折れたバットがクラフトビールに!?日本ハムファイターズ躍進の余韻を感じる「そらとしばシーズナル10」の気になるお味は?
2024.11.24■連載/阿部純子のトレンド探検隊
日本のプロ野球および大学野球の公式戦では1年間でおよそ10万本以上の木製バットが使用されている。SDGsの観点から資源を循環利用する取り組みが行われており、破損したバットの一部も木製の箸や箸置きなどへ再利用されている。
日本初!折れたバットをクラフトビールにアップサイクル
北海道北広島市「エスコンフィールドHOKKAIDO」球場内にある、ヤッホーブルーイングが運営するクラフトビール醸造レストラン「そらとしばbyよなよなエール」では、日本ハムファイターズの選手が使用していた破損したバットを譲り受け、バットを原材料に使ったクラフトビール「そらとしばシーズナル10」を11月30日より提供を開始する。
今回、バットを提供したのは、アリエル・マルティネス選手、郡司裕也選手、田宮裕涼選手、松本剛選手、水野達稀選手、野村佑希選手ら6名のファイターズ選手。
日本のプロ野球で使用されたバットを原料に使用したビールづくりは日本初で、9月18日のプロジェクト発表時から、「バットでビールが作れるんだ!?」「推し選手のビールが飲める!」「天才の発想すぎる!」など大きな反響を呼んでいた。
「そらとしばシーズナル10」のビールの種類は「ウッドエイジドビール」。ビールにウッドチップなどの木材を加えて、香りや味わいに複雑さを出したビアスタイルだ。
担当したブルワーの村田稀水(ニックネーム:まれみん)さんは、今回の企画についてこう話す。
「野球の魅力に気づかせてくれたファイターズ選手のみなさん、ファンのみなさんに感謝を込めてなにか面白いことができないかなと思い、今季のファイターズの活躍を振り返りつつ、余韻に浸れるビールをファンのみなさんと一緒に作りたいと思ったのがきっかけです。どんなビールにするか考えている中で『ウッドエイジドビール』の作り方ならバットでできるかもしれない!と思い立ちました。
現在のビール醸造はステンレスタンクが主流ですが、昔はオーク樽に入れてビールを熟成していました。今でも樽でビールを熟成させるとか、ウッドチップを入れることで木のニュアンスを付与するビールはたくさんあります。ヤッホーブルーイングでは期間限定で販売している、木樽で熟成させた『バレルフカミダス』がウッドエイジドビールになります。
今回はファンのみなさんと一緒に楽しいことがしたいと進めていった結果、アップサイクルの観点からもプラスとなる活動となりました。以前からファンの方と一緒にビールをつくりたいと考えていたため、実現できてうれしく思っています」(以下「」内、まれみんさん)
破損したバットからビールができるまで
11月30日に開催されるファイターズファン感謝祭「F FES 2024」でのお披露目を目指し、
6月~7月に“選手のバットを使ったビール作り”を日本ハムファイターズに提案。球団から快諾を得て、破損したバットを提供してもらった。
「多くの方からバットからどうやってビールを作るの?と聞かれましたが、簡単に言うと、いつも通りビールをつくってから、最後の段階でバットから抽出した『芳香蒸留水』を香りづけとして添加しています。
液体を加熱して出てきた蒸気を冷やして再び液体に戻すことを『蒸留』と言います。水の上に網を乗せて、その上に刻んだバットを載せると、水蒸気がバットの間を通って香りのついた水蒸気が上がります。それを冷やすと芳香蒸留水ができます。こうすることで香り成分が濃縮された、濃い香りのものができます。
この方法により、バットに使用される木材自体は香りが強くはないものの、効率的に香りを抽出することができます。さらに今回は、より木の香りを楽しんでいただくため、別途『ウイスキーオークチップ』(下記画像)も漬け込んでいます」
今企画はファイターズファンたちと共創するプロジェクトとして位置付け、10月19日にファンと一緒に、ビール醸造に使いやすくするためのバット加工イベントを開催。参加者20人の枠に約400人もの応募があったほど人気を呼んだ。
加工イベントでは、実際に選手が使用していたバットを手に取って、のこぎりや鉈を使ってバットの芯材を取り出す加工作業を行った。
「液色が濃いのが特徴で、モルト(大麦麦芽)由来の色になっています。モルトの香りやコクが感じられる秋冬にぴったりのブラウンエールをベースに、バットの芳香蒸留水とウイスキーオークチップを加え、味わいや香りに複雑さを出しました。ウイスキーオークチップ由来のバニラ、洋酒、バターのような香りの中に、モルト由来のナッツのような香りも感じられるビールになっています。
軽快さの中にも、苦味やバット由来の香りといった複雑さがあって、今年1年のファイターズの盛り上がりの余韻を感じられるようなビールに仕上がりました」
11月16日には、そらとしば店舗で完成したビールの先行開栓イベントを開催。加工イベントの参加者を含む約80名のファイターズファンが、完成したビールの味を一足先に体験した。
折れたバットを回収し、様々なグッズに加工する「つなぐ・つながる~たすきプロジェクト『+気』」を実施しているタロウズの協力で、香りを抽出した後の木材や切り落とした端材は、加工しキーホルダーにリメイク。
11月30日~12月15日の期間に実施するSNSキャンペーン「#来年のそらとしばバットビール」で、次にバットを使ってほしい選手名を投稿した人を対象に抽選で20名にプレゼントする。
また、加工作業で切り落としたバットのグリップ部分は、ビールサーバーのタップハンドルとして生まれ変わり、そらとしば店舗に登場する予定とのこと。
<そらとしばシーズナル10>
名称:発泡酒
原材料:大麦麦芽・ホップ・オークチップ・バット蒸留水
ビアスタイル:ウッドエイジドビール
アルコール分:5.0%
販売価格:レギュラー(420ml)900円、レギュラープラス(480ml)1,000円
販売場所:そらとしばby よなよなエール
提供期間:2024年11月30日(土)~未定
【AJの読み】シーズンの余韻とともに推し選手のビールを味わう
今年の日本ハムファイターズの躍進は、日ハムファンの筆者も心躍らせたシーズンだった。ファイターズ選手は全員が推しなので家じゅうに応援グッズがあふれているが、東京から遠いこともあり、今季は一度しかエスコンに行けず、そらとしばでゆっくりとビールを味わう時間もなかったので、来季はエスコンでの三連戦を絶対に観戦すると誓っている。
今回のビール企画では超推しの田宮裕涼選手のバットも含まれていて「ゆあたそのバットはどんな味がするのだろう?」と妄想が膨らんだ……。先行開栓イベントには参加できなかったので、来季にエスコンに出向いたときにぜひ味わいたいと思う(提供期間が未定なのが不安だが)。
「#来年のそらとしばバットビール」に選ばれる選手はだれだろう?個人的には、やはり超推しのジェッシー(水谷瞬選手)や、万波中正選手、清宮幸太郎選手が選ばれるのではないかと予想している。
ちなみにブルワーのまれみんさんの推し選手は、伊藤大海投手とのこと。DH制のパ・リーグで投手がバッティングをする機会は、キャンプでの練習やセ・パ交流戦ぐらいと思われ、バットが破損する可能性は低い。伊藤投手や女性人気の高い山崎福也投手、ハムの誇り・宮さん(宮西尚生投手)といった、投手が推しのファンに向けての新たなビールもぜひチャレンジしていただきたい。
取材・文/阿部純子