2024年4月からDIMEにて連載が始まった「マンガでわかる生成AI」の原作を担当しており、アステリア株式会社、および生成AI協会(GAIS)でエバンジェリストを務めております森一弥です。
さまざまな強みを持つ生成AIが登場している今日この頃ですが、ここ最近、生成AI界隈でも特に話題を呼んでいる「Genspark」というサービスをご紹介します。
調べものをする際に便利な機能がついた生成AI
出展:「Genspark」
「Genspark」は、調べものをする際に便利な機能がついた生成AIで、「MainFanc」というアメリカとシンガポールに拠点を置くベンチャー企業が作成したサービスです。Microsoft、Google、百度(バイドゥ)といった検索エンジン大手の出身者によって設立されたそうで、それらのサービスを上回ってくることが期待されています。
本コラム執筆時点ではベータ版のマークが付いていますが、誰でも問題なく使えます。
見た目は、一般的な検索エンジンと同じなので、おそらく誰でも気軽に使い始められるはず。
登録なしでも検索機能は使えますが、色々な機能を使いたい場合は無料のログインが必要です。MicrosoftやGoogleのアカウントでログインすることもできるので、ぜひ試してみてください。
Microsoft、Googleのアカウントやメールアドレスでログイン可能
まずは「Genspark」の強みを理解するため、検索エンジンと同様に使ってみます。調べたい単語を入力してみましょう。今回は「DIME」と入力してみました。Googleであれば「@DIME」のサイトが一番上に出てくると思われますが、「Genspark」はヒットしたサイトの一覧が出るわけではなく、まず以下のような文章が出力されました。
これは “DIME” という言葉の用語辞典のような感じですね。これだけでも検索エンジンとは用途が違うんだなと理解できるはずです。さらに下にスクロールしてみると、「DIMEについての基本情報」として簡単なレポートが作成されているのがわかります。
こんな感じで、調べたい事柄について「説明しているサイト」を調べるのではなく、まとめサイトを「Genspark」上に自動で作ってくれるようなイメージでしょうか。
求めていた答えと少し違ったので、今度は以下の文章で検索してみます。
「DIMEという日本のサイトについて教えて」
「日本」と「サイト」というキーワードを入れたことで、小学館が発行する雑誌の「DIME」ではなく、WEBメディア「@DIME」のことを調べてくれることを期待しました。その結果「@DIME」は、小学館が運営するサイトであることや、ビジネス、ライフスタイル、テクノロジーなどの情報提供しているサイトであることなど、イメージ通りの回答が得られました。
この結果が出力された根拠として、小学館のサイトやオンライン書店のリンクも合わせて確認することができました。
さて、ここまでは他の検索系の生成AIサービスでも似たような結果が得られるはずですが、この「Genspark」のすごいところは「ファクトチェック」という機能があることです。
「ファクトチェック」機能を使ってみると…
生成AIで作成された文章は「ハルシネーション」と呼ばれる誤情報を含んでしまう可能性があります。ファクトチェックは、根拠となった情報を調べていくことで確認することもできますが、「Genspark」の「ファクトチェック」機能はこれを自動で行ってくれるものです。もちろんこの調査にもAIが使われるので、”絶対” を求めるのは難しいですが、正しい情報が生成される確率を上げていくことはできます。
検索結果の下には「ファクトチェック」のボタンがあるのですが、これを選択するとチェックするべき内容が出てきました。
調べる内容について選択できる項目が示される他、チェックしたい事柄を別途入力することもできます。ファクトチェックを開始すると、実行中にこのようなメッセージが出ます。
実はファクトチェックには非常に時間がかかるため、裏側で続行されています。ブラウザを閉じてしまっても後から見ることも可能です。ログインすることで使える機能ですので、ファクトチェックが終わるとメールでも連絡が来ます。しばらく待ってから確認してみましょう。
さて、先ほどの選択肢にあった「PV数」などに関してファクトチェックをしてみました。結果としては、正しい証拠と間違っている証拠の両方が出てきたため、矛盾を解消する必要があるとのこと。
確かに「月間のPV数」などは毎月変化するでしょうし、検証する内容にいつの時点の数字なのか明記がないので、この結果については「そりゃそうだね」と納得です。根拠になったページの内容が確認できるのも良いですね。
フェイクニュースなども広まりやすい時代、「Genspark」のファクトチェック機能は非常にインパクトがあり、他のサービスと大きな差別化を図っています。
さらに、もう少しカジュアルな機能もあります。その一つが、旅行の計画に特化した機能「Genspark Travel」です。前回のコラム(リンクを入れる)でもリサーチしていた「箱根旅行」をテーマに検索してみましょう。
前回の記事と全く同じプロンプトで試してみましたが、文面の方では詳細な計画というほどのものは出力されませんでした。関連しているプランがサムネイル付きでいろいろと出力されましたが、そのものズバリ的中というプランではなく、「こんなのもあるよ」というレベル感のものですね。
海外旅行などを想定した場合は良いかも知れませんが、国内のピンポイントだと情報が広すぎる感があります。
どうもいまひとつだったので、「Genspark Travel」ではなく、「Genspark」のプロンプトでも同じものを検索し、さらに自動で作成されたまとめである「Genspark Page」を開いてみました。
結果、詳細な計画や周辺情報なども調べてくれました。
前回のコラムで利用したサービスと比べて特徴的なのは、交通機関に関して大まかな金額が載っていることです。これは大体の予算感を把握するのには嬉しい情報ですよね。提案されたアクティビティに関しても、吹きガラスなどのクラフト体験があったりと、他のサービスでは出てこなかった情報が見られました。グルメ情報などもリンク付きのサムネイル画像が出るので、「これ美味しそう!」というものがあればリンクを辿って情報を探せるのもありがたい機能ですね。
さて、今回は検索に強い「Genspark」を触ってみました。私としては他の生成AIのサービスとは一線を画し「調査」に強みのあるサービスかなと感じましたがいかがでしたでしょうか?
現在はベータ版ということで、今後大きく変わってくることも考えられます。新しいサービスに興味があれば、ぜひ試してみてください!
※生成AIの著作権については、さまざまな見解があります。最新の動向や法的な観点については、各専門家に相談の上、適切にご判断ください。
森 一弥(もり かずや) https://twitter.com/dekiruco
アステリア株式会社 ノーコード変革推進室 エバンジェリスト。 テレワーク推進の波に乗り、某有名SFアニメの聖地である箱根に移住。アニメや漫画、甘いものとかっこいいクルマをこよなく愛す、気ままな技術系エバンジェリスト。 AIやブロックチェーンなど先端技術とのデータ連携を得意とし、実証実験やコンサルティングの実績も多数。見聞きしたことは自分でプログラミングして確かめた上でわかりやすく解説することが信条。 現在は AI や IoTなどの普及啓発に努め、生成AI協会(GAIS)のエバンジェリストとしても活動中。