2024年12⽉2⽇から紙の健康保険証は新規発行されずに、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に一本化される。
そこで、YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』を運営する税理士の菅原 由一氏は、20歳以上70歳未満の男女全国500人を対象に「マイナ保険証」についてアンケート調査を実施したので、解説と合わせて詳細をお伝えしよう。
マイナンバーカードの取得率8割、内3割超がマイナ保険証未登録!「マイナ保険証」 20代~40代は賛成3割、50代は1割満たず
まず、「マイナンバーカードを持っているか?」聞いたところ、「取得済みでマイナ保険証も利用している」(29.8%)、「取得済みでマイナ保険証は未登録」(26.2%)、「取得済みでマイナ保険証も登録済みだが利用していない」(23.2%)、「未取得」(20.8%)という結果に。
また、年代別で見ると、60代はマイナンバーカードの取得率並びにマイナ保険証の取得率・利用率が8割超と最も多い一方、マイナンバーカードの取得率並びにマイナ保険証の取得率・利用率のワーストは50代であった。
次に、「今年の12月2日から健康保険証は、新規発行が廃止され、マイナンバーカードと一体化された『マイナ保険証』に一本化されることを知っているか?」聞いたところ、「知っている」は20代でも7割以上、60代では9割以上と、どの年代も認知度が高いことが判明。
続いて、「健康保険証がマイナンバーカードを利用した『マイナ保険証』になることに賛成か?反対か?」聞いた。
「反対」(39.4%)、「賛成」(24.0%)、「どちらでもない」(36.6%)となり、年代別で見ると、20代だけ反対よりも賛成の方がわずかに多く、50代は反対が半数以上、60代も反対が半数近くいることがわかった。
調査概要
調査期間:2024年11月6日~7日
調査手法:インターネット調査
調査対象:20歳以上70歳未満の男女全国
有効回答者数:500人(10歳刻みに男女各50人)
調査機関:Freeasy
※脱・税理士スガワラくん 調べ
税理士・菅原由一が解説!「マイナ保険証一本化の狙いとその波及」
2024年12月2日より現行の保険証は廃止され、マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」に一本化されます。しかし、前述のアンケート結果では、マイナンバーカードを持っていない人は20.8%いました。
そこで、今回は、このような人はこれからどうなるのか?政府がマイナンバーカードに健康保険証を一体化させる狙いや、それによって及ぼされる影響などについてわかりやすく解説します。
●健康保険証は使えなくなる?
総務省(※1)のデータによると、マイナンバーカードの保有者は全人口の75.7%(約9,450万人)ですが、そのうちの8割程度がマイナ保険証の登録を済ませているものの、2割は未登録です。
2024年12月2日以降、健康保険証はすべてマイナ保険証に統一されますが、現行の保険証は、最長で2025年12月1日まで使うことができます。
但し、後期高齢者医療制度を使っている人は2025年7月31日まで、国民健康保険は自治体によって期限が異なるため、注意が必要です。
また、それまでに引っ越しや転職など、健康保険証を切り替えるタイミングがあると、現行の保険証は使えなくなり、基本的にはマイナ保険証に移行されます。しかし、これはあくまでも基本で、例外もあります。
(※1)https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/kofujokyo.html
●健康保険証の代わりになる「資格確認書」
現行の健康保険証の期限が切れると、「資格確認書」というカードが送られてきて、それが健康保険証の代わりになります。
資格確認書は、マイナンバーカードを持っていない人やマイナンバーカードは持っているもののマイナ保険証未登録の人に届き、今までと変わらずに(有効期限の)5年間使うことができます。
●なぜマイナ保険証は使われない?
マイナ保険証は運用開始から3年経ちましたが、国民全体の利用率は約14%程度(※2)と低水準です。
なぜなら、マイナンバーカード紛失や個人情報漏洩をはじめ、登録ミスなどのトラブルが出ているため、マイナンバーカードを信用していない、個人情報を入れたくない、マイナンバーカードは怖いものだと思っている人が多く、マイナンバーカードを持っているものの、利用したくない、携行したくないという人が圧倒的にいるからです。
そのため、2024年10月28日からマイナ保険証の利用登録解除の申請ができるようになりました。解除後には資格確認書が送られてきます。
しかし、マイナ保険証にも次のようなメリットもあります。
・高額医療費制度の計算や申請が自動的にできる
・おくすり手帳がなくても薬の履歴がわかる
・確定申告の時、医療費控除の計算が簡単にできる(※3)
・引っ越しや転職などで情報が変わっても一元化されているため、手続きがラク
(※2)2024年11月5日、平将明デジタル相の定例会見より
(※3)但し、薬局やドラッグストアで購入した薬のうち医療費控除の対象となるものは、自分自身で計算しなければならない
●マイナンバーカードが不便なわけ
マイナ保険証を持って医療機関に行った場合、次のように受付をします。
1. マイナンバーカードの顔認証付きカードリーダーを見つける
2. 読み取り:カードリーダーを読み取り口に置く
3. 本人確認:顔認証または暗証番号入力のどちらかを選択して、本人確認を行う
4.-1 同意取得:医師・薬剤師に提供する情報(過去の診察・薬剤情報)を選ぶ
4.-2 (40歳以上のみ)同意取得:医師・薬剤師に提供する情報(特定健康情報など)を選ぶ
5. 受付完了:受付が完了。カードをカードリーダーから取る
6. (高度医療制度を利用の場合のみ)限度額情報の提供同意:高額医療制度を利用する人は、カードを取らずに限度額情報を「提供する」を押す
マイナ保険証は、受付中に本人確認のエラーが複数回(※4)出ると、ロックがかかり使えなくなります。また、通信エラーにより最初からやり直しといったトラブルも多いようです。
全然便利になっておらず、現行通りに健康保険証を提示する方がラクです。そのため、利用しない人が圧倒的に多いのです。
(※4)暗証番号入力は3回、顔認証は10回
●マイナ保険証が使えない時はどうする?
通信障害やカードリーダーの不具合、マイナ保険証に未対応の医療機関などで、マイナ保険証が利用できない時は、マイナ保険証登録者に送られてくる「資格情報のお知らせ」というA4判の書面をマイナ保険証と一緒に提示しなければなりません。
それならば、資格確認書1枚で良いのではないでしょうか。現時点では、圧倒的に資格確認書の方が便利ですし、5年間利用できるため、そちらで良いのではないかと思います。
●政府の狙い
政府は、マイナンバーカードの使い道をたくさん作りたいのです。マイナンバーカードがなければ手続きできないというシステムを徐々に増やしていき、国民がマイナンバーカードで何でもできる世の中にしたいのです。
その第1弾で、国民が最も利用する医療機関での医療のDX化を目指し、第2弾として、2025年3月24日から「マイナ免許証」を開始する方針を固めました。
今後も様々な問題はたくさん出てくると思いますが、年月ともに整備・改善され、いずれは当たり前の世の中になっていくのでしょう。
構成/Ara