組織に格差・不平等が生じたときに、それを正す場合の措置を講じる場合にも使われます。
使用する場面は、主に次のような状況です。
・職場における労働環境や待遇、収入の格差
・地域における所得や資産の格差
これらの格差・不平等を正す場面で、「格差を是正する」「不平等を是正する」といった使い方をします。
■「是正」を使う場面
「是正」はビジネスシーンで多く使われ、特に建築と医療では専門用語として使われています。
建築
建築では、「是正工事」という言葉があります。是正工事とは、工事中または工事完了後に不備や不具合が見つかったとき、その部分をやり直すために行われる工事のことです。「補修工事」「やり直し工事」とも呼ばれます。
建築では、是正工事と似た言葉に「残工事」があります。残工事とは、建築の完成後、契約で決められた工事が完了していなかった場合に発生するものです。
残工事は基本的に工事完了後に発生するものであるのに対し、是正工事は工事途中で不備があったときでも発生する点が異なります。
医療
医療では、「医療格差の是正」という使い方をします。地域における医療機関の格差は大きく、自分が居住する地域に医療機関があるかどうかで、老後の安心感は変わります。
医療機関の有無だけでなく、医療機関にも治療能力に格差があり、医療機関が近くにあっても、必要な治療が受けられるとは限りません。
国民は全国一律の保険料と治療費を払っているのに、現実には受けられる治療に格差があるという状況があります。
医療の是正は、これからの高齢化社会にとって急務の課題といえるでしょう。
「是正」の使い方・例文
「是正」の使い方は、例文をみながら確認していきましょう。前述した2つのシーンに分けて、例文をご紹介します。
■悪い状況を正すシーン
悪い状況を正すシーンで是正を使った例文は、以下のとおりです。
・そのお店は問題を是正するため、しばらく休業すると発表した
・社員の残業が常態化していることで労働基準監督署の立ち入り調査があり、労働基準法に違反しているとして是正勧告を受けた
・労働環境が悪いことで体調を崩した社員は、会社に是正するよう求めている
・その建築現場では数日前に不具合が見つかり、是正工事を行うことが決定した
■不平等を正すシーン
不平等を正すシーンで是正を使った例文は、次のとおりです。
・正社員と契約社員では給与だけでなく福利厚生にも格差があり、適切に是正してほしいという契約社員の声が強くなっている
・人口の地域格差を是正するため、政府は対策を検討している
・日本の男女間の所得格差は、先進国の中でも高い水準にあり、是正が求められている
・その政治家は、地域の所得格差を是正することを公約に掲げて立候補した
「是正」を使った言葉
「是正」を使った言葉は多く、それぞれに特定の意味があります。
ここでは、「是正」を使った5つの言葉をご紹介します。
■是正勧告
是正勧告(ぜせいかんこく)とは、労働基準法違反がある場合に行われる行政指導のことです。労働基準法違反になる代表的なケースは、長時間労働や残業代の未払いなどがあげられます。
ほかに、従業員が10名以上いる会社で就業規則を作成していない、有給休暇を与えていない、時給が最低賃金以下といった事例も、労働基準法違反として是正勧告の対象です。
是正勧告が行われる流れは、次のとおりです。
1.労働基準監督署による立ち入り調査が行われる
2.労働基準法違反が見つかったら、是正勧告書が交付される
3.会社は是正勧告書に記載の内容に沿った対応を行い、是正報告書を提出する
是正勧告に従わずに労働条件を是正しない、もしくは報告を怠った場合には、是正勧告が再度行われたり、民事訴訟や刑事事件に発展したりする可能性があります。
■是正処置
是正処置(ぜせいしょち)とは、企業が提供する製品・サービスが不具合を起こしたとき、再発防止を図るためにとられる処置のことです。どのような是正処置を行うかという判断基準を設けておくことで、是正活動の一貫性を保ちます。
是正処置は、主に製品やサービス、システムなどの国際規格である ISO( International Organization for Standardization)で使われる言葉です。ISOが定める要求事項に不適合があった際、その不適合に対策をすることを指して使います。具体的には、再発防止のため、原因の特定や追及、検証などを行います。
■是正措置
是正措置(ぜせいそち)とは、誤りを正し、改善するように取り計らうことです。
金融庁が金融機関に対して業務改善命令をすることを、特に「早期是正措置」といいます。経営悪化を未然に防ぐため、1998年4月に導入された制度です。業務改善命令の内容として、自己資本の充実や店舗の統廃合といった経営の是正を指導します。
■是正報告書
是正報告書(ぜせいほうこくしょ)とは、前述の是正勧告を受けた組織が、法令違反を是正したことを報告するための文書です。
報告書には、是正勧告書で指摘された事項について、その内容を記載します。是正した内容がわかる添付資料も必要です。是正報告書は、是正期日までに労働基準監督署に提出します。提出しない場合や内容が虚偽と判断された場合、司法処分(強制捜査や逮捕、送検など)になる可能性があります。