「お心遣いありがとうございます」「お心遣い痛み入ります」といったフレーズを使ったり、耳にしたりすることはありませんか? そもそも「心遣い」とは何なのか、また、「気遣い」とは何が違うのか気になることがあるかもしれません。 意味や使い方、気遣いとの違いをまとめました。ビジネスシーンでよく使われる慣用的な表現もご紹介しますので、ぜひご覧ください。
目次
心遣いの意味は?使い方を例文でご紹介
「心遣い(こころづかい)」は、ビジネスシーンでも日常会話でもよく用いられる言葉です。心遣いには、次の2つの意味があります。
意味1.あれこれと気を配ること
意味2.祝儀、心付け
それぞれの意味でどのように心遣いが使われるのか、例文を通してご紹介します。
参考:デジタル大辞泉
■意味1.あれこれと気を配ること
心遣いは、あれこれと気を配ることや配慮の意味で使われます。心配り(こころくばり)とも言い換えられます。
・細やかなお心遣いをいただき、本当にありがとうございました。
・温かいお心遣いの数々、決して忘れることはありません。
自分から相手に配慮することを「心遣い」と表現することは、あまりありません。基本的には相手から自分、もしくは第三者への配慮を「心遣い」と表現します。
■意味2.祝儀、心付け
心遣いは、祝儀(しゅうぎ)や心付け(こころづけ)の意味でも使われます。祝儀には婚礼や祝いの挨拶といった意味もありますが、祝意を表すために贈る金銭や品物、サービスをしてくれた人に与えるチップの意味もあります。
・料亭での宴がお開きになった。帰り際、お世話になった仲居さんに心遣いを渡そう。
・先輩のプレゼンが選ばれた。お祝いの気持ちを込めてちょっとした心遣いを渡そうと考えている。
心付けも配慮の意味で使われますが、世話になる人に感謝の気持ちを示すために与える金銭や品物、チップを指します。
祝儀と同様、気持ちを示すために贈る金品を指しますが、祝儀はすでにおめでたいことやサービスなどがあった後、心付けはこれから世話になるときに渡すという違いがあります。
・旅館の客室係に部屋まで案内してもらった。一泊二日お世話になるため、ポチ袋に入れた心遣いを渡した。
・あらかじめ用意した心付けを「心遣いです」という言葉を添えて渡す。
参考:デジタル大辞泉
心遣いと気遣いの違いは?
心遣いと類似する言葉に、「気遣い(きづかい)」があります。いずれも「心」と「気(気持ち)」という似ている言葉に「遣い」をつなげた構造のため、使い分けていない方も多いかもしれません。
心遣いと気遣いの違い、使うときの注意点についてご紹介します。
■同じ意味で使われることが多い
気遣いは心遣いと同様、あれこれと気を遣うことを意味する言葉です。たとえば、以下の文章では、「気遣い」と「心遣い」を入れ替えても意味が変わりません。
・ここでもう少し休んでから出発します。お気遣いに感謝いたします。
・お気遣いをいただき、本当にありがとうございました。
気遣いは、心遣いと同じく、相手の配慮について述べるときに使うことが多いです。しかし、自分が相手に対して示す配慮について「気遣い」と表現することもあります。たとえば次の場合では、「気遣い」を「心遣い」と入れ替えると違和感があるかもしれません。
・これほど気遣いを示しているのに、まったく感謝されていない。
・気遣いのない言葉をかけた後で、ひどく後悔した。
また、「気遣う」という言葉はありますが「心遣う」という動詞は一般的ではないため、動詞として使うときも「気遣い」を「心遣い」と置き換えるのは難しいといえます。
・わたしは彼が不安を感じないように、あれこれと気遣いました。
・気遣ってくれてありがとう。
参考:デジタル大辞泉
■気遣いは「恐れ」の意味でも使われることがある
「気遣い」には、よくないことが起こる恐れ、懸念といった意味もあります。
・ここにいる人はいずれも利害関係者だ。情報が漏れる気遣いはない。
・トラブルに発展するのではと発言を控えているようだが、そういった気遣いは無用だ。
「心遣い」には恐れや懸念といった意味がないため、上記の例文でも「気遣い」と「心遣い」を置き換えると不自然になる可能性があります。
参考:デジタル大辞泉
「心遣い」を使った慣用的な表現
「心遣い」は、相手への感謝を示すときに使われることが多いです。日常生活やビジネスシーンでは、次のように慣用的に使われることがあります。
・お心遣いありがとうございます
・お心遣いいただきありがとうございます
・お心遣い痛み入ります
・お心遣いいただいたにもかかわらず、申し訳ございません
いずれも相手が配慮を示したときに使える表現です。それぞれ例文を通してご紹介します。
■お心遣いありがとうございます
相手の配慮に対して感謝するときは、シンプルに「お心遣いありがとうございます」と気持ちを伝えましょう。
・差し入れのコーヒーをいただきました。お心遣いありがとうございます。
・今回は、お心遣いありがとうございました。
・(ドアを押さえてくれた上司に対して)お心遣いありがとうございました。
■お心遣いいただきありがとうございます
「お心遣い」に「もらう」の謙譲語である「いただく」をつなげると、心遣いを示してくれた相手に対する尊敬の気持ちを表現できるため、より丁寧な言い方になります。
・この度は、お心遣いいただきありがとうございました。
・きめ細かなお心遣いをいただき、ありがとうございます。
・お花とメッセージを受け取りました。お心遣いいただき、本当にありがとうございます。
■お心遣い痛み入ります
「痛み入る」とは、相手の手厚い配慮・好意などに対して、深く感じ入ることや恐縮することです。「傷み入る」と表記することもあります。
・素敵な花束をありがとうございました。お心遣い痛み入ります。
・わかりやすくかみ砕いて教えてくださり、ありがとうございました。お心遣い痛み入ります。
・いつも先に来て、部屋の掃除をしてくださっていたのですね。お心遣い痛み入ります。
本来、「痛み入る」は相手の配慮や行為に対して有難いと思う表現ですが、やや皮肉を込めて使うこともあるようです。
・ご親切なお心遣い痛み入ります。次からは、このようなことはしないでください。
・お心遣い痛み入ります。忙しいのに、手伝ってくれなくてもいいんですよ。
・わざわざ来てくださって……。お心遣い痛み入ります。
■お心遣いいただいたにもかかわらず、申し訳ございません
相手とこちら側の気持ちが、すれ違うこともあります。相手が親切に言ったこと・したことが、あまり役立たないケースもあるでしょう。
そのようなときは、まずは相手の心遣いに対して感謝を述べ、その後、期待にそえなかったことに対して謝罪の意を表現できます。
・資料をお送りくださいましたが、すでに社内で完成していたようです。お心遣いいただいたにもかかわらず、このようなことになり申し訳ございません。